地獄(その5)

久々に自分の部屋の中で寝てる。
布団乾燥機をかけて温かい布団の中で寝る。ちょっとした贅沢。
雨の音を聞いているうちに眠りにつく。


・・・携帯電話の音で目が覚める。
時間を見ると2時20分頃。
「安定稼動していたはずのC社へのデータ送信に失敗」
「障害発生」
話を聞かなくてもわかる。折り返し聞いてみると案の定、その通り。
「・・・今からタクシーでセンター行って調べてみます」
もそもそと服を着て、ボストンバッグには1週間分の着替えを適当に詰めて部屋を出る。
これでまたしばらく戻ってこない。せめて今日だけは朝まで寝ていたかった。
大荒れの天気(昨日ミキさんは「東京で雪が見れるのを楽しみにしていた」と言っていた)。
雨風ともに強い。
駅に向かって歩いていくうちにタクシーを捕まえる。


タクシーの運転手は無口で、必要最小限のことしか喋らずに済んだ。
僕はずっと起きていて、フロントガラス越しの景色を眺めていた。
だんまりを決め込んだかのような東京の夜景。
上から見下ろすのではなく、下から見上げる。地べたの夜景。
そこに雨が強く降っている。
青梅街道を中野坂上、新宿、四ッ谷とひたすら真っ直ぐ東へ東へと進んでいく。
丸の内線沿いのルートだ。
市ヶ谷で折れ曲がって今度は東西線のルートを辿る。
九段下、竹橋、永代通りに入って大手町、日本橋茅場町
茅場町まで来るとこの東京という町は、その身を横たえ、大人しく眠っているかのようだった。


午前3時にセンター入館。
プロジェクトの後輩に会う。「エラー出てますね」「ああ、たまんねえよ」
障害対応に入る。原因は特定できないが、対応そのものはあっさりと終わる。1時間もかからない。
各所にメールを送る。
4時過ぎ。こんな時間に解放されてもどうしようもない。
会議室の床で寝袋に包まって眠る。

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午後、久し振りに竹芝オフィスに戻る。
一週間前の喧騒とは打って変わって、淡々と仕事がなされている。
抜け殻になった人たちがその抜け殻を繕うような仕事。
夕方までにはオフィスを出て、と思っていたのであるが
その場にいた人を集めて打ち合わせしたりで、気がつくと19時を過ぎている。


夜、いつも竹芝のオフィスからセンターに行くのとは別のルートで有楽町に寄って、
無印良品で靴下3足セットを2つ買う。
家で着替えをボストンバッグに詰めた時入れ忘れた。
無印良品で買ったのは以下の理由。
・安いから
・高校時代から靴下は無印良品のものを使用しているため、どうにも他のものを履く気になれない


ここの無印良品は店舗として非常に洗練されていて、
ファミリーマートで売ってるものと同じ商品が並べられているとは到底思えない。
インテリアのコーナーなんて、ここで売られているものを買うことは
1つのステイタスなのではないかと感じさせるぐらいのムードがあった。
3階建てで1階は植物を売っている。木でできた家なんてのも売ってる。
これは子供用のおもちゃではなくて、ほんとの家。値段は1700万だったか。


大きな無印良品に寄ったついでにBGM集の④を買う。
アイリッシュ・ミュージックを独自に集めたもの。

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20時30分、昨日の朝チェックアウトしたホテルにまたチェックインする。
23時まで2時間寝る。


センターに戻って夜勤に入る。