メキシコ(9/3)その2 成田空港

快晴。9月に入ったとはいえ、東京はとても暑い。
リュックサックを背負い、ドアに鍵をかけて僕は駅に向かって歩き出す。
ドバイの Virgin で CD を買ったときの買い物袋を手に。
中にはパスポートや HIS から送られてきた各種書類(格安航空券の引換証やホテルのバウチャー)や
地球の歩き方」や道中で読む文庫本が入っている。
恐らくメキシコシティでもこの買い物袋にあれこれ持ち歩いて歩き回るのだと思う。
ほんとなら肩掛けのカバンなんかがいいんだろうけど、で、一応部屋の中にはあったんだけど、
荷物をとにかく減らしたくて直前になってリュックサックの中から取り出した。


丸の内線で荻窪から銀座へ。山手線で有楽町から上野へ。
京成線の特急で上野から成田国際空港へ。
上野という街はいつ来ても時間が止まってしまっているなあ、
いつまで経っても昭和のままなんだなあなんて思う。
上野公園の坂を下りていくと古びたカバン屋や帽子屋が軒を連ねる古びたビルがあったり、
儲かってなさそうな映画館があったり。
レストラン−食堂も昔なら庶民のご馳走だったんだろうけど、
今はただ時代に取り残されてひっそりとしている。


京成線の特急に乗る。成田まで80分。1000円。
京成線と言えばスカイライナーなんだろうけど、金額が倍になる割には
調べてみたら所要時間は56分で劇的に短くはならない。
時間もあることだし、普通に特急に乗って行く。
上野ではあんまり人は乗ってこなくて「こんなもんか」と思っていたら日暮里でたくさん乗り込んできた。


乗ってる間、コニー・ウィリスの「航路」を読む。
臨死体験がテーマ。
その科学的解明のために、主人公は自ら実験台となって擬似的な死の中に入り込んでいく。
分厚い。上下1200ページある。でもここ3日でもう400ページ読んでしまった。
このペースだと日本に帰る前に読みきってしまうかもしれない。
宮部みゆき絶賛」と帯にある。
僕は何かにつけて「宮部みゆき絶賛」の本ばかり読んでいるような気がする。
P・K・ディックの「暗闇のスキャナー」であるとか。
それでいて、いつか読まなきゃなと思いつつ、宮部みゆきの書いた小説を読んだことはない。


周りの乗客は成田に向かう旅行者か、その付き添いか。
付き添いは女性の旅行者に対して、その彼氏か、同性の友人か。
彼氏ならまだしもわざわざ友だちのためにお金と時間をかけて成田まで来るなんて・・・、
女の友情というのはすごいもんである。
目の前に座ったカップルは豪快系の彼氏とバックパッカー系の彼女って感じで、
大声で喋りまくっている。嫌でも聞こえる。
話がなぜか沼昭三の「家畜人ヤプー」になる。
彼氏の方は吼えるように、高校時代に読んでモーレツに感動したとかそんなことを言っている。
この沼昭三ってのが実は有名な編集者のペンネームで、とかウンチクを語る。
そしてあらすじの説明。車両の中いっぱいに聞こえるぐらいに。
何千年か先の未来、イギリスと戦争をして負けたことにより日本人は家畜化し、云々かんぬん。
主人公の男女はなぜかタイムスリップしてその世界に入り込み、男の方は去勢され、・・・。
彼女曰く「わー面白そー」「読んでみる?」「読む読む!」
普通、読みたいって思うかよ!?で、彼氏が言う。
「でもさあ、これって女に読ましたくない小説No.1だな」
じゃあ紹介するなよ・・・。
残念なことに、僕自身はいつか読まなきゃならぬと思いつつ、いまだに読んでない。


成田空港到着。
終点1つ手前の第2ターミナル駅でみんなぞろぞろ降りていくので、
リュックサックを網棚から下ろし、僕もホームへ。
改札を出て、パスポートチェックの列に並ぶ。
(ホームには「手荷物検査があります」と書いてあるのに、行ってみるとパスポートのチェック。なんか変)
そこから出ると目の前にさっそく両替屋があったので入る。
銀行ではなく、両替専門の店だった。
手持ちの日本円が7万円あったので、米ドルで5万円、メキシコペソで2万円とした。
それぞれ442ドル、1640ペソとなる。
だいたいのところ、1ペソ=11円ぐらいとなる。
HISで航空券を買っていたら海外のレートを自動的に計算する小さな電卓が
もらえるようになっていたのだが、僕は引き換え用のクーポンを持っていないということで不可。
でもこういうのってどうやって日々レートをアップデートするのだろう?手入力だろうか。


3階の出発フロアへ。各航空会社のカウンターが並ぶ。
JAL が主催のイタリア行きのツアーに大勢人が集まっている。若い女性たちばかり。


公衆電話から母親に電話をかける。今から行ってくるよと。


上の階に上がって本屋に入る。
このペースだと「航路」読み終えてしまうだろうなあと思い、文庫を選ぶ。薄くて簡単に読めるものを。
買ったのは、村上龍「空港にて」と吉田修一パーク・ライフ


航空券の引き換え時間は12:55で、到着は11時半。
あんまり腹は減っていなかったけど、12時を過ぎていたのでなんか食べることにする。
1週間ほど日本食から遠ざかるしなあと讃岐うどんの店でカツ丼とうどんのセットを食べる。
先週海の家で食べたのとあんまり変わらないようなカツ丼が出てくる。
カツ丼という食べ物は本当においしいものを作るのは大変難しく、
よほどのことがない限り「並」レベルのものにしか出会うことはない。
その分「食えない」ものに出会うこともない。


時間があったのでふらっと外に出て離着陸するジャンボジェットをぼさーっと眺める。
さらに時間があったので、CD / DVD を売っている小さな店に入る。
よく見るとアダルト DVD が1つのコーナーとなってたくさん売られている。
今から海外旅行するって人がなんでこういうのを買うのだろうか?と不思議に思う。
旅先で見てたら、余りにも侘しいじゃないですか。
はたと思うに、これって外国人観光客がお土産として買って帰るものではないか?
きっとそうに違いない。


そろそろ時間かなと思って HIS のカウンターを探す。
なのに見つからない。E-31ってとこにいかなきゃならないんだけど
E って JAL で、29 までしかない。なぜだ?
よく見ると引き換え場所は第1ターミナルと書かれていた。ここは第2ターミナル。
僕はてっきり、第2ターミナルのあの広いフロアに第1も第2も含まれているものと勘違いしていた。
羽田みたいに、JAL側・ANA側分かれているというように。
第1ターミナルは全然別な建物で電車でもう一駅行ったところにあることがわかる。
そうか、京成線の終点って第1ターミナルのことだったのか。
第1ターミナル行きのバスが出ているようなので行ってみるが、出たばかりのようでまだ当分先。
地下まで下りていって京成線に乗る。初乗り140円。ちょうどよく5分後に来る。
でも券売機で買おうとしても140円のボタンが反応しない。頭上の料金表には出ているのに。
どの券売機を試してもダメ。
カウンターの人に第1ターミナル行きを買いたいんですけどと言うと怪訝そうな顔をされる。
「無料のバスが出てますけど」と言われる。
それでも、急いでいる僕は京成線に乗っていくことを選ぶ。切符を売ってもらって改札をくぐる。
ホームへ。ちょうど上野行きが出て行った後だった。ってことはこのホームじゃない。
だけど、反対方面はどこから乗ればいいのだろう?わからなくなる。焦る。
向かい側はJRのホームで、渡る方法はないようだ。
それでも、階段を上ると「第1ターミナル行き」と掲示がある。混乱する。
もう1度階段を上り下りする。
改札に戻って聞いてみる。駅員にまた怪訝そうな顔をされる。
この京成線は上りも下りも同じホームなのだと言う。なるほど、そういうことか。
まさか単線だとは思いもよらなかった。
東京近辺の鉄道は私鉄の郊外のローカルでもない限り全て複線だと思っていた。
成田国際空港に行く鉄道ともなれば複線でしかるべきでしょ?実はそうじゃなかった。