漱石と神田

先月から引き続き、今月はずっと夏目漱石を読んでいる。
夢十夜』『思い出す事など』『それから』『草枕』と来て
今は『彼岸過迄』が半分まで、
並行してエッセイの『硝子戸の中』も半分ぐらい。
『それから』は展開が遅くていまひとつ乗り切らなかったけど、
草枕』は得体が知れなくて一気に読んでしまった。


明治の終わりから大正の始まりにかけての東京都心が
描かれているというのが面白さのひとつにあると思う。
昨日は『彼岸過迄』の主人公がにわか探偵となって
駅で張り込みをして、尾行するという場面を読んだ。
これが神田神保町界隈で、美土代町から淡路町へと歩いている。
地理感覚がわかってると読み方も変わる。
ああ、この辺りは路面電車が走っていたのかとか
あの交差点にはこういう店があったのかとか。


怪しい男女を尾行しているうちに洋食屋に入ることになる。
「宝亭」という名前で今はないようだ。
そういえば淡路町には「松栄亭」という洋食屋があったな。
壁には漱石に関した額が飾られていたように思う。
名物「洋風かきあげ」がまさに漱石ゆかりのメニューだったけど
まあそれほどおいしいってことはなく。
調べてみると「松栄亭」の初代コックが「宝亭」で修行していたと
池波正太郎の本に書かれているらしい。
引用しているページをいくつか見かけた。


『それから』には生活に困り始めた主人公が
神保町に本を売ろうと出かける場面があった。
この頃から書店の町だったんだな。
いつだったか、その頃の航空写真を見たことがある。
スマトラカレーの「共栄堂」が大正末期の創業で建物が写っていた。
何かの雑誌だったか。それとも「共栄堂」の中だったか。


ちなみに、熊本県玉名市には「草枕温泉」があるとのこと。
草枕』は熊本時代の旅が元になっている。