ロス(9/7)その29 リトルトーキョー

リトルトーキョー。日本人地区。カタカナや漢字があちこちで目に入る。
「全米日系人博物館」は残念ながら閉館時間になっていた。
「MARUKAI MARKET」という日本の商品が手に入るスーパーマーケットを見つける。
カップラーメンやスナック菓子や子供用のおかし、ビール、日用品、結構いろんなものが売られていた。
この裏はオニヅカストリートと呼ばれていて、
スペースシャトル「チャレンジャー」の事故で命を亡くした
日系人の空軍大佐エリソン・ショージ・オニヅカの記念碑として
ミニチュアのスペースシャトルが空に向かって打ち上げの姿勢で飾られている。


CDやDVDの小さな店がいくつか見つかるが、
これはどうも日本人観光客相手に裏ビデオを売るのがメインの店だった。
「日本AV女優 裏売ります」と大きく書かれたのを貼り出している。
何軒もあるってことは買う人がまだたくさんいるんだろうな。
インターネットが普及して裏画像でも何でも手に入るこの21世紀に。
あと、ジャパニーズアニメの専門店らしき店もあった。


「日本村広場(Japanese Village Plaza)」という一角があったので入ってみる。
どうもここが中心地のようだ。
日本の貴金属のアクセサリーや化粧品を売っている店やお土産屋があって、
そして日本料理の店がたくさんある。しゃぶしゃぶに寿司。
年配の日本人観光客が日本食を求めて中に入っていく。
本格的っぽい店もある一方で、日本を意識してるんだろうけど
なんかちょっと違うなあという雰囲気のファーストフードの店もある。
寿司屋の値段を見てみると軒並み高い。
トロやサーモンが2巻で5ドルから6ドル、カリフォルニアロールは12ドル。
腹いっぱい食ったら大変なことになる。日本と一緒か。
「日本村広場」を中心とした通りにラーメン屋が何軒もあって、
・海の家で出てくるような素朴なラーメンを出す店
・日本の街中で見かけるようなあれこれ手の込んだようなラーメンを出す店
・ラーメンというものをなんか誤解したようなものを出す店
それぞれちょっとずつスタンスが違う。
(3番目の極地のようなラーメン屋を10年前にモスクワで見たことがある。
 麺とスープとマッシュルームと、それだけみたいなやつ。まだあるだろうか)


せっかくだから話題のタネにロスの日本料理を食ってみるかと
一通りグルグルと回ってあれこれ迷った末に「こう楽」という店に入る。
店のおばちゃんが「いらっしゃいませ」と挨拶する。
日本人なのだろうか、日系人なのだろうか。
(祖国を離れて、その国で○○人地区と称される地区で○○料理屋で働き、
 観光客に日々接するというのはどういう人生なんだろうな、と思う)
メニューを見る。ラーメンだけでなく、カツ丼やカツカレーもある。
タン塩焼きといった酒のつまみもあった。居酒屋っぽいメニューが多い。
他人丼もあった。他の店にもあったけど、ロスではポピュラーなのだろうか。
僕は「こう楽ラーメン」という店で一番高い豪華なラーメン(7.75ドル)と
餃子(3.95ドル)とバドワイザー(2.5ドル)を頼む。


店の中には夏川りみのコンサートのポスターが貼られ、
(経営者がファンだったり、何らかの関係者なのだろうか?)
ゲイシャを描いた麒麟ビールが何枚か貼られていた。
レプリカなのかものすごくレトロなデザイン。
復刻したものなのだろうか、それとも歴史あるものなのだろうか。
ゲイシャを描いたところから、米国やその他外国用に作成されたものなのだろうか。
客としては僕のような日本人観光客だけではなく、
日系人っぽい人(日本語の発音がどこか違う)や
日本人だけどロスに暮らしていると思われる人(観光客とは違う物腰がある)がいた。
ヒスパニックの男性や黒人の女性警官2人組もいた。
バドワイザーが出てくる。アメリカで飲むバドワイザーはやはりうまい。
餃子は意外といけた。日本のラーメン屋で食べる餃子にそっくり。
ラーメンは塩味をベースにしたもので、具はエビ、イカ、豚肉、白菜、ベビーコーン、ネギ、
フクロダケ、かまぼこを炒めて溶き玉子でとじたもの。(八宝菜と同じ具なんだろうな)
不思議な味わい。でも割とうまかった。
厨房には何人もいたが、日本人や日系人ではなく、アジア人でもなく、
ヒスパニックと黒人だった。


「Family Mart」を2軒見つける。日本のと同じ系列なんだろうか?
でも看板はあの緑と白と青の例のヤツじゃない。
(そのうちの1軒は「裏ビデオあります」と貼り紙していた)
オニヅカストリートに戻って「日本のお酒売ってます」とあったので中に入る。
「話題の薬あります。ダイエット」とも書かれている。
コンビニというよりはお菓子と缶ビールやその他清涼飲料水を売ってる店。
サッポロビールのどでかい缶(650ml)のがあって、飲んでみたくなる。
全体が銀色のと、上半分が銀色で下半分が金色のと2種類あって後者にする。
2つとも飲んでみたかったが、さすがに多すぎるだろうと諦める。
コロナの缶があったのでめずらしくてそれも買う。2つで約5.5ドル。
350mlの缶ビールそのものは1.2ドルだっただろうか。
アルコールに税金が掛けられていないので安い。
99セントのスナック菓子も買う。アメリカ製だろうか、
激辛っぽいイメージの絵がパッケージに描かれていた。
店のおばちゃんは関西弁で話していた。
(またしても思う。どういう人生の変転を経て、リトルトーキョーのコンビニで働くのか)
サッポロのどでかい缶を見て、「おお、兄さん豪勢やねえ」と言う。
「日本じゃ売ってないんで、飲んでみたくなって。コロナも」
「輸入専用のものやからね。コロナは日本で売ってへんの?」
「缶のはないんですよ」
「コロナは独特の味のビールやね」
小銭で払おうとして、カウンターの上にポケットの中身を洗いざらいぶちまける。
10セントかと思って何枚か選り分けて差し出したのは「違う」と言われる。
「お兄さん、それどこのお金?」
メキシコです、と僕は答える。


このコンビニの近くにカレーの専門店らしきものを見つけるものの、
日本のチェーン店で出てくるようなカレーだったのでがっかりする。


日が暮れかけている。ホテルに戻る。ロビーにはまた別の日本人の若者が暇そうにしていた。
その日の出来事をまとめた後で、相も変わらず全米オープンを見る。
アンドレ・アガシジェームズ・ブレーク
へー、アガシってまだテニスやってたんだと驚く。
シャワーを浴びた後で例のサッポロを飲みながら試合を見る。
アガシは見るからに強そうだった。往年のオーラが残っているって感じで。
身のこなしのキレも残っている。むちゃくちゃ練習してんだろうな。
テニスもさることながらひたすらジムでワークアウトしてそう。
でも年取ったなあってのもどことなく否めない。
最初の2セットはとんでもない運動量を誇るジェームズ・ブレークが取って、
ああ新世代のテニスっぽいなあ(詳しいことは分からんが)
これは勝てんのかなあと思っていたら、
途中からアガシが波に乗り出して5セット目にまでもつれ込む。
これはいい展開だとワクワクしながら見ていたらいきなり時間切れで中継終わり。
「あー?なんだよそれ」と毒づく。


チャンネルを変えて、ドジャースの試合を見た。
つい何時間か前に見学したスタジアムにて試合が行われている。
あのときは人が全くと言っていいほどいなかったのに、今は大勢の客でいっぱいだ。
少しばかり奇妙なもんです。


サッポロは無茶苦茶うまかった。「富士山」ビールに匹敵するね。
なんでこんなうまいものが日本で売ってないんだろう?残念だ。非常に残念だ。
バドワイザーを水っぽくなくしてフルーティーな部分だけを残し、
さらに麦の味を強くしつつもアクはない。飲みやすい。グイグイいけちゃう。
こういうのがアメリカ人に受けるのか。
エビスとかクラシックラガーは受けないだろうな。


11時ごろ、電気を消して寝る。