バーベキュー系合コン(大怪我篇)

腹いっぱい食べて、もう食えないってとこまで来て、後片付けに入る。
ゴミを分別する。機材を返却する。
僕らが片付け終わった頃、16時だっただろうか、ちょうどバーベキューガーデンも営業終了時刻だった。
並んでいるテントが次々に傘を下ろして行った。
広場の前にひまわり畑があって、そこで皆で記念撮影をした。


日が暮れるまでに時間があるってことで、さあて何しようかと。
スポーツエリアでディスクゴルフは?って話が出て行ってみるも、こちらも受付時間終了。
じゃあ帰りますかと出口に向かう。
その途中でパークトレインが走っているのを見つけ、僕が「あれ乗りたい!」と言い出す。
聞いてみるとこの日の最終で、園内一周はしないものの立川口までは行くという。
ちょうどいいとそれに乗っていく。
ここで、車掌さんにあなたはこっち、あなたはこっちと割り振られて、
女の子たちとは別の車両となる。合コンとは思えない展開に。
男たちだけで一列の席に座る。まあそれもまたよし。
のんびりとしたスピードでおもちゃのような列車が園内を走っていく。
北の端まで行ったところで、気持ちよくて眠ってしまった。


気づいたら終点。立川口の近く。
さて出ますかってときにふと、レンタサイクルを見つける。
乗りたかったんですよね。前から。この日どうしても乗って帰ろうと前の日から画策していた。
流れ的にたぶんここで解散だろうと、1人でふらっと自転車乗り場へ。
3時間で310円。マウンテンバイクを借りる。
園内を一周する。夕暮れに差し掛かって、太陽は雲の陰に隠れている。
吹き抜ける風が心地よい。蝉の鳴き声。
専用のサイクリングロードは歩行者もなく、片側一車線でたまに誰かを追い越すだけ。
昼に飲んだビールでほろ酔いのまま。時のたつのも忘れて、自転車に乗った。


一周して戻ってくる。
30分も経過していない。これならもう一周できるなあ、そうしようと思う。
ふと見ると他の皆も自転車に乗ってこれから走り出そうとしていて、
オカムラ君がいくら待っても戻ってこないから、皆で乗る事にした」と。
先に帰っててくれても良かったのに・・・


ここで事件が起きる。
じゃあまあ一周しますかと僕が先頭を切って駐輪場前から飛び出す。
スピードを出してカーブを曲がろうとしたら、あれ?、と体が一瞬宙に浮く。
地面に松の葉が大量に落ちていて、スリップ。
地面にぶつかる。右の肘と左の手の甲、両膝、顎。
皆が口々に大丈夫?と聞く。
僕は大丈夫大丈夫と答えて、また乗っていこうとする。
しかし、チェーンが外れてて乗ることができない。
駐輪場に戻って、別のマウンテンバイクに変えてもらう。
膝から血が出てますよ?大丈夫ですか?と聞かれて、僕はやはり大丈夫と答える。
そのとき僕が履いていたジーパンは両膝とも元々裂けていて、見ると血が滲んでいた。
まあいいやと自転車に乗る。走り出す。
膝がジンジンと痛えなーと思いながら。


すぐにも女の子たちを追い越す。
しばらくしてからトイレを見つけて、傷口を洗い流す。
また自転車に乗る。相変わらず何も考えず、気持ちいいなーと思いながらペダルを漕ぐ。


一周して戻ってくる。他の皆はもっと短いコースを走ったようで、僕が戻ってくるのを待っていた。
皆、僕を見て騒ぎ出す。あちこち血が出てると。
駐輪場のトイレで再度傷口を洗い流して、医務室へ。
当直の看護師がいないとのことだったんだけど、女の子の1人が看護師だったので
救急箱を借りて応急処置をしてもらう。
傷口にマキロンをかけて、ガーゼを貼る。
右肘の傷はバックリと刃物で切ったように開いていて、泥が入ったのか傷口が真っ黒だった。
それをもう一度洗い流そうとする。トイレに行って水を流すが、状況は変わらない。
傷口に指を突っ込んでこそげ落とす気にはさすがにならない。
この傷はやばいよね、開いてる救急病院を探したほうがいいよね、
ということで医務室の救急病院一覧表を見せてもらう。
すぐ裏に東京災害医療センターというのがあると聞いて、そこに電話をしてみる。
応急処置程度ならば診療可能だということで、今から向かいますといって電話を切る。
皆で医務室を出る。公園の出口まで歩く。
そこで別れて、コンビニでお金を下ろして、病院へ。
公園の中からも建物が見えるぐらい、大きな病院だった。


救急の窓口へ。
初診だということで書類を書いて、待合室へ。
救急治療室の前。
僕の前に待っていたのは一組だけで、おばさんとおばあさんが今日急に倒れるなんて、と言っている。
僕の後に来た若い男性は祭りのはっぴを着ている。
そうだ、駅を出て見かけたんだけど今日は駅前で祭りがあった、ねぶたが出るんだということを思い出す。
誰かが怪我をしたかなんかで、付き添いで来たのだろう。
バタバタと医師や看護師が目の前のドアを出たり入ったりする。
担架に運ばれた男性が治療室に消えていく。
心電図の音が聞こえる。
医師が付き添いの人たちに現在の見通しを伝える。
一刻を争うような容態の人たちばかりだった。
いくら大きく傷口が開いたとは言え、怪我程度の僕が来る場所ではなかった。


僕の番になる。
他はたいしたことないってことで、右肘だけ見てみましょうということになる。
縫いますか?と聞かれる。
傷口が浅いので、縫っても縫わなくても同じでしょうと僕と同い年ぐらいの医師が言う。
縫わなかったら傷が多少目立つ程度、とのこと。
じゃあ縫わなくていいですと僕は言う。
傷口に薬を塗ってガーゼを巻き、化膿止めの抗生物質と痛み止め、塗り薬をもらう。


初診だといくら取られるんだろう?
休日の救急窓口だし、5000円ぐらいとられるんじゃないかと思っていたら、
請求書は2000円ちょっと。安くてホッとする。
病院にいる間ずっと、僕は怪我がどうこうというよりも
この金のないときに余計な出費をしてしまったと金のことばかり考えていた・・・


薬を受け取って外に出る。完全に真っ暗となっている。
昭和記念公園の周りって何もなくて、国有地が更地になっているのが広がってるばかり。
だから歩いている人もいなくて、ポツンと1人駅まで歩いていく。
振り返ると公園の黒々とした森が遠くまで続いていた。


駅前まで来て、急に賑やかになる。
LUMINEの地下にマツモトキヨシがあるのを見つけ、
ガーゼとマキロン、粘着テープを買う。


中央線に乗って帰る。まだ、ほろ酔いが続いている。


家に帰ってきて、シャワーを浴びて、あちこちのガーゼを貼りかえる。
マキロンで消毒して、軟膏を塗る。
家に帰ってきて、右肘や両膝がズキズキと痛み出す。


22時過ぎ。
昼にバーベキューを食べたから腹は減ってなくて、
怪我で憂鬱な気分になって、何もする気が起きない。
痛み止めを飲んで、寝てしまうことにする。


最初のうちは眠れなくて、あれこれといろんなことを考えた。
これって、皆をほったらかしにして1人自転車に乗ろうとした天罰じゃないかと。