銀座一丁目「ニューキャッスル」

日曜にカレーのガイドブックを拾い読みしていたら
銀座一丁目の「ニューキャッスル」のページを見つけた。
老舗ということでこれまでに何度かテレビで紹介されたことを見たことがある。
カレーのメニューそのものは1つきりで、
ご飯の量によって「品川」「大井」「大森」「蒲田」と分かれる、
もしかしたら聞いたことのある人が結構いるのではないかと思う。


6月まで常駐していた顧客のオフィスから近いということがわかり、
昨日は午後ずっとそのビル内で作業をしていたので夜、帰りに寄ってみた。


なんとなく場所は知っていた。
何度も前を通ったことがあって、今時銀座にしては古ぼけた喫茶店だなあと思っていた。
「あ、なんだ、やっぱりここだったのか」ということになる。
看板には「辛夷飯」とある。もちろんカレーライスのことである。


中に入る。
狭い店内に客の姿はなし。
ごちゃごちゃとしていて田舎の寂れた、やる気のない喫茶店のようだった。
有名なご老体(店主)も最初のうち、入ってきた僕に気がつかなかった。


メニューは上に書いた通りだが、
「大井」と「大森」が普通盛りであって、「大森」はプラス目玉焼き、
「蒲田」が大盛りプラス目玉焼きとなるという非常に紛らわしいことになっていた。
僕は最初全然わかってなくて「大井に目玉焼き追加で」と頼んでしまい、
初心者であることが思いっきりばれてしまった。
なお、この「大森」のことを店では「スタンダード」と呼ぶらしい。
「大森」で630円。安い。銀座で食べる名物のご飯としてはあまり見かけない値段。


後ろのがたついたテーブルに一人で座る。
HANAKOの特集で取り上げられたときの記事や、
泉麻人がこの店をエッセイで書いたときの切抜きが壁に貼られている。
カレーを頼むとご老体はまず目玉焼きを作り始めた。
ジュージューという素朴な音がする。
目玉焼きが出来上がるとそれをカレーに乗せておしまい。


ルーは黒っぽい。
口に運ぶと非常に粉っぽい。ジャリジャリしていると言ってもいいぐらいだ。
なんか不思議な味わい。でも、おいしい。
「音」同様素朴な味なんだけど、家庭で食べるカレーとも違う。
ここでしか食べられない、というやつだ。
はまる人ははまるだろうな。
僕も、また普通に食べに来ていいと思う。銀座で映画を見た帰りとか。


ポイントはやっぱ目玉焼きだな。
目玉焼きってカレーにとって最高のトッピングの1つで、
固焼きの白身でまず何口か食べた後で、
黄身を割ってとろりとしたのが乗っかったルーがまたうまい。


後でまたガイドブックを読んでみると、ここのカレーは肉を使ってないのだという。
野菜だけ。その野菜も豆だけでも何種類か入っているようなんだけど、
溶け切っているのか、言われてもわからないぐらいルーと同化している。
肉を使ってないにもかかわらず独特のコクがあって、
ビーフだろうかチキンだろうか、それにしても入ってないなあと思いながら僕は食べていた。


激辛系の裏メニューはもろもろの事情によりなくなりましたという貼り紙があった。
これ、食べてみたかった。


こういう店がなくなってしまうのはもったいない。
ご老体もあと何年店を続けられるだろう。ちょっと心配する。