僕の音楽遍歴 その9(高校3年①)

高校3年の時に一大転機が訪れる。
それは「輸入盤」というものの存在を知ったことだった。
そしてさらに、東京には「輸入盤をメインに扱う店がある」ということを知って愕然とした。
一切知らなかったわけではない。
あるということは知識として知っていた。だけどリアルなものとして認識できていなかった。
青森市に住んでいるとそもそも手に入るものは国内盤のみ。
中古CD屋にてたまに見かけるぐらい。
高2の頃、ジャスコの中の大きな家電の店の一角のCDコーナーにて輸入盤が扱われるようになった。
今でも覚えているけど、そこでは高校卒業までの間に
Roxy Music 「VIVA! ROXY MUSIC」と The Sugar Cubes 「It's It」そして
何の予備知識も無くジャケットに惹かれて 10000 Maniacs 「Blind Man's Zoo」この3枚を買った。
CDケースが縦長の薄っぺらい紙箱の中に入っている昔のアメリカ仕様でそのまま売られていた。
青森市では売れるわけが無くて、その後何年か後には確か店ごと無くなった)
でもこれって、国内盤が出るぐらい有名な人たちのを売っているわけであって、
僕も普通の店に国内盤が見つからなくてレンタルにも無いからこれらを買ったわけであって、
気分的には青森駅 LOVINA の新星堂で国内盤を買うのとあまり変わらない。


高3の夏にとある事情で上京し、そこで知り合った人に教えられて
初めて渋谷のHMVに行ったときはテンパった。
夢中になって何時間も過ごした。
今の場所ではなくて、今はパチンコ屋になってしまった ONE OH NINE の地下にあった頃の話だ。
国内盤の出ることの無いアーティストのアルバムというものが
この世にはたくさんたくさん、たっくさん存在する。
これは17歳の僕にとっては衝撃的なことだった・・・。
その日上野から乗ることになっている寝台特急の時間はまだまだ先で、
1万円というお小遣いで何のCDを買うべきか真剣になって悩んだ。
Can 「Monster Movie」と Gangway のコンピレーションを買ったことは覚えている。
(Gangway のことは全然知らなかったが、HMVにて大きく扱われていたのでつい買ってしまった)
残り2枚がなんだったのかは今、思い出せない。
再度上京したとき、Can 「Soundtracks」「Delay」を買ったことは覚えている。
輸入盤の店はその後の僕の人生(というか金銭感覚)を大きく狂わせる。


輸入盤こそ扱っていなかったが、青森市には BE BOP という気の利いたCDショップがあった。
いいセレクションをしていたと思う。店の内装もおしゃれだった。
新町に本店があって、サンロードの中にもう1軒あって、
バブルの頃には小さな店をもう1件夜店通りに出していた。
この夜店通りの店はかなりセレクトショップ的な位置付けで、さすがにすぐ店を畳んでしまった。
でもこういう店があったおかげで、高校生だった僕はかなり救われた。
なーんにもなくて息詰まるような青森市で青春時代の前半半分を過ごしていた僕にとって
持て余す好奇心のアンテナをくすぐるようなものは他になかった。
もちろん当時にはインターネットなんてなかった。
そもそも情報というものが全国的に大きな、ざっくりしたもの以外に流通しないようになっていた。
ここではいろんなCDを買ったなあ。
大学生になっても帰省するたびにここでたくさんCDを買った。
ここでCDを買うという行為そのものが嬉しいことだった。
Can で言えば ALFA から出ていたボックスセットの3巻目
(奇跡の名作「Future Days」が入っている)が売られていて、高2の冬にそれを買うと、
1年後まで売れ残っていた4巻目を高3の冬に買った。
ビートルズのアナログの海賊盤もここで何枚か買った。
以前の回で万引きしたと書いたのは、もちろんこの店だ。
この店で埋もれてしまって返品されるよりは、
お金が全く無くても聞きたくて聞きたくてしょうがない僕が盗んででも聞くべきだと
そういう理由で、店に敬意を表しながら万引きをした。すいません。今謝ります。
BE BOP の作っていたフリーペーパーでは地元が誇る、
有名になりかける寸前のグループ Sing Like Talking の連載があったりした。
残念なことに僕が大学生の時にこの本店もなくなってしまった。
青森市に不況の波を感じるようになったのはこの頃のことだ。。。


僕の人生を狂わすもう1つの要素、中古CD屋は高校の頃の青森市には
市役所の近くの「佐々木レコード社」か
夜店通りの古本屋「ブックサプライ」ぐらいしかなく、
ここもまた定期的に通って珍しいものが無いか探した。
「佐々木レコード社」では Neil Young 「Weld」や Patti Smith 「Horses」を買った。
「ブックサプライ」ではほんと、いろんなものを買った。数え切れない。
閉店するつい最近に至るまで、帰省するたびにここをチェックしていた。
あ、あと「Black Box」とかいう名前のも1軒あったな。
夜店通りを転々と移転し続け、いつのまにか閉店した。
ここが確信犯的にマニアックな品揃えで、
たった1人きりの暗い感じの店長は相当ロックに詳しそうだった。


高2かの時期で他に言っておきたいこととしては、
法律上の規制かなんかで
全国的にレンタルで洋楽のCDが取り扱い不可になるというムードが一時的に高まったことだ。
僕にしてみれば死活問題だった。顔が青くなった。まじで。
その一方でいくつかの店では洋楽の在庫を1枚300円で投売りを始めたので、
僕は小躍りしながら買い漁っていた。
(その中の1枚にあったのが The Honeymoon Killers でそこから Crammed Disc への興味が始まる)
結果として洋楽のCDは取扱不可にはならなかったはずだ。
でもその後どこのレンタルも洋楽の新譜をあまり増やさなかったのは覚えている。
まあ結局は大学進学の時期だったので、
高2の僕が一大事と感じたほどの大した影響は無かった。


・・・振り返ってみると音楽しかない高校時代だった。
後は演劇部の部室にいるか、昼休みに大富豪をやってるか、家で勉強しているか。
それしかなかったから、ロックにのめりこんだんだろうな。