おちょやんのこと

先週、NHKの朝ドラ『おちょやん』が終わった。
基本在宅勤務ということもあったので結局、全部見てしまった。
その前の『エール』がキャラ立ちしてて面白かったので
最初はどうしてもそこと比較してしまい、つまんないなと思っていた。
始まって数週間は恒例の、主人公の不憫な姿ばかりでそれもしんどい。
トータス松本の熱演だけを見るドラマであった。
タイトルバックの「おちょやん」のロゴはどう見てもどん兵衛だろう。
そればかりが気になっていた。
 
今回もまたキャラ立ちする脇役に助けられた。
深刻な場面の後も岡安の篠原涼子名倉潤がそっと包み込む。
終盤のラジオドラマ編、塚地武雅生瀬勝久も盤石だった。
途中、ほんのちょっとだけど若村麻由美の山村千鳥もインパクトあったなあ。
前田旺志郎もあのちっちゃい子がこんな立派に? と。将来が楽しみ。
でも一番心に残ったのはほっしゃんの千之助と板尾創路の万太郎。
板尾創路はまんまだけど、ほっしゃんがこんなにうまかったのかと。
3年後ぐらいにあってもいいんじゃないかと思った。
(この配役は逆も可)
 
そんなふうにキャラクターばかりを見ていたドラマだったのが、
4月末ぐらいから急に引き込まれてみるようになった。
竹井千代(杉咲花)は夫一平(成田凌)の不義を理由に
離婚、鶴亀新喜劇を去る。そこに現れたのは何と、
序盤毒母としてネガティブな空気を発しまくっていた栗子(宮澤エマ)だった。
え? なんで? と思っているうちにいつのまにか
『家族とは何か』 というテーマがどんどん前面に出てきて。
血がつながってなくても、一緒に住んで思いやればそれは家族なのだと
千代が語る名場面へ。
そうか、金の無心ばかりで娘を売り飛ばすトータス松本の父親も、
岡安や鶴亀新喜劇も皆、家族の在り方をそれぞれに問うていたんだな。
そしてこのセリフへと集約していくのだな。
 
そこに、塚地武雅生瀬勝久が加わる。
それまでほっしゃんもトータス松本成田凌もいろんな意味で
人間のクズみたいなキャラクターだったのが、
この二人はとてもまともな演劇人として
12人の子供を持つ一家のラジオドラマを明るく盛り上げていく。
そのドラマの核心部分を伝えるときには
逆風の連続よりも主人公を力強く支える存在の方がよい。
その方が見る方にとってわかりやすいということなのだな。
 
実はよくできた脚本、演出だったのだな。
それが最後まで見ないとわからないというのも
なかなかハードルが高いですが。
脱落した人は多いんじゃないか。
 
さて。明日からの朝ドラ『おかえりモネ』は東北、仙台が舞台みたいですね。
直接的には別な地域とはいえ、
震災から10年で『あまちゃん』と何かと比較されるんだろうな。
あえてそこをぶつけるのは NHK 側にとってもチャレンジなのだろう。
そう思いながら見ることにしたい。