本を出します その4(出版社へ)

原稿に直すべき個所がないか聞いてみる。
僕の原稿自体には削ってよさそうな個所はないため、そのまま使用するとのこと。
これがアメリ旅行記なら成田から飛行機に乗ってという個所は
誰が書いても情報として同じなので場合によってはカットされるが、
ロッコともなると珍しいので
見慣れぬ土地へ行くという旅の不安も描かれてるし、そのまま使いましょうとなる。
サハラ砂漠の宿で従業員と口論になったっていうのは
向こうの旅行会社にとってマイナスのイメージを与えて問題とならないですか?
という今回の本の中で僕が最も気にしていた点は
「ガイドブックではないのでその辺は全然OKです」と言われた。


前書きと後書きを書きたいのですが、そんなことしたら
契約書に書かれているページ数や出版費用が変わったりしませんかという質問には
きっぱり「それを調整するのが編集の仕事です」と。
(「まあ50ページも増えたらそれはさすがに困りますが」と苦笑)
前書きか後書きはどちらかでいいでしょうと提案される。
なぜ前書きが必要かというと読んだ人から以前、
「最初にどういう人か自己紹介があった方がいいのでは」と意見をもらったから。
それはカバーの裏か奥付に普通、著者紹介を載せるから
替わりになるのではないかと聞いてそれもそうかと思う。
後書きは見開き2ページあるいは4ページに収まる分量で。
ま、その辺はオーソドックスに。
アメリカの小説を読むと謝辞としてありとあらゆる人の名前が載っているが、
 僕もああいうことをするのだろうか?)


編集の作業としては他に表記の統一があるのだそうだ。
人名や地名の固有名詞とか。ex.「マラケッシュ」or「マラケシュ」?
編集の方が1コ1コ調べてより適切な方に改めていく。
(で、僕がその修正後を確認してする)
英語も縦書きのや横書きのが混ざってたからなあ。
そういうのもどちらかに寄せることで読みやすくしていく。


いかに目次(見出し)をつけていくか?
タイトルは変えるべきか?
文章そのものはほとんどいじらないとしても体裁を整える作業はいくらでもある。


一通り説明、質疑応答が終わると
この旅行記のよかったところと今後書いていく上で気をつけるべき個所を聞いてみた。
選ばれたポイントを要約すると次の3点のようだ。
・モロッコとドバイの一人旅というのがまだまだ一般的ではなく、情報も少ないため希少価値がある
・いろいろ巻き起こった出来事に対して「なぜ?」と疑問を持つ視点がよかった
 (「どこそこに行きました、なになにがありました、きれいでした」では旅行記にならない)
・文章量が多い割にサクサク読めるところ


ずばり賞を取れなかった理由を恐る恐る聞いてみると
それは選考者の趣味になってしまうのでどうとも言えないとのこと。
(後から思うに、たぶん知っててもこういう場では言わないのではないか)
1つ参考意見として誰に対しても言えることは、
原稿にくっつける要約を見て選考者は手に取るのであり、
要約に書かれている内容が本文中にてどのように描かれているかで印象が変わるのだそうだ。
僕の場合「事故に遭った」と書いてあったらそれがどんな事故だったか。
その部分が詳しく書き込まれていて面白いものだと評価が高くなりやすい。


僕の文章の改善点については、
印象的な出来事があったらもっと「周り」を書き込んだほうがいいし、
もっと踏み込んで相手の心情や表情を書き込んだほうがいい、と言われた。


最後にこういう話になる。僕に限らず、本になる文章とはどういうものか。
読み手の立場に立つこと、興味を持ってもらうこと。
文章のテクニックではない。
それぐらい言われなくてもわかってるよ、とこれまで思っていたけど
実際に出版社の人に面と向かって言われると
「ああ、そうかあ、そうなんだよなあ」と心の底から反省させられた。

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こんなふうにして打ち合わせは終わって雑談に入り、
次もどこか旅行に行くんですかと聞かれて僕は「次は南米、ペルーですかねえ」と答える。
そしたらこんな助言が返ってきた。
マチュピチュは早く行かないとなくなっちゃいますよ」
これはどういうことなのかと言うと跡の痛みが激しいからであって、
なんでそんなに痛むのかと言えば旅行者が勝手に
土台の石だのなんだの持ち帰ってしまうからなのだそうだ。


こう聞くと僕の中で闘志が沸く。
次は南米に行かなくては、と。
そしてまた旅行記を書こう。