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--- Duran Duran 「Rio Deluxe Edition」
若い頃は頑なにパスしていた音楽が、
30代を過ぎると意味のないこだわりがほどけて少しずつ受け入れられるようになる。
40代になって好きになる。
そういうことが多い。
例えば、この Duran Duran
美形だ、アイドルだ、女子に人気だ、というだけで聞くに値しない、と
10代・20代の頃は切り捨てていた。
でも、いい曲を書く人たち、というイメージはどこかにあって。
007 シリーズ『美しき獲物たち』の主題歌となった”A View to a Kill” (1985)であるとか、
それより前の ”Save A Prayer”(1982)であるとか。
007シリーズの主題歌は決して人気だけでは選ばれず、実力も問われる。
お墨付きがあったんですよね。
でも、他の代表曲”The Reflex”(1984)を聞くと、なんだかチャラチャラしてるなと。
どう捉えていいかわからないところがあった。
あれはいつだったか。
どこかで聞いた”Ordinary World”(1993)がなんて美しい曲なんだろうと。
それでもすぐには買わず、”The Ordinary World”の入った「Wedding Album」(1993)を
中古で投げ売りされているのを買ったのは40代に入るか入らないかの頃だった。
続けて、カヴァーアルバムの「Thank You」(1995)を。
意外とまっとうな選曲で、彼らはもはやアイドルじゃなくなってたんだなと。
この2枚でしばらく止まって、80年代の代表作
ベストアルバムも買おう買おうと思いながら、いつでも買えると20年そのまま。
いまだに持っていない。
ある日ふと、Duran Duran のことを思い出す。
こういったアイドルバンドの実力って実際どうなんだろう?
そう思ってライヴアルバムを探す。
やっぱ ”Ordinary World” 以後がいいなあと思っていたら 「Thanksgiving Live - The Ultra Chrome, Latex & Steel Tour」というのが1年越しで見つかる。
どうなんだろ、海賊盤なんだろうか?
でも、Discogs でカタログに入っているから、一応正規盤扱いなのか。
聞いてみてびっくり。
ヴォーカルのサイモン・ル・ボンが……
こんな下手だったのか。
New Order のバーナード・サムナー並み。
バックの演奏はしっかりしているので、カラオケ屋でウダウダ歌っているようにしか聞こえない。
すげえな。こうだったんだ。というか、録り直さないんだ。潔いな。
逆に、もっと聞いてみたくなった。
「Rio」のデラックス・エディション2枚組がまだ入手可能と知って取り寄せた。
iPhone に入れて、早速聞く。
うーむ。Duran Duran といえばこの「Rio」か
次の3作目、「Seven and the Ragged Tiger」とされる。
後者は聞いていないが、とりあえず、いい! 「Rio」は。
なんだろこの、若々しい充実感。勢いがあっていいな。
聞いてみると、サイモン・ル・ボンの声もあってポップに聞こえるんだけど、
ベースもドラムもバラバラ、
それぞれ好きに音を出していてギリギリでアンサンブルが成り立っている。
尖ってるなあ。
これでなぜ空中分解しないのか不思議。
バンドの阿吽の呼吸なのか、プロデューサーががんばったのか。
このデラックス・エディションの1枚目のボーナストラックには
”Rio” や ”Hungry Like The Wolf” などの『US Album Remix』も収録されている。
タイトな音になっていた。
2枚目は別バージョンやシングルのB面やデモなど。
こちらは熱心なファン向けか。
いいアルバムだと思う。
でもこれ、確かに10代・20代に聞いても素通りしてただろうな。
若さを美しく思うなんて、おっさんになってから。