「ミリオンダラー・ベイビー」

期待に違わず、大傑作でした。言うことないです。よかったです。
今年見るならこの1本です。
ヒラリー・スワンクモーガン・フリーマンも非常にいい演技をしていました。
オスカー取って当たり前です。
主演も兼ねるクリント・イーストウッドの演出も当然のごとくよかったです。
シーンの組み立てに無駄がなくてその中に配置される台詞もシンプルなのに深みがあり、
撮影もライティングも、イーストウッド特有の影/陰を活かした、相変わらず美しいものでした。
(特に深夜のボクシングジムで光と影の境目に立ち、上半身が闇の中に消えている、とか)
周りはもううじゃうじゃとカップルだらけで、ここ最近ではダントツにカップル率が高く、
僕の右隣のカップルは見てる間ずっとお互いの体に触りまくって撫でさすって
その音が絶えず聞こえていたのですが、
(少し遅れてシアターに入ったら僕の番号の席に座っていたので最初ちょっとむっとしたのですが、)
それもすぐ気にならなくなるぐらい、作品にのめり込みました。
2時間を越えるという長さも全然気になりませんでした。
「素晴らしい」です。
「素晴らしい」点を数え上げていくとキリがないのですが、
最後にもう1つだけ言うと、やはりクリント・イーストウッドが自ら担当した音楽、もう、これですよね。
というわけで、非の打ち所のない名作認定。
老若男女あらゆる人にお薦めできる21世紀のスタンダード、
それが「ミリオンダラー・ベイビー」なのである。


・・・なのであるが、僕としてはどうしても「ミスティック・リバー」の方が好き。
なぜかって言うとやるせなさでは「ミスティック・リバー」の方が断然高いから。
事件の後、ヒラリー・スワンクが下した決断、クリント・イーストウッドの下した決断、
そのやりとり。これはこれで非常にやるせないものなんだけど、
もしかしたら当事者の2人にとっては幸福な出来事なのかもしれなかった。
ミスティック・リバー」は幼馴染の3人が引き裂かれ、それぞれ人生を狂わせられるんだけど、
そこには何の理由もなく、不条理で、
その結末は映画史上稀に見るぐらいほろ苦い、というか悲惨なものだった。
まあ結局は好みの問題になるのかな。
ミリオンダラー・ベイビー」が甘いということでは決してない。それだけは言っておく。
ミスティック・リバー」が僕にとって100点満点の映画だとしたら、
ミリオンダラー・ベイビー」は99点の映画だった。
その足りない1点が何なのかというと、うまく言えない。
僕の中で小さな何かが、心の奥底で、ひっかかっている。


ヒラリー・スワンクの出演する映画っていうのを初めて見たんだけど、この人は凄いね。
役どころも凄いんだけど、その役に打ち込む姿勢・志の高さってのがビンビンと伝わってきて
見てて非常に清々しかった。
ボクシングも素人だったはずなのにどこをどう見てもプロのボクサー。
最初はサンドバッグの叩き方もなんかただ力任せだったのが、
身のこなしがどんどんそれらしくなってきて、体つきも引き締まってくる。
(それを画面が切り替わるたびに縄跳びの跳び方が
 次々に高度なものとなっていくことで簡潔に表わすというのが演出としてうまい)
ボクサーとしての気迫も備わってきて、リングの上では闘志剥き出しのファイター以外の何者でもない。
決して美人ではないのに、女優としてなんかとてつもないオーラを放っていた。
もう1度書くけど、すげーよこの人。
今後の出演作も見逃せないな。
(新聞かどこかの評で、「ボーイズ・ドント・クライ」も性同一性障害を抱えていた人物だったし、
 今後キワモノ女優されないかが心配とあった。僕もそう思う。普通のヒロインをさせるにはもったいない?)


モーガン・フリーマンは例によって最高。
クリント・イーストウッドについては言うまでもない。


まだ僕の中で咀嚼できていないので、本当はたくさん書くことがあるはずなのにうまく出てこない。
とにかく最後に言いたいこととしては「ミリオンダラー・ベイビー」という名前からして最高ってこと。
「100万ドルベイビー」だよ?
こんな恥ずかしい名前付けようったって普通付けられない。
それが何の違和感もなく作品の内容とはまるのってものすごいことだ。

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話は全然変わるんだけど、最近パンフレットの中でよく、
ジャズ・ヴォーカリストの大橋美加の名前をよく見かける。(大橋巨泉の娘ですね)
いい文章を書いていると思う。
驚いたことにこの日見た「フォーガットン」「ミリオンダラー・ベイビー
どちらにもエッセイを書いていた。
(「フォーガットン」の方は書くのに苦労したことが伺える・・・)