詩を書く

遠い声、遠い空

雨に濡れたまま自転車に乗って走っているときの 無力感ともうどうでもいい感。 全身ずぶぬれで服が貼りついていて、 ジーパンは固くなっているし、Tシャツの袖からも滴り落ちている。 靴下もびしょびしょでスニーカーの中もじゃぶじゃぶで。 カゴの中の、あ…

Untitled

波の音が聞こえた 見知らぬ国 眠れない夜 窓から暗闇が射しこむ 歩いていた誰かがそこで立ち止まった 明日からはまた移動なのだという 目隠しをされて音も遮られて列車に乗って昼も夜も 次の流刑地もその次の流刑地も同じ 一人が消えて また別の一人が加わる…

TRAIN-TRAIN

電車が来ました 風が吹きました 線路が揺れました 通り過ぎました 音が聞こえました この星が回転していました 雲が流れました 時が刻まれました 空を見上げました 星明かりの灯る頃でした 風が吹きました 次の電車が来ました

White House

やつは黒い家に住んでいる 町はずれの 鉄くずだらけの たくさんの影が出入りする 煙突から絶えず煙が吐き出される 僕は白い家に住んでいる いつも町の真ん中にあって 部屋が無限に増え続ける 僕はもう何年も誰にも会っていない 黒い家のことを考える 黒い家…

Untitled

よく晴れた月曜の夜 僕は裸になって首輪をつける 犬に引っ張られて散歩する 街行く人が目をそらしている 四つんばいは難しいから立って歩く 同じように首輪をつけて 向こうから裸の女性が歩いてくる 猫に引っ張られていた すれ違うときに彼女は僕に向かって…

Untitled

銀の匂い 銀の音 凪の匂い 凪の音 陰の匂い 陰の音 像の匂い 像の音 指先へ指先は指先へ 乾いた水のような 地平線の向こう 空に浮かんでは消えていく 零の匂い 零の音 一の匂い 一の音 番の匂い 番の音 闇の匂い 闇の音

「Tuesday」

君と僕は動物園に出かける 白い空は今にも雪が降りそうだ 視界の端を飛行機が横切って行った その後で何も 何も聞こえなくなった 鉄の檻を素手でつかむと冷たくて その手で君は僕の頬を包んだ 檻の中は薄暗くて何も見えない だけど動物たちの臭いが かすかに…

「Time and Place」

外に出ると風が吹いていた 草原の先を横切る人たちがいた 青白い雲がゆっくりと形を変えていく この季節は雨が降らないと聞いた どこまで行くと遠くなのか 時間はどこで止まってしまうのか 誰もがその答えを持っている だけどそれぞれに思うことは違う この…

「Leave The Planet」

長すぎた雨季が終わって この星を離れるときが来た 迎えに来た船は 遠く霧の向こうにかき消され 雨に濡れた生きものたちが 河口を目指す 広場ではまた今日も 生贄の首がはねられた 世界の果てで鍵を失うものと 拾うものと 二度と出会うことなく 風に舞う砂の…

「青」

そして船は行く 青い靴を履いた少女が海の上で踊り続ける 彼方から音楽が降り注ぐ 世界中の観客が時間と空間の間を漂う 遅れがちな電車は苛立った乗客ばかりで 駅に着くと雨は本降り ビニール傘と缶チューハイを買って帰り テレビのチャンネルを変えているう…

言葉の国

言葉を忘れた子供たちが遊ぶここは 告白の国、告発の国 壁の中を流れる水銀が電気を帯びて青白く光る ありがとう 今日もたくさんの虫が死んだ 最果てに向かう列車に乗って 北へ北へ 全ては白く包まれている 今のうちにあるだけの文字を読んでおこう 非常時の…

「RIVER」

ひと気のない町に灰色の川が流れ ぬいぐるみのクマが浮き沈みする 突き出た傘に引っかかり 背中を向け 降りやまない雨 首に巻いたリボンの青 川縁に生い茂る無言の草 色とりどりの灯油缶が積み上げられ クマの切れ端が高く高く括り付けられていた 黒く焼け出…

夕暮れ

雨上がりの夕暮れ、屋上から紙飛行機を飛ばす 遠くへは行かない、だけど視界から消えていく 銀河鉄道の夜読んだことある? と君は呟いた 誰にでもなく、僕にでもなく、君自身でもない 聞かせてよ、ヘッドホン無理やり半分ずらして ありきたりなポップミュー…

「over the rainbow」

最初の姉は宝石の国で生まれた つぎの姉は香水の国で生まれた 妹はぬいぐるみの国で生まれた 父と兄と弟は古い戦争で死んだ 甘ったるい大粒の雨が降り続く 溢れた赤い河が舟屋を押し流す ねじれた花が咲き乱れ髪に差す 紅を差す傘を差して花札を返す 最初の…

窓のない部屋

白い部屋 窓のない部屋 二脚の椅子 雨を踊る 指先を伸ばす 時間を鳴らす 彼女たち(天使) 傷跡を隠そうともせず 入口もなく 出口もなく ひとりずつ消えていく 明日にはもう誰もいない 海の見える町の 屋上に近い部屋 白い部屋 音のない部屋 羽と砂がわずか…

砂の城

真夏の子どもたちが砂の城に住みついている 今日もまた一段と大きくなって真昼の月に届きそうだ 皆同じ顔をしてる 笑ってる 子どもたちはそれぞれに月を捕まえて踊った その日から夜を照らすものはなくなった ある朝砂の城はこの世界を覆いつくした 最後の大…

新しい季節

水の向こうに町が見える 子供たちの歌声が聞こえる 地面の間を流れる白い光が 音のない季節を告げる 鉄道は天使たちを乗せて 乾いた川を渡る 深い霧の中を夜になり朝になり 座席の上に手紙が忘れられている 熱のない雨が降り続く この部屋を覆う植物たち そ…

Untitled

仮面か人形か 幽霊かUFOか 花束か星空か 君は今何を求めているのか 文学か音楽か 退屈か退廃か 言葉かそれ以外のものか 人類の未来はどこにあるのか 世界か宇宙か 光か重力か 事実か真実か そんな問いかけが必要とならないどこか

Room Train Light Rocket

誰もいないはずなのに明かりが灯っている そんな部屋がこの星の上にいくらでもある 君が来るのを待っている さあその扉を開けるんだ 乾いた雨が降り続く 降り続く 銀色の電車が橋の上を通り抜ける 先頭の車両だけ人影が見えた ロケットの打ち上げまでもうわ…

(Untitled)

赤鬼 青鬼 月の夜 宴の夜 迷い込んだ娘が一人 笛の音 鐘の音 銀色の星が 落ちてくる落ちてくる 砂浜を蹴散らして 全てが白く包まれる 鬼の角 鬼の爪 鬼の声 鬼の時 囚われた娘 耳を澄ます 風の音 波の音 山奥を駆け抜けて 叫び声はかき消されて 百年後 千年…

サイレンの唄

昼休みが終わる前に あの子に会いに行かなくちゃ 昼休みが終わる前に あの子に会いに行かなくちゃ 外に出るとサイレンが聞こえた 角を曲がって救急車が近づいてくるのが見えた 昼休みが終わる前に あの子に会いに行かなくちゃ 昼休みが終わる前に あの子に会…

夜明け

訪れる朝がここにも聞こえてくる 名前のない地図に子どもたちが色をつけていく 言葉が文字となって青空から落ちてくる 拾い上げて僕らは風の中に戻した 指先を伝う光を 天使たちの声を 咲き誇る砂の一粒一粒を 僕らはそういうことの全てを 思い出せずにいる …

Paradise Motel

「パラダイス」と書かれた赤いネオン 窓のない部屋 モノクロの画面に映った無音のオーケストラ ひび割れたハイウェイ 廊下の壊れたウォーターサーバー 寒さ ひとつきりの時間がそこにある 壁の奥に聞こえる声 何年も前にいなくなった女が、まだこっちを見て…

おはようセブンガール

夜明けのオレンジに給水塔が染まる 冷め切ったバスがロータリーを横切る 毎朝すれ違う女の子がいる 決まり切った夜の仕事 夜を過ごす仕事 この世界が生まれた日に君は何を思う 空から聖なる×××が降ってくる 明かりを消して君は眠ろうとする テレビの向こうは…

MUSIC

女は庭に立っていた 白いドレスだった 花束を抱えていた 雨に濡れていた 古びた椅子が側にあった 音楽が流れていた 音楽 雨の向こうから、女の居るところまで 首を振った、視線の先には海辺があった 楽団が通り過ぎた 間に合わせの楽器、音符、指揮棒 目を閉…

Map Dance

地図を踊る 地図の上で踊る 地図の中で踊る 地図の外で踊る 踊りながら言葉を引き出す 地形を読む 歴史を見る 見知らぬ土地に名前を付ける 架空の国を架空の民が横切る 手をつないで輪になって 地図を流れる言葉に出会う 地図を広げる 地図を重ねる 新しい地…

zero / minus

ゼロの聖者 ゼロの静寂 ゼロの雪原 中央線の乗客は互いに無関心でそれぞれの駅で下りていく ゼロの落雷 ゼロの逆光 ゼロの幻影 東京駅の雑踏に紛れ出口も岐路も見失う ゼロの落下 ゼロの崩壊 ゼロの散逸 新幹線の発車するいつものアナウンスがホームに流れる…

Rain Street

女は雨の中を歩いていた 凍えそうな夜に傘も差さず、上着もなく 片足を引きずって 手にした何かが右手を離れても気付かない 男もまた雨の中を歩いていた 誰かに追われていた、それを振り切って 左手を壁に伝いながら 激しい咳の発作に身をよじらせる 女と男…

song for you

君の住む町にたどり着けない 風に誘われて風に巻かれて 歩いても歩いても遠く遠くなる 無人の駅に 電車は来ない 君の名前を忘れてしまっている 僕は僕のことも思い出せない だから今旅に出る それが歌になる 僕(君)はまた別の誰かになる 右のポケットにず…

「Bright Lights, Big City」

闇の中で光る生き物たちがこの街を漂う まとわりついて君を食い尽くそうとする 大きなやつは山をも超え身動きができず 太陽よりもはるかに眩い呼吸を放つ 明滅で信号を送りあう妖精たちが 今君の左耳の中に入っていった たぶん奥へ奥へ脳髄にもたどり着くだ…