「キング・コング」「THE 有頂天ホテル」

会社の映画部の月例鑑賞会、今年最初は「キング・コング」「THE 有頂天ホテル」の2本。
超エンターテイメント作品の海外・日本代表の激突。
おいしくっておなかいっぱい。
どちらも有楽町の日劇PLEXでした。

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キング・コング


言わずと知れたモンスター映画の王様のリメイク。
ロード・オブ・ザ・リングス」3部作のピーター・ジャクソン監督の手になるもの。
僕は「ロード・・・」を1本たりとも見ていないという
映画ファン失格な人間であるが
(だって3時間は長いし、それが3部作ともなれば・・・)
そんな自分を恥じてしまった。
やられたよ。
ピーター・ジャクソンは今一番面白い映画を安定して作ることのできる監督の一人に確実に入る。
最初の状況説明みたいなシーンが終わってからはひたすら手に汗握る展開の連続。
キング・コング」だというのに恐竜から逃げ惑い戦う様が中心に据えられていたり、
例のエンパイア・ステート・ビルによじ登る名場面が出てきたり。
あれよあれよという間に3時間終わってしまう。
素直に「活劇」というものを受け入れられる人ならば至福の3時間ではないか。


CGを駆使した映像のすごさでぐいぐい引っ張っていって
そればかりを楽しむんでも全然いいんだけど、
「モンスターの悲しみ」ってのがきちんと描かれていたところに僕は好感を持った。
キング・コングがちゃんとキャラクターとして成立してんですよね。
何も言わないのに、雄弁。
ニューヨークの公園、周りはクリスマスの電飾で赤や黄色の光が瞬いている、
コングはナオミ・ワッツを手に握って凍った湖の上を滑って楽しむ。
これはいい場面だった。
こういう映画的にエンターテイメントを結果として「突き抜けてしまう」場面が
きちんと用意されているところが、ピーター・ジャクソン監督のすごさなのだと思う。
ニューヨークの劇場、コングを見に集まった大勢の上流階級の観客相手に
ショーを演じている場面って
プリミティブな映画的狂気がそこはかとなく立ち込めていたように僕は感じた。


面白い。お薦めです。
絶対大画面で見たほうがいい。

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THE 有頂天ホテル


日劇PLEX で見て13時と16時の席は完売。大ヒット街道を歩んでいるようだ。
13時の回はしかも舞台挨拶があった。知ってたらこっちを見たなー。
僕らは16時の回を見た。


今やあちこちで引っ張りだこの三谷幸喜の監督第3作目。
僕は第1作「ラジオの時間」が初めての三谷幸喜体験で、これ文句なく面白かった。
THE 有頂天ホテル」ももちろん面白かった。
腹抱えて笑ってばかり。
(最近テレビでお笑いの番組、特に過激で先鋭的なお笑い番組を見てないから、
 こういうウェルメイドな喜劇の方が僕には合っていたのかもしれない)


よくできている。とにかくよくできている。
脚本が。演出が。役者の演技が。
エンターテイメントとして申し分ない夢のような2時間を過ごせた。


でも、普段パゾリーニだのタルコフスキーだの難解で前衛的で文学的な映画ばかり見て
ありがたがっている僕のようなチンケな映画ファンとすれば何かが物足りない。
薄味、というかある種の味、映画の「風味」がごっそり欠けている。
薄っぺらい。一本調子で。
でもこれはやっぱうがった見方なんだよな。一般的に。
そういうゲージュツを求める向きを
「いいじゃん!!楽しいんだから!!!」と強引に勢いで捻じ伏せる力を
十分すぎるほどこの映画は持っていて、確かに見てる間の僕は説き伏せられていた。
早い話、よくできた笑い以外になーんにもないんだよね。
手品は手品でも、トリック重視ではなく
詩的な雰囲気をそこに込める人も中にはいるわけで。
どちらかといえば僕はそういう人を好きになる。
でも三谷幸喜にそういうのを求めてもなあ。


要するに、「THE 有頂天ホテル」は面白かった。
たぶん間違いなく今年の面白かった日本映画になると思う。
だけど、三谷幸喜が4本目、5本目、6本目を撮るとき、どうなるのだろう?ってのが気になる。
ずっとこの路線?
だとしたら緩やかに後退していかないか?
全く同じだけの笑いと感動のインパクトをそこに現出させるのならば、
どこかで大きく方向転換するか大化けする必要がありそうだ。
役者のアンサンブルも素晴らしく
見てる間は楽しく笑ってるんだけど、
帰りの電車の中でふとそんなことを考えてしまった。
こんなの、余計なお世話ですよね。


(果たして、この作品を見て「自分も映画を撮りたい!」とか
 「喜劇役者になりたい!」とかあるいは「ホテルマンになりたい!」とか
 思う若者って出てくるだろうか?僕は出てこないように思う。
 つまり、「THE 有頂天ホテル」は「THE 有頂天ホテル」として自足してしまっていて
 極度に閉じられている。でも閉じられているがゆえに
 あの濃密な構築された笑いを提供できるというわけだ。痛し痒し。)


それにしても、自分はとことん、松たか子という女優が
好きになれないのだなあということがわかった。
女優の中では一人だけ下手だったように思う。棒読み。
その反面、戸田恵子の株が僕の中で急上昇する。
え!40歳超えてんの?
僕と同い年ぐらいかと勘違いしつつ「いいなあ」と思いながら見てた。
(どちらも松井と噂になり、と今書こうと思ったんだけど、
 それって戸田菜穂の方ですね。危なかった)


篠原涼子も YOU もよかった。
YOU はあの手のキャラで今後の日本映画に欠かせない存在になると思う。
あと、こういう映画に出てくるときの西田敏行は最高に面白い。