「ラ・ジュテ」「ドニー・ダーコ」「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」

朝は健康的に7時に起床。ジョギングに出かけて戻ってきた後はずっと映画の編集。
夕方疲れきって作業を切り上げる。借りてきた DVD を見始める。
1日2食。朝というか昼はレトルトのカレーで夜はコンビニで買ってきた焼きうどん。
学生時代に戻ったかのようだ。

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ラ・ジュテ
1962年のフランス映画なのであるが、ジャンルはSF。29分という短編。
あの時代にフランスでSF映画が作られているというのが素直に驚き。
僕が知らないだけで実は結構世界の各地でSF映画が作られているのかなあ。
でも記憶をいろいろと辿ってみると
ドイツではフリッツ・ラングが早くも20年代に「メトロポリス」を作っているし、
アメリカでもSF映画の傑作が何本も何本も作られているはず。
そうだそうだ。全然珍しいことではない。
フランスってのが珍しいだけ。
90年代に入ってからリュック・ベッソン一派か
アニメ・コミック出身の人たちが作ってるだけかな。
(フランス映画の事情は正直なところよくわからない)


第3次世界大戦後の地下世界が舞台。
生き残った主人公は人類の生存を賭けた実験のため
モルモットとして過去のパリへと送られる。
という話なのであるがさすがフランスだけあって、
結局のところ描かれるのは大人の男女の恋愛模様


この映画で凝ってるところは
どのシーンも写真を利用した静止画像で構成されているということ。
時代が時代なのでしかもモノクロ。
効果音とモノローグがその上に被さる。
どこまで狙ったのだろう?単なる実験・お遊びなのだろうか?
と借りてきたときには思ったんだけど、
素朴としか言いようがない映像には
ドキュメンタリーっぽい静謐な緊張感とある種の詩情が漂っていて、
見終わった後では僕の中で疑って軽々しく扱う気持ちは無くなってしまう。
これは必然性がきちんとあって、物語が手法を導き出したものなのではないか?


気になってインターネットで調べてみたら
これって写真を撮って並べたものではなくて、
撮影時には普通に映画のカメラで撮って、
それをストップモーションでつないでいったのだという。
確かにシーンによっては1つの連続した動作を細切れにしたような
躍動感あふれる場面もあり、単純な写真じゃ無理。
すごいわ、これ。
よくもまこんなアイデアを思いついたものだ。


一瞬だけそのストップモーションが「動く」場面があって、
「おーっ!?」とものすごく感動した。
純粋に映画的な感動。なんだかありがたいものを見たような気になった。


「12モンキーズ」はこれがオリジナルなのだそうだ。

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ドニー・ダーコ


今回借りてきた中では最も見たかった映画。


アメリカの小さな町。
主人公の高校生の前にある夜、着ぐるみのウサギ(顔つきは凶悪)が現れ、
「世界はあと28日と6時間と42分と12秒で終わる」と告げられる。
その直後飛行機のエンジンが主人公の部屋に落ちてくる。奇跡的に助かる主人公。
その後の彼は学校を水浸しにし、
気に入らない自己啓発セミナーの講師の家に火をつけるなどやりたい放題。
世界の終わりの日は刻一刻と近付いていて
巨大なウサギは頻繁に姿を現すようになる。
そしてその運命の日が訪れるのであるが・・・。


という話。一方でこの主人公のティーンエイジャーは
情緒不安定で以前にも何かと問題を起こしていて
今は精神分析医のところを定期的に訪れては支離滅裂な告白をしている、
そんな状態の描写がたくさん出てきて
「あーこれ全部妄想なのかなあ」と思ってしまう。
「ウサギの妄想に踊らされてやらされてるのか」と。
それってなんだか悲しい。
「自分のことを理解してくれる人は誰もいない」という
この時期特有の鬱屈した気持ち。
得体の知れない不安になす術もなく翻弄される無力さ加減。
見ていていたたまれなくなる。
こういう気持ち痛いほどよくわかる。


世界がもう少しで終わってしまうっていうのに
友達と隠れてビールを飲んだり放火したりしてウダウダ過ごすだけ、
転校生の女の子と付き合いだすもなにぶん田舎の高校生なのでたいしたことにはならず。
僕としてはもうこの煮え切らなさ加減もまた「あーよくわかる」って感じで。


とにかくやりきれない。
最後の展開がまた悲しくてやりきれない。


映画としては未熟なものの(監督は僕と同い年のようだ・・・)
この映画僕の中で忘れられないものになった。
僕のトラウマ(そんなのあるかどうかって言ったら特に無いのだが)を
引っ掻き回すような、傷跡みたいな映画。
こんな映画誰にも薦められない。
時々思い出してはゾッとすることになるのだろう。


・・・見てよかった。


なお、擬人化された巨大なウサギってことでいえば
藤子・F・不二雄のSF短編に「ヒョンヒョロ」というのがある。
あれもまた非常に気持ち悪いもので夢に出てきそうなシロモノ。
頭がおかしいとしかいいようがない。
名作。

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気を取り直して「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン


レオナルド・ディカプリオ主演で監督はスティーブン・スピルバーグ
原作をたまたま読んだことがあったので
見に行こうかどうか迷ったんだけど結局行かずじまい。
僕の周りでも観た人の間では「面白かった」という声も多かったので、
見に行かなかったことを後悔した。


そもそもスピルバーグ映画って小さい頃は大好きだったのに
90年代に入ってからのは1本も見ていない。
「あれは子供の見るもんだよねえ」なんて変に大人びた気持ちだったのだろうか?
たぶんそうだったのだろう。で、僕はあの頃の僕に言ってやりたくて。
「それは間違ってると」
とにかく「シンドラーのリスト」も「プライベート・ライアン」も見ていない。
ジュラシック・パーク」すら見ていない。
(監督をしたシリーズ1・2本目を見てなくて、なぜか監督していない3本目だけ見ている)
ブライアン・W・オールディスが原作の「A.I.」も
P・K・ディックが原作の「マイノリティ・リポート」も
原作は読んだことあるのに、タイミングが合わず見に行けずじまい。
こんなんじゃだめだ!
俺は何をやってんだ!!


「キャッチ・・・」素直に面白くて、なんで劇場で見なかったのかと地団太踏む思い。
悔しいなあ。
インディ・ジョーンズ4」は批評家が何を言ったところで絶対見に行こう。


原作に意外と忠実で驚く。
新潮文庫で出ている「世界を騙した男」
17歳にしてパンナムパイロットに成りすまし、小児科医や弁護士にも!
そんで小切手詐欺で400万ドル稼いだという経歴はどうもほんとらしい。
すごいやつがいるものである。


映画も原作もそうなんだけど、
巧妙な詐欺の手口に感心したり、
追うもの・追われるもののサスペンスを味わったりというだけでなくて
この物語がどこか心温まるものになってるのは
「家族を大切にする」っていう気持ちがどこかに残っているからなんだよな。
荒んだ家庭環境に育って荒んだ気持ちで犯罪を繰り返すのではなかったのだということ。
でないとスピルバーグが取り上げたりしなかっただろうな。
離婚した両親の両方をも思い続ける詐欺師なんてこのご時世にはありえん話だ。


映画も原作もとにかく面白いです。
既存の原作を映画化しても十分に面白かったという
数少ないケースのうちの1つですね。