渋谷という街

一週間がようやく終わった。
腹を立てたり、気が遠くなったり、少しほっとしたり、今日も大変な一日だった。
定時で帰ることにする。


このところ funkadelic をよく聞いている。
70年代ので国内盤帯付きが安く見つかると買うようにしている。
DiskUnion の店頭在庫検索で探してみたら
ちょうど今聞いてみたいと思っていたのが渋谷の中古センターにあるとわかった。
帰りに寄ってみるか。


飯田橋から総武線に乗って代々木で山手線に乗り換える。
混雑していて一本待つ。
ホームがすぐいっぱいになる。外国人の観光客が多い。
アジア系、中東系、ヨーロッパ系。
原宿に着いてドアの向こうにやはり外国人たちが。
スキーウェアにスノーボードのケースを抱えていた。
渋谷で大勢下りていく。


DiskUnion で探していたのを見つけることができて、レコファンへ。
ブラブラと棚を眺めて帰る。
センター街には大勢の若者たち。
ラッパー志望なのか、ピアスだらけの若者が
派手な身振りで隣りの友人にまくしたてながら歩いている。
制服を着た女子高生がクレープかなんかの店に並んでいる。
スマホの先から伸びたストラップに孔雀のような七色の羽。
何かの客引きなのか、スカウトなのか、黒人とのハーフっぽい
ヒップホップジャラジャラ系のガタイのいい若者が立っている。


その合間を外国人観光客たちが
ガイドブックを眺めながら、写真を撮りながら、ガイドに案内されながら、
群れを成して歩いている。
これだけ雑多な若者たちばかりなのに、彼らには「危険な街」という意識はなさそうだ。
賑わっていて観光客に人気の、東京を代表する観光地という扱いなのだろう。
センター街に向かう横断歩道で記念撮影している人たちが多い。
どんなふうに書いてあるのか、ガイドブックを見てみたい。
東京に来たら真っ先に訪れたい街の No.1 だとニュースで読んだことがある。


ふと思う。観光名所なのはいいけど、渋谷自体に何があるわけでもない。
ヒカリエ、マークシティモヤイ像、センター街。
それ自体に観光的魅力があるとは思えない。
ベルリンには壁があり、ニューヨークには美術館があり、バルセロナにはガウディがある。
そういった目的地、象徴的なものは無い。
分かりやすい場所に三ツ星レストランがあるというのでもない。
街そのもの、そこを訪れるという行為そのものが価値を持つという
地球上でもかなり稀有な観光地なのではないか。
強いて言えば流行の最先端を生きる若者たちが行き交う、
そのヴァイブを感じるということなのか。


訪れて何を想ったか、想像通りだったか、面白かったか、
外国人たちにいつか聞いてみたいと思う。