「りんごの花」「坊主バー」

昨晩、遠方からの客人を東京で迎える。
青森料理を食べたいとのリクエストで、荒木町(四谷三丁目)の「りんごの花」へ。
月曜の夜ということもあってほぼ貸切だった。
僕らが入った頃にカウンター席に座っていた若者が入れ替わりで店を出て、
僕らが帰る頃にまた別の若者が一人というだけ。
 
鯖の燻製、いがめんち、貝焼きみそ。
コロナ禍で帰省することはできず、ただ故郷の食べ物を食べるというだけ。
りんご鍋という新メニューができていて、これはなかなかおいしかったな。
あっさり味噌味で豚バラ肉。薄切りのりんごがよく合う。
この日の品種はサンふじだったか。
 
店内で流れるビデオでねぶた、ねぷた立佞武多三社大祭を見る。
今別の荒馬祭りもあった。
そのところどころに「モータースクール」や「三ツ谷自動車学校」のCMが挟まれていて懐かしかった。
サンロード裏の「ザ・ビデオ屋」だとか。
吉幾三五所川原立佞武多の運行初日や最終日にステージで歌うんですね。
あと、三社大祭では虎の被り物で練り歩いて獅子舞のように子供の頭を噛む。
 
店を出て、荒木町を少し歩いて前から気になっていたという「坊主バー」へ。
飲み屋の集まる古い雑居ビルの2階。その狭い2部屋。
片方にはバーカウンターがあって、片方は控室兼事務所兼VIPルームか。
僕らが上がった頃はバーカウンターの方は満席で、お客さんに取り囲まれて読経が行われていた。
そちらの席が空くまでVIPルーム(?)で待つ。
仏旗に護摩を焚いた跡に手塚治虫ブッダ』に涅槃像、インドの象の置物、
恐らくお坊さんが出した歌のCDとそのポスターとカオス。
 
席が空いたので移ると天井一面にお客さんが書いたのか、
「天」とか「法」とか「智」といった一文字の習字がびっしりと。
最初般若心境を一字ずつ書いたものかと思ったが、違うようだ。
曼荼羅図に仏壇に『美坊主図鑑』とハンドジェル。
ラサへの歩き方の貼り紙。こちらもカオス。
仏教の堅苦しさをぶち壊してフラットにしようとするとこうなるのか。
カウンターの上の小さな額には「ぐちききます 0縁」と。
 
もちろんバーカウンターの中にいるのがお坊さんで、
お客さんの中にもカタギの人たちに混ざってチラホラとお坊さんが。
いろんな宗派の方たちがこだわりなくいるようだ。
 
カクテルのメニューを見てみると
「極楽浄土」「無間地獄」「愛欲地獄」「灼熱地獄」などと。
灼熱地獄にすると、唐辛子入りのウォッカとレモンとトマトジュースで、つまりブラッディ・マリー。
飲んでみたらピリ辛どころかかなり辛かった。
食べ物は精進料理で「生麩の胡麻油炒め」と「うなぎもどき」を食べた。
お通しのそうめんを揚げてオリーヴオイルをかけたのがおいしかった。
 
いやーすごかった。自分の中で何かがグラグラする。
今年一番のワンダーランドだった。
 
車力門通りを歩いて駅へと向かう。
荒木町界隈の店は以前敷居が高いように感じられたけど、この夜はそんなことはなく。
なんでだろうと考えてみたら、いつもは扉が閉まっていて中が見えなかったのが
この夜は換気のためか開け放しのところが多かった。
ああ、こんな雰囲気の店なんだなと。
次回はこの中の店のどこかでと話して解散。
沖縄民謡の店からは三線を奏でる音が聞こえてきた。