ロス(9/8)その30 帰国に向けて出発

6時半に目を覚ます。
寝てる間に何度か目を覚ましかけたような気がするが、
その都度「まだ起きなくていいんだ」と思い、また眠りの中に戻っていったことを覚えている。
何時ごろだったろうか、巨大な空き缶を鉄の棒で叩くような暴力的な音が聞こえた。
ゴミの収集だったのだろうか。


テレビで CNN のニュースを見る。
アメリカを襲った台風「カトリーナ」のその後の話。家庭でできる防災対策など。


8時にチェックアウト。
エレベーターで下に下りるときに50ぐらいの恰幅のいいおっさんと一緒になる。
ホテルを出てどこかでタクシーを捕まえないとなと思うとちょうどいい具合に
ホテルの目の前にイエローキャブが停まっていて、
さきほどのおっさんがリュックサックを抱えた僕に向かって「カモン」と手招きする。
タクシーの運転手だったのか。乗り込む。助手席。
「国際空港まで。トム・ブラッドレー・国際線ターミナル」と伝える。
空港までの料金は一律38ドルと書かれている。
4000円ぐらいになるので高いといえば高いんだけど、
昨日ガイドのおじさんにホテルから空港までどうやって行くのが便利かと聞いてみたら
タクシーが一番いいとのことだった。
後で路線図を見てみたら地下鉄やバスを何度か乗り継がなくてはならないようだった。
さすがにこれは無理だ。いくら安上がりであっても。
運転手のおっさんとは少しだけ話をする。
「日本人か」「家に帰るのか」「日本もこんなに交通渋滞するのか」
ハイウェイは片側4車線か5車線はあっただろうか。
空港までの道は専用に1車線あったのでスイスイ進んでいたんだけど、
通常の車線はかなり混んでいた。
空港行きともう1つの車線が「CARPOOLS ONLY」と書かれている。
「2 OR MORE PERSONS PER VEHICLE」


「トム・ブラッドレー・国際線ターミナル」に到着する。
メーターは50ドル近くにまで上がっていたけど、38ドルで済む。
40ドル渡してドアを開ける。
大韓航空のカウンターに行ってチェックインする。
入国の際にパスポートに貼り付けられた出入国カードの下半分を剥ぎ取られる。
そこから先、ノーチェックで DUTY FREE の店が並ぶエリアに入れる。
こんなあっさりしてるもんなの?セキュリティチェックはないの?と疑問に思う。
国際線でアメリカの外に出て行く人たちに対してはガードが緩いのだろうか。
DUTY FREE で買うもの、買いたいものはなし。お土産も特に買わない。
結局のところ食事に関するものを除いたら、ロスでは絵葉書2枚しか買わなかった。


CD・DVDを売っている店があったので入ってみる。
小さな店なのでたいしたことはない。日本で日本盤が入手可能なものばかり売られている。
そんな安いわけでもない。セールで2枚20ドルってのがあったが、得するのはそれぐらい。
その2枚20ドルのところに Violent Femmes の1枚目があったので
「これもってないな」と一瞬欲しくなるものの、日本でも買えるかと考え直す。
もう1枚欲しいやつがなかったし。
Destination Lounge」というクラブ系のコンピレーションがあって、
これは買って帰ろうとかと迷った。バリ編とサンフランシスコ編があった。
以前、空港をテーマにしたラウンジ系のがあったが、その手のヤツか。
ロサンゼルス編ってのがあったら買ったと思う。
QUEENのトリビュートで Los Lobos, The Falming Lips, Josh Homme (Queens of the Stone Age)などが
参加してるのがあったが、これもそのうち日本盤が出るかとやめておく。タイトルは「Killer Queen


日本人がこの空港を多く利用しているためなんだろうけど、
思いっきり「うどん そば」と書かれた立ち食いそばのような店がある。
メニューも日本語で書かれている。
近くの丸テーブルでは日本人旅行者が何組か集まってそばを食べていた。


2階の滑走路の見えるロビーで時間を潰す。
テーブルと椅子がたくさんあるが、人はほとんどいない。がらーんとしている。
旅行者や休憩中の警備員たちがちらほらといるだけ。
フライトは11時半だというのに、相変わらず心配性なもので8時半には着いてしまった。
「日本人ですか」と声を掛けられて、振り向くと日本人らしき女性。多少ケバめ。
「あー、そうですけど」と答えると「DUTY FREEで買い物しますか?」と聞かれる。
「・・・しませんけど」と言うと、「そうですか・・・」と去っていく。
何が目的だったのだろう。替わりに何か買って欲しいということだろうか。
メキシコの DUTY FREE でお土産を買ったとき、パスポートと航空券の提示を求められた。
同じようなことがここでもあって、その女性はパスポートか航空券が何らかの理由で持っていなかった。
そんなことあるのだろうか?
なんらかのトラブルの予感がした。


ノートPCにあれこれ打ち込んでバッテリーが切れると、1階の出発ゲートへと移動する。
搭乗券がないと入場できませんとあり、そこから先にセキュリティチェックがあった。
前回はサンダルが引っかかったんだよなあとさも旅慣れたかのようにサンダルを脱いで
カゴに入れるものの、今度はリュックサックに入れたノートPCが引っかかった。
いくつかの出発ゲートの前を通過するが、旅行者は1人もいない。
ソファーでは空港職員や警備員が座って休憩している。
ほんとにここでいいのだろうかと不安に思う。
かなり歩いていった先に大韓航空のゲートが見つかる。ほっとする。


朝食代わりにスニッカーズを買って食べる。
あんまり腹が減ってない割に、機内食までは時間があったので、簡単なものを。
「航路」の続きを読む。クライマックスに近付いていく。
周りの席には日本人と韓国人が少しずつ増えていく。
日本でレンタルして持ってきたのか、携帯で話してる人もいる。
自分の携帯で試しに電源を入れてみたところ、思いっきり圏外だった。
FOMAだと繋がるはずではないのか。そこのところどうなんだろう。
搭乗時間が近付いた頃、空港職員の男性がゲートにやってきてなにやら大声の英語でアナウンスする。
「DUTY FREE PICK UP」の小さなプラカードみたいなのを掲げて。
行列ができる。レシートみたいなのを係員に渡して順番に袋を受け取る。
メキシコのときはすぐレジで袋をもらえたけど、こういう仕組みになっているのか。
そういえば以前フォートワースに行ったときは日本に着いてから受け取ったような気がする。
先ほどの女性の頼みにより DUTY FREE で何かを買って、
それでフライトが違っていたらどうなっていたことだろう?


飛行機に乗り込む。木曜の昼の便ということでだろうけど、席は割と空いている。
3人掛けに1人か2人で座るような。
僕の据わった席の隣の隣、1つ空けてアメリカ人の若者が座る。
彼はフライトのほとんどの時間を寝て過ごしていた。席に着くなりいきなり眠りだす。
機内食も食べない。2回目の機内食の際に水を飲んだだけ。
日本人ばかりの便に乗っている外国人は機内食を食べようとしない、僕の中で以前からそういう印象がある。
機内食ビーフかビビンバだったらしいのだが、僕のところに来たスチュワーデスは
「申し訳ありませんがビーフだけになってしまいました。よろしいですか?」と謝る。
「みんながチキンを頼んだらどうすんねん?」という積年の謎がようやく解けたが、
よりによって自分のところに当たってしまうとは。
ビビンバ食ってみたかったな・・・。
飲み物を、ということでビールを頼んだら「Kafri」という韓国のビールをもらえた。
「おお、ようやく韓国のが飲める」と喜ぶ。開けて飲むとギンギンに冷えている。
「いいねえ」と思うものの、冷えすぎ。おかしいと思っていたら凍っていた。
凍ったビールなので水っぽくなり、炭酸は抜けて味はよくわからず。
今思うと交換してもらえばよかった。
目の前のスクリーンでは韓国のヒット曲のプロモーションビデオが流れていた。


行きの飛行機では機内食となるとあちこちでフラッシュがたかれていたのに、
帰りともなるとそれはなし。みんな疲れてぐったりしているか、
旅の終わりともなるとそういうのがくだらないことに思えてくるのか。


「航路」を読み終える。訳者あとがきでは10年に1つの大傑作みたいに書かれていて、
解説ではオールタイムベストと書かれている。
それは大袈裟かもしれないけど、確かにこれは傑作だと思った。
難解な医学用語が出てきたり、上下2冊で分厚くて長いけど、あっさりすぐ読める。
老若男女にお薦め。感動的。
3時間ほど寝たあとで、
行きのフライトで途中まで読んでいた村上龍の短編集「空港にて」を再開する。これも読み終わる。
この短編集も読んでて唸らされた。こんなの書けないよ。
微妙な瞬間の、微妙な状況の、微妙な出来事や微妙な思いを描く。
なんてことはない描写が積み重なっているだけのはずなのに、物事の思いっきり核心をついている。
円熟としかいいようがない。なんか勉強になったな、と思う。


映画の上映が始まる。
1本目はブラッド・ピット主演のスパイ映画。
夫婦でスパイなんだけど互いが互いを殺しのターゲットとすることになってしまい、
という日本でも予告編が流れたいたやつ。
もう1本はなぜか去年の日本映画で「スクールウォーズ
思いっきり昭和な内容で、熱血ラグビーものだから「スクールウォーズ」っぽいけど
これってなんなのだろう?と最初のうち不思議に思いながら見ていた。
僕は飛行機の中ではヘッドホンでなんか聞いたりしない人なので
映画を見ようとしてもセリフがわからず。
それにしてもイソップみたいな役ってないのね。
僕が小学校の頃に見たオリジナルのドラマとはあんまり関係がないのだろうか。
原案だけが一緒って感じがした。