熊本料理の店

昨日は妻が体調不良で休み。
午後ずっと連絡が取れず、
心配になって夜の予定をキャンセルして急いで帰ってきたら
ただ単に寝ていただけだった。まあ何事もなくてよかった。
このところ疲れがたまっていたのだろう。


こんなときにはおいしいものが一番と夜は外食することにした。
駅の近くに熊本料理の店があったなー、と歩いて行ってみる。
前から気になっていた。
体が弱っているときには故郷の食べ物がいいだろうと思った。


カウンター5席とテーブルが2つの小さな店。
カウンター3席は既に常連さんが座っていて、残り2席に座った。
一番端にいた年配の男性は常連の中の常連なのか
店のTシャツを着て、周りの席の人たちと終始話しながら
おしぼりを出したり飲み物を運んでいた。
そういうのよくありますよね。
本来はカウンターの中の女性が一人で切り盛りしている。


いつもだとお通しはなし。
だけど昨日はお客さんから頂いたと
北海道のたらこをバゲットに乗せたものが出てきた。
その方がカウンターにいらして、どうもどうもと挨拶する。


最初のうちは妻とふたりで話していたけど、
後半はこのカウンターの方と話す。
仕事の都合で全国を回っている関係であちこちで
おいしい酒を飲み、おいしいものを食べているらしい。


まずは熊本の話になって
球磨焼酎は人吉の酒蔵が並んでいる中で一番奥にある「大石酒造」がいい、
人吉駅前の「好来らーめん」は黒ラーメン発祥の店で
馬油を使った真っ黒なスープがおいしいなどと。
僕が青森出身だと言うと落下リンゴの素晴らしさを語る。
蜜がたっぷり入ったリンゴは重くなるため風が吹くと落ちやすくなる。
地面に落ちたリンゴは傷がついているため県外に出荷できない。
それが地元のスーパーで一袋300円とか500円で売られている。


いいところに目が向いているな、と感心させられる。
出張に出ると日中は行った先で応対してくれるが、
夜は断ってひとりでぶらりと町を歩いて
気になった居酒屋や大衆食堂に入るのだという。
床屋があれば床屋に入って髪を刈ってもらう。
選ぶ基準を聞くと床屋も居酒屋も街中にスッと溶け込んでいること。
その町の味が染み込んでいること。
観光客が訪れず、地元の人たちが暮らすだけの
外から訪れるには不便な、だけど静かな町がよい。


その後あれこれと聞いているうちに伊豆の話になった。
西伊豆の山奥の川は水が澄んでいて
石につく岩のりを地元のお年寄りたちが取って乾かしたのを食べる。
これがおいしい。特にかしこまった商品にはなっていなくて、
蕎麦屋ぐらいしかないからそういうところで頼むと出てくる。
これもどの山や川でもいいということはなく、
農薬を使っている山、使っていない山がある。
車で訪れるのなら南伊豆も行ってみるべき。
夜景が銀色に染まって美しい。
勉強になった。またこの店に来て、お話を伺いたいと思った。
こんなふうにして僕らも常連になっていくのか。


店がオープンして1周年だというので記念のボールペンをもらう。


熊本の地酒は「瑞鷹」と
菜の花を混ぜ込んだ土で育った米で造った「菜々」を飲んだ。
この蔵元は「赤酒」も造っている。
店には赤酒サワーもあった。