ブラット・パック、『ブレックファスト・クラブ』

『ブレックファスト・クラブ』
アメリカのどこにでもあるような高校が舞台。
土曜。問題を起こした生徒5人が朝早くから図書室に集められ、
反省の課題として「自分とは何か」について書くよう教師から指示される。
期限は夕方まで。
それまでお互いに面識のなかった、
お嬢様、スポーツマン、不良、ガリ勉、不思議ちゃん。
互いに心の中でバカにしている。こいつらには僕の(私の)ことが分かるわけがない。
彼らはもちろん作文に取り掛かるわけがなく、はしゃいで、ふざけまくる。
口論になり、喧嘩も始める。校内も探検する。
夕方が近付いてマリファナも出回り(不良以外は初めての体験)、
輪になってお互いの境遇について語りだし、心のうちをさらけ出す。
それぞれが青春時代特有の疎外感を抱えて、一人きり悩んでいた。
そして仮初めの儚い連帯意識が芽生えた頃、禁断の質問がポロリと発せられる。
「月曜に学校でばったり会っても、まだ友達でいてくれる?」
1人が我に帰ってつい、口にしてしまう。
「・・・そんなこと、あるわけないじゃない」


切ない。余りにも切ない。
そんな話あるわけないよ! 日本じゃ考えられないよ!
と思いつつも人としてどこか大事な部分で共感してしまう。
等身大の自分が確かにそこにいたような錯覚を覚える。
80年代青春映画の金字塔。


支えているのは80年代という時代の雰囲気を捉えて映画にするのがうまかった
ジョン・ヒューズの脚本と演出も大きいんだけど、
やはり5人の役者としての力量と存在感と旬な勢いと
それらが一緒くたになったキラキラとした青春の輝き。


彼らは当時「ブラット・パック」と称され、もてはやされたスター俳優の集団だった。
一般的にはこの『ブレックファスト・クラブ』と
ジョエル・シューマカー監督の『セント・エルモス・ファイヤー』に出演し、
重なり合った9人の俳優たちがそこに属すとされる。
どちらも1985年。
この年が惑星直列的なピークとなり、この前後数年、
互いが互いの映画に出まくって複雑に絡み合った関係を築いた。
仲間たちの順列組み合わせで青春映画が量産される。それがヒットする。
(僕はファミリー・ツリーを書いてみようとして、調べてみて、断念した。
 誰がどの映画に出ているのか主なところをまとめたのを最後に添付します)


興味深いのは、彼らのほとんどが大人になるにつれて失速していったこと。
かろうじて人気を保ったのはデミ・ムーアだけか。
むしろブラット・パックの周辺にいた役者たちの方が大成した。
ロバート・ダウニー・Jrショーン・ペンがその代表格か。
ニコラス・ケイジも恐らく近いところにいた。


今となっては同窓会的な映画が作られることもない。
80年代は80年代のまま、忘れられた写真のように壁に掛けられている。
当時順列組み合わせを繰り返すうちに偶然生じた、たった一瞬の化学反応が2つ。
ゆえに奇跡のような、かけがえのない瞬間の記録として見るものの心を撃つ。


<付録:ブラットパックたちの出演作品>


 ★ブラット・パックのメンバー
 ☆ブラット・パックの周辺メンバー


『初体験/リッジモント・ハイ』(1982 / 脚本:キャメロン・クロウ
 ☆ショーン・ペン
 ※ニコラス・ケイジ、フォレスト・ウィッテカーも出演


ランブルフィッシュ』(1983 / 監督:フランシス・フォード・コッポラ
 ☆マット・ディロン
 ☆ダイアン・レイン
 ※トム・ウェイツソフィア・コッポラ
  ニコラス・ケイジデニス・ホッパーミッキー・ロークも出演


アウトサイダー』(1983 / 監督:フランシス・フォード・コッポラ
 ★ロブ・ロウ
 ★エミリオ・エステヴェス
 ☆マット・ディロン
 ☆ダイアン・レイン
 ☆トム・クルーズ
 ※トム・ウェイツソフィア・コッポラも出演


『バッド・ボーイズ』(1983 / 監督:リック・ローゼンタール)
 ★アリー・シーディ
 ☆ショーン・ペン


『恋のスクランブル』(1983 / 監督:ルイス・ジョン・カリーノ)
 ★アンドリュー・マッカーシー
 ★ロブ・ロウ
 ☆ジョン・キューザック
 ☆ジョーン・キューザック
 ※ヴァージニア・マドセンも出演


すてきな片想い』(1984 / 監督・脚本:ジョン・ヒューズ
 ★モリー・リングウォルド
 ★アンソニー・マイケル・ホール
 ☆ジョン・キューザック
 ☆ジョーン・キューザック


『ブレックファスト・クラブ』(1985 / 監督・脚本:ジョン・ヒューズ
 ★モリー・リングウォルド
 ★アリー・シーディ
 ★エミリオ・エステヴェス
 ★アンソニー・マイケル・ホール
 ★ジャド・ネルソン


セント・エルモス・ファイアー』(1985 / 監督・脚本:ジョエル・シューマカー
 ★アリー・シーディ
 ★エミリオ・エステヴェス
 ★ジャド・ネルソン
 ★アンドリュー・マッカーシー
 ★ロブ・ロウ
 ★デミ・ムーア
 ★メア・ウィニンガム


『ときめきサイエンス』(1985 / 監督・脚本:ジョン・ヒューズ
 ★アンソニー・マイケル・ホール
 ☆ロバート・ダウニー・Jr


ウィズダム/夢のかけら』(1986 / 監督・脚本:エミリオ・エステヴェス
 ★エミリオ・エステヴェス
 ★デミ・ムーア


『きのうの夜は…』(1986 / 監督:エドワード・ズウィック
 ★ロブ・ロウ
 ★デミ・ムーア


『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』(1986 / 脚本:ジョン・ヒューズ
 ★モリー・リングウォルド
 ★アンドリュー・マッカーシー
 ☆ジェームズ・スペイダー
 ※ハリー・ディーン・スタントンも出演


『レス・ザン・ゼロ』(1987 / 原作:ブレット・イーストン・エリス
 ★アンドリュー・マッカーシー
 ☆ロバート・ダウニー・Jr
 ☆ジェームズ・スペイダー