長谷川

昨日床屋で待っているときに週間ポストがあったので読んでいたら
ビートたけしの連載があって、
岐阜の女子短大生がフィレンツェの大聖堂に落書きした件について触れていた。
その中で「Master Of Crime」という団体のことが出てきて、初めて知った。
直訳したら「犯罪の主」
なーんかものすごい名前だけどなんてことはない、
世界のあちこちで電車に落書きをしているオーストラリアの集団らしい。
やってることがせこいってのがいい。


詳しくは
http://www.asahi.com/national/update/0712/TKY200807120160.html


公共の場での落書きはそりゃもちろん犯罪だけど、これ、いいよね。
ちょっと憧れる。
日本支部ができたら入るかもな・・・
「これで僕も悪の秘密結社の仲間入りだ!」ってニヤニヤしたりして。
真夜中の地下鉄の車両をジャックしてカラースプレーでカラフルないたずら書き。
で、見つかりそうになって、派手な逃走劇を繰り広げる。
まあ、その、法に触れるから、もちろんやりませんが。
(という以前にグラフィティ・アートの腕が無いし)

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そういえば、昔、
街でよく見かける「ekys」が気になって調べてみたことがあった。
http://d.hatena.ne.jp/okmrtyhk/20060222

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学生時に飲んでると、この手の愉快犯的なネタを思いついては
ヒソヒソ話して盛り上がることが多かった。
「早朝の山手線に乗ってさぁ、スプレーで『長谷川』って書きまくらねぇ?」
「なんで『長谷川』なん?」
「テキトー。意味無いほうが意味ありそうでよくね?」


もちろん次の日には忘れて、学校行って。
そんでまた別の類のバカ話をする。
「昨日言った『長谷川』やろうよ?」
そんな話には、ならない。現実の中に戻っていく。
若さゆえの単なるフラストレーションだけがそこにあって、主張が無かった。
それだけのこと、だったのだろう。

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どっかの国に潜入。入国審査を受ける。
カラースプレーは現地調達するから荷物の中にない。
「滞在の目的は?」
僕は「観光」とそっけなく答える。
ホテルを出てタクシーに乗る。
現地のアジトへ。と言っても支援者の家の地下室ってだけ。
メンバーが集まりだす。無言で再会を祝う。握手とさりげない抱擁。
作戦日時の段取りを綿密に意識合わせ。議論が白熱して掴み合いの喧嘩になる。
翌日は市内のあちこちに分散してカラースプレーを購入。
落書きを行う車両の下見。夜は、作戦の成功を祈って、ささやかなパーティーを開く。
決行当日。早朝。扮装した僕らは改札をくぐり、車両に乗り込む。
そして人気のない車両の中で大量に書きなぐる。
『長谷川』


「ハセガワ?What?」
「ジャパニーズの名前らしいが。直訳すると『Long Valley River』」
「何の暗号なのだろう?
 彼らは我々にどんなメッセージを送ろうとしているのだろう?」
「謎だ・・・」


そして僕らは次の国へと向かう。


彼らは僕らがなぜ『長谷川』と書くのか、その理由を、目的、を知らない。
・・・僕らもまた、実は、よく分からなかったりする。