10000Maniacs / Nick Cave


会社の先輩から借りた2枚のDVDを昨日・今日とようやく見る。
Natalie Merchant 「live in concert new york city june 12, 1999」
Nick Cave and the Bad Seeds 「God is in the House」


どちらもライブを収録したもの。


ナタリー・マーチャントがヴォーカルだった 10000Maniacs は高校時代
「Blind Man's Zoo」を予備知識何もなくジャケ写買いして以来今でも聞き続けている。
他のは聞かなくなったけど「Blind Man's Zoo」と「Hope Chest」だけは聞く。
R.E.M. と並んで語られるような80年代のカレッジ系バンド。
ニューヨーク出身なんだけど、
なぜか僕が勝手に思い浮かべるアメリ中南部に最も近い音を出す。
(ただし、ジャズやブルーズといった黒人音楽ではない)
清教徒的というか、ヨーロッパとは別な独自のキリスト教的雰囲気として。
これはなにも彼女のつむぎだす歌が宗教的だとかそういうことではない。
心の底に生まれながらにして染み付いたある種の価値観とでも言うべきものか。
フラナリー・オコナーの小説を音楽化すれば
ナタリー・マーチャントの声となり、
そのソロや10000Maniacs で聞けるような演奏となるのではないか。


このライブのDVDは同内容のCDも出ているが、
こういうものの常として収録曲や曲順が若干異なっている。
CDの方が 10000Maniacs の曲が多い。
CDには入っているニール・ヤング「After the Gold Rush」がDVDには入っていない。
デヴィッド・ボウイの「Space Oddity」は両方に入っている)
「The Gulf of Araby」がクライマックスなのは一緒。


落ち着いて静かに歌うのかと思ってたら全然違って、
ほとんどの曲でリズムに合わせて踊っていた。
ステージのあちこちにキャンドルが飾られていたこと、
途中から靴を脱いで裸足になったことが印象的だった。


ニック・ケイヴは2001年、フランスのリヨンでのライブ。
(1曲歌い終えるごとにニック・ケイヴは「メルシー」と呟く)
ニック・ケイヴも高校のときからなんだよな。
なんかの雑誌で取り上げられていて、
「これこそ不良の聞く音楽だ」と思って
なけなしのお金をはたいてCD(「The Good Son」)を買ったんだよな。
ここで言う不良とはその当時青森に腐るほどいたヤンキーのことではなく、
なんというか「大人の不良」とでも呼ぶべきもの。
それにしてもこの当時青森市内でリアルタイムに
ニック・ケイヴのCDを買ってた高校生って僕ぐらいなものではないか。


バッド・シーズはブリクサ・バーゲルド、ミック・ハーヴェイ、トーマス・ウィドラーと
主要なメンバーが勢ぞろいで、ニック・ケイヴも含めて総勢8人で
リリシズム溢れる、それでいて激情に満ちた分厚い音を叩きつける。
「The Weeping Song」「Papa Won't Leave You, Henry」「The Mercy Seat」といった
90年代前半の曲をやっているのが嬉しい。
アンコールでは1枚目に入っていた「Saint Huck」を吠えるように熱演。
これ生で見たら感動するだろうな。
これまでいろんなミュージシャンのライブには足を運んだが、
ニック・ケイヴはこれまで縁がなくて1度も見たことがない。
いつか日本に来ることがあったら絶対見たい。


レコーディング風景とプロモーションビデオも収録されている。
やはり気になるのは普段のブリクサ・バーゲルド。
80年台の Einsturzende Neubauten のライブで見られるような
(石井總互が「半分人間」というタイトルで日本公演を映像化している)
混乱と敵意に満ちたヒステリックな雰囲気、
やせこけて天国と地獄を同時に垣間見ているような風貌は微塵のかけらもなく、
子供相手に動物の鳴き声をしたり、
成熟した1人のアーティストって感じの佇まいだった。