Underworld カール・ハイドのインタビューから

昨日の夜暇だったので、読まないままになっていた昔の Rockin'on の山の中から
適当に1冊取り出してペラペラとめくっていたところ、
先日5年ぶりの新作の出た Underworld のちょうど1年前のインタビューを見つけた。


昨年の11月号。
アンソニー・ミンゲラ監督、
ジュード・ロウジュリエット・ビノシュ主演の映画
「Breaking And Entering」(こわれゆく世界の中で)のサントラを発表というタイミングで
カール・ハイドに対してなされたもの。


この映画については見てなかったし、
Underworldのサントラも出てたっけ?知らなかった・・・
という不覚な状態。買わなきゃ。
調べてみたらこのサントラ、アナログオンリーだった
Jal To Tokyo」もボーナストラックで入ってる。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1235797


ここでの彼らは映画音楽の巨匠ガブリエル・ヤレドとコラボレートしている。
もともとアンソニー・ミンゲラ監督と付き合いの長い人で、
前作「コールド・マウンテン」や
アカデミー作品賞・監督賞に輝いた出世作イングリッシュ・ペイシェント」のスコアを担当。
他に手がけた作品としては
J・L・ゴダール「勝手に逃げろ」
ジャン・ジャック・ベネックス「ベティ・ブルー」などなど。
フランス人の映画音楽作家と Underworld の競演って興味深いなあ・・・


それはさておき、僕がここでそれ以上に興味を持ったのは
カール・ハイドの発言の一節。
僕が今年、インターネットについてモヤモヤと考えていたことを
うまく語っていてくれて、「これだ!」と思った。


長くなるけど、引用します。

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(インタビュアー)
実際、アークティック・モンキーズの例などを見ても、
音楽シーンにおけるインターネットの役割というのは、
急激に大きくなっているわけですけど、あなたはそれをどう見ています?


(カール・ハイド)
「僕たちとしては、インターネット、ウェブサイト、マイスペース
 インターネット・ベースのメディア、紙メディア、ラジオ、テレビ、
 こうしたものはすべてにそれぞれのポジティヴな効用があって、
 それをすべてからめていくやり方があると思うんだ。
 なにかコミュニケーションを発しようとするとき、
 このすべてのメディアを通していくやり方があるはずだと思うんだよね。
 どれもメディアとしてはすごいわけだからね。
 なにも僕だって一日中ネットをやってるわけじゃないし、
 電車に乗るときは雑誌でも読みたいよね。
 で、帰りには新聞買って家で読むとか。
 インターネットで五分前に起きたことを確かめるのと同時に、
 フィジカルなメディアもすごく好きなんだ。
 こうしたものはすべて同時に存在しているメディアであって、
 どれもずっと存在していくべきなんだよ。
 それぞれに役割が少し違ってて、違っているからこそ、そこに効用もあるんだよね。
 だから、フィジカルなメディアは終わらないと思うし、終わってほしくないんだ。
 本とか、レコードとかの、情報の具体性とかがすごく好きだし。
 でもさ、インターネットの速報性も好きだし、
 共同空間を即座に作れるところもまた好きなんだよね。
 だから、それもすごく重要なんだよ。
 僕たちもマイスペースでセクションを持ってるしね。
 そうやって自分たちのことをポータルサイトで知る人もいれば、
 僕たちのことを雑誌を手に取って初めて知る人達だっているはずなんだよね。
 で、『へー、映画のスコアなんかやってんだ?』って思うかもしれないよね。
 だから、こうした様々なメディアのすべてに、
 同時に関わっていくことが僕達にはすごく重要なんだよ」

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スピードの速い IT 業界に身を置きながら
今から1年も前の発言に共鳴してるのもかなりなところ、なんですが。


でもこれがもともと掲載されていたのが紙メディアだったからこそ、
僕も1年後という時間の中で発見できたわけだし。
これが WEB 上の記事だったら絶対出会うことは無かっただろう。


少し補足すると、Underworld は単に音楽を作って演奏してるだけの人たちではなく、
DVD が一般に普及しだすとインタラクティヴな作品を作ってみたり、
アルバムやシングルといった物理的なフォーマットに
収録されなかった楽曲を自らのサイトでどんどん公開したりという
今となっては割りと普通に行なわれていることを、いち早く手がけた先駆者だったりする。


そういう人たちにとってはやはりインターネットも単なるメディアの1つでしかなく、
フラットに俯瞰してあれこれ組み合わせていくための手段/素材に過ぎない。


情報を受け取る側にもその時々の気分とかリズムがあるのだから、
人はその時々でしっくりくるメディアを意識的に/無意識的に取捨選択しているはずだ。
その選択肢が限られてくるならば人はむしろストレスを感じるようになるのではないか?
物事は放っておくならば多様性へと向かうはずだし、
その多様性をあるがままに享受して積極的に楽しむべきなのである。
インターネットだけに凝り固まっていたら
リアルな世界で巻き起こる様々な物事の価値がわからなくなってくるし、
逆に苦手としてひたすら敬遠していたらたくさんの新しい試みを味わえないままとなる。


どこまでテクノロジーが進んだところで
たぶんここから何十年か先までは恐らく、本もアナログレコードも無くならない。
それが文明の豊かさの表れとして人々に受け止められている限り。
僕はそういう世の中であってほしいと思う。