『フェリスはある朝突然に』

今週もあれこれと大変な一週間だった。金曜の夜。
帰って来てぐったりしてる。西友で焼鳥を買って、缶ビール。
こんなときは何の変哲もない、普通の映画がいい。
TSUTAYA DISCASから届いた
ジョン・ヒューズ監督の『フェリスはある朝突然に』を観た。


素晴らしかった!
映画を観るということを心の底から楽しんだ。
伏線の回収の仕方だとか、冷静に捉えるならば、プロットは稚拙で疑問が多い。
でも、そんなことじゃないんだよなー。
80年代のあの安っぽいけどキラキラしてる感じ、
それが瞬間パックされているというだけで、僕のような人間にはグッと来る。


2年前に『ブレックファスト・クラブ』を観たときも泣いた。
ジョン・ヒューズ監督はどうして、再評価されないのだろう?
今だと『ホーム・アローン』の脚本の人?
それが架空だろうと虚構だろうと、みじめな自分を何とかしたい、
そんな青春というものの虚飾に満ちた切なさを描かせたら
ジョン・ヒューズ監督の右に出るものはいない。


ジョン・ヒューズが『プリティ・イン・ピンク』の脚本を手がけたこと。
The Psychedelic Furs の歌が元になったこと。
そしてブラット・パックたちの『ブレックファスト・クラブ』
80年代B級カルチャーの最も美しい部分を担ったのが
ジョン・ヒューズであったことを忘れてはならない。


『ときめきサイエンス』の主題歌を Oingo Boingo が手掛けているという、
はまり具合も80年代の暗合として大事ですね。
リーダーのダニー・エルフマンはその後90年代に『バットマン』を手掛けて
映画音楽家として脚光を浴びる。今や大御所ですね。
そして今や Oingo Boingo のことを誰も語らない…


西海岸のスカ・パンクバンド「Save Ferris」って
絶対この映画から来ていると思う。
主人公フェリスの部屋に貼られていたポスターは、
Cabaret Voltaire , Killing Joke , Simple Minds
思いっきり80's UKなのが微笑ましい。
マニア心を思いっきりくすぐる。
大事な場面で、The Smiths 「Please Please Please Let Me Get What I Want」
をオーケストラ・アレンジした曲が流れた。分かってるなあ。
『プリティ・イン・ピンク』のサントラにも入ってた。


主人公の3人は楽しい1日を過ごした。
しかしそれももうすぐ終わる。
高校3年生の春学期。夏休みはそれぞれ別にバイトするだろうし、
その後は進路がバラバラになる。
かつてのように会うことはなくなるだろう。
そのことを分かっているという切なさ。
この瞬間は二度と訪れない、いつか皆と別れて大人になっていく。
そのことと隣り合わせなのが、青春というもの。


だからこのよく晴れた1日は学校をズル休みしてでも、
教師たちを敵に回してでもとことん楽しむ。
フェリスのやりたい放題はどんどんエスカレート。
シカゴの街のパレードを乗っ取って、「Twist & Shout」を口パクで熱唱。
街中の人たちが歌いだす、踊りだす。ここだよなあ。