『リンダ・リンダ・リンダ』『アイガー・サンクション』


引き続き、最近見た映画について。
『リンダ・リンダ・リンダ』
http://www.bitters.co.jp/linda/


山下敦弘監督の作品なんだけど、この人の初めて見た。
『どんてん生活』『ばかのハコ船』『リアリズムの宿』といった作品で脚光を浴びる。
作品自体は地味で、情けなくて、かっこいいところはどこにもないはずなのに、
どこの何を読んでも評価が高かったような気がする。


いや、とても面白かった。劇場で見ておくべきだった。
空気を作るのがうまいし、それを切り取るのがうまいね。
全てのシーンが何気ない名場面のような撮り方をする。
ペ・ドゥナ香椎由宇が一緒に帰ることになったバス停のシーンとかさ。
真夜中、ペ・ドゥナが一人フラフラと体育館に行って架空のメンバー紹介をするところとかさ。
映像だけでなく、音の空気もいい。
映画トータルでの余韻に浸りたくて、見終わってすぐサントラをオーダーした。


学園祭の前日から数日。
最終日に女の子バンド4人が体育館でブルーハーツの『リンダ・リンダ』を演奏するまでの数日の出来事。
学園祭を前にしてバンドが仲たがいして、
通りがかった韓国からの留学生を成り行きでヴォーカルに据えて、とりあえず練習が始まる。
真夜中の学校に忍び込んで屋上でお菓子を食べながらたわいのない話をして、
メンバーの家に行って4人でご飯を食べて、誕生日があって、告白があって。
ふわっと甘くて、ちょっぴり切なくて、だけど凛とする萌芽があって、瑞々しい。
僕にとっては『バタアシ金魚』以来の青春映画だ。
ああ、こういう感じだったよなあと思いつつ実際は全然そうじゃなかった、
理想というか勝手に美化された高校生活。


グエムル』でペ・ドゥナにはまったから見てみる気になったんだけど、香椎由宇もいいね。
というかバンド4人のキャラクターの勝ちだね。前田亜季Base Ball Bear関根史織


脇役の女の子2人もいい味出してた。
屋上で一人、漫画喫茶やってる留年したヤンキーの子がギターうまかったり。
もう一人、もともとメンバーだったけど突き指して出られなくなった子が
代役でステージに上がったらいきなりアカペラでアメリカのフォーク?っぽいのを歌い始めて
それが神がかり的にうまかった。
もう一曲、ヤンキーの子がギターで伴奏して歌う風来坊の歌がなんか場違いなぐらいによかった。
湯川潮音というらしい。今更だけど要注目だ。


それよりも何よりも、山下敦弘監督の他の作品を見てみないと。

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アイガー・サンクション


クリント・イーストウッド監督・主演の1975年の映画。
クリント・イーストウッド扮する大学教授が実は引退したスパイ組織の殺し屋で、
やむにやまれぬ事情によりまた殺しの世界に引き込まれていく。
標的がアルプスのアイガー北壁を登頂することになり、
これまた登山家としてプロ級の腕前を持つクリント・イーストウッドがパーティーに加わる・・・


要約してみるとなかなか無理のあるストーリーだなと思うが、
『ダーティー・ハリー』時代の、
脂が乗ってるのに絶妙に枯れてる中年クリント・イーストウッドが出てるだけでまたよしとしてしまう。
でも逆に言うと他に見るべきものはない。
監督としては4作目でまだまだぎこちなさが先に立つ。


自分で登ってると思われるアイガーの場面はいいね。