荻窪の床屋へ。今回は奥さんの方に切ってもらう。
ひとしきり話した後で、ふとした弾みに猫の話になった。
「この後は新宿に出てお買い物?」「家帰って猫と遊びます」と。
他に客もいなくてマスターも会話に加わる。
和猫か洋猫かと聞かれる。雄か雌かではない。
和猫は飼い主にスリスリする。洋猫にそれはないという。
ずっと昔のこと。
先日亡くなられたマスターのお母さんがシャムネコを多い時で3匹飼っていた。
シャムネコは肩に乗る習性があるので服がすぐボロボロになる。
大変でしたよ、今は飼わないねとマスターは言う。
そのお母さんのシャムネコ。
たいして高い猫缶をあげていたわけではなくまさに猫まんまだったのに、
大会に出してみたら優勝した。毛並みがいいと。
何をあげてるんですかといろんな人に聞かれたが、答えようがない。
「おかしなもんで、おふくろ、時々猫の体を雑巾を固く絞ったのでゴシゴシ拭いていたよ」
雑巾は3本用意する。
3匹いるからではなく、1本使ってゆすいでいるうちに逃げ出すから最初に3本用意していくのだと。
「うちは外で飼ってた、というか出入り好きにさせてたからね」
昔は今のような危険がなくてよかったと。
昔と違うで言えば、最近の猫は、犬もだけど、長生きするようになった。
昔はそれこそ猫まんまで味噌汁に煮干しに人間が食べているものを上げていたから
塩分を取り過ぎるからか今よりもうんと早く死ぬものだった。
それがペットの健康を気にするようになり、専用の食事を今は食べて長生きする。
「でも猫はボケないね。犬はボケてわからなくなっておむつしたりもするけど」
猫はずっとシャンとしている、という。そう言われてみるとそうかもしれない。
そのマスター、猫がかわいいのは言葉を話さないからだろうという。
毎日同じカリカリを食べても文句を言わない。嬉しそうに食べる。
これが人間だったら「たまにはあれが食べたい、これが食べたい」と文句ばかりだろうと。
雄か雌か聞かれたのは最後の方。
早いうちに去勢しないと猫は外に出たがる。
雌はそうしても外に出たがるねと。
床屋を終えて東中野で昼を食べて帰ってくる。
2階に上がるとみみたはソファーの上に畳んだ毛布で丸くなっている。
気持ちよさそうに眠っている。
足音を聞いて階段を下りてきたりしない。
ま、いいか。そのまま寝かせよう。