代々木公園

今書いている短編の後半部分の舞台が
思いつくまま筆を進めていくうちにいつのまにか代々木公園になっていた。
(最初は渋谷のつもりだったのに、話が展開していくうちにそういう流れに)


困ったことにこれまで行ったことがない。
花見のときに代々木八幡側からちょっと足を踏み入れただけ。
10年以上東京に住んでて渋谷にも新宿にもよく出かけるのに、
その存在を意識したことすらほとんどなかった。
新宿御苑神宮外苑は何度も行ったことがあるのに。


せっかくの休み、天気がいいので行ってみた。
渋谷でCDを買った後、パルコを通り過ぎて公園通りの坂を上っていく。
資料にするためスマートメディアをわざわざこのために買って
センター街から代々木公園に至るまでの風景をデジカメに撮る。


右手に代々木競技場、左手にNHKホール。
この通りの名前はなんて言うのだろう?
いつだって歩行者天国のような。
十年一昔の光景。たこ焼きや焼きソバの屋台が出ていて、
ギターを抱えたフォークっぽい男の子2人組からフュージョンっぽい実力派、
固定客のついたビジュアル系のタマゴみたいなのまで
様々なバンドが離れた場所に立ってポツポツと演奏している。
(どういうジャンルであろうと、音が薄く聞こえる)
お笑いを目指しているような若者やダンスを練習(披露?)してる女子高生たち。
左利きでウクレレを逆にして社会批判っぽい漫談のようなことをしている老人がいて、
「うわー・・・」と見ちゃいけないようなものを見てしまった侘しい気持ちになる。
もっと変なのは紺色のスーツを着てスタンドに立てたスネアを叩いている20代半ばぐらいの男性。
ヘッドホンをしていて彼の頭の中では音楽が鳴っているのか、それに合わせて歌を歌う。
日本語に聞こえない。かといって英語にも聞こえない。
不思議な言葉で弾き語りならぬ叩き語り。
叩いてるのも全然リズムになってないし。
ストレス解消ならばいいんだけど、キチガイにしか見えない。
もちろん彼の前には人はいない。見てみぬフリをして皆通り過ぎる。


階段を登って代々木公園の中へ入っていく。
噴水のある細長い広場に出る。
土曜だけあって大勢の人でにぎわっている。
木々に囲まれた遊歩道を歩く。
ジョギングをしている人たち。
緑の中でぼけーっとしている家族連れや恋人たち。
輪になって体操をしたり体を動かしている、何らかのスポーツ系の愛好家の人たち。
この人たちは何をしてるんだろう?と思わず気になってしまう集団も多い。
わざわざ公園まで来て打ち合わせをしてるんだか
打ち合わせをしてる場面を練習してる劇団の人たちなのか
なんだか得体の知れない人たちとか。
ひっそりと1人木の根元に向かってディジリドゥみたいなのを熱心に吹いている若者ってのもいた。
(オーストラリアのアボリジニの楽器↑長くて太い木の枝みたいなのを尺八のように吹く)


グリーンアドベンチャーってことで様々な木の側に掲示板が立っていて
「この樹木の名前は?」とヒントが書かれている。
こういう公園に行くとよく見かける。
あちこちにあるんだけど気にかけてる人は見かけなかった。
自然の中で時間を過ごすのはいいんだけど、
その構成要素のそれぞれには誰もあんまり興味がないというか。


広場に出る。
飛び交うフリスビーと劇団員の青空稽古ばっか。ちらほらとバドミントン。
なんかのイベントなのか地味な老若男女が集まって何かをしている。
「こっちに並んでくださーい」と女の人の声がメガホン越しに聞こえてくる。
それにしても怖いくらいにウジャウジャと劇団員ばかり。
空き教室や公民館など練習場所を見つけられなかったからなのか。
それとも特に理由はなく天気がいいからなのか。
演劇人口の意外な多さに驚かされる。
それなりの質の高さを誇る劇団は何もわざわざ外で練習する必要はないので
広場にいるのは演劇初心者みたいなのばかり。
ものすごくヘタでベタなセリフのやり取りに背中がむずがゆくなってくる。
「ボクはアナタのことをスキになってはいけないのですか!どうしてですか!!」だって。


サイクリングロードがある。
見ると乗ってる人は皆同じ自転車のようだ。
ってことは貸し出してくれる場所がありそう。
テクテクと歩き続けるうちに見つける。
1時間200円。鞄を持ってたのでカゴ付きの普通の自転車を借りる。
ゆっくりとペダルを踏み込む。スイスイと自転車が風を切って走り出す。
気持ちいい。ものすごく気持ちいい。
東京に住んでいる僕からすれば木々の間を自転車に乗るのってかなり贅沢な行為。
サイクリングロード1周でたった10分しか乗らなかったけど、堪能した。
俗世間のことを束の間忘れることができてリフレッシュできた。


公園を出る。明治神宮が隣接している。
こちらもまたこれまで入ったことがない。初詣という習慣が個人的にないからか。
まるで森の中のような広い道を歩いていく。
なんだか厳かな雰囲気。大きな古びた鳥居も十分に厳かだけど
恐らく高く高く伸びた木々の「壁」が何よりもそう感じさせるのだろう。
ぴったりと垂直。普通なら道の両側の木々ってアーチ型になるものなのに。
神社仏閣に全く縁のない僕ですら「たまにはこういうのもいいな」と思う。
道なりに進んでいくとやがて本殿に出る。
外国人観光客ばかり。
それと神前で結婚式を挙げたばかりなのかこれから挙げるのかする白無垢の花嫁の姿。
賽銭箱の前で手を合わせ、
「今年はもう残り少ないんで来年こそは小説家にならせてください」とお祈りをする。


代々木まで歩いてそのまま新宿駅へ。
結構な距離を歩いた。
・・・疲れた。