モロッコのワイン

ワールドカップが準々決勝ぐらいの土曜の夜、
ロッコでもらったワインを開けた。
そう、モロッコ旅行でメルズーカからフェズに戻る途中で
ガイドの運転する自動車の接触事故に遭遇、
次の日にお詫びの気持ちということでもらったワインだ。
「特別な日に開けよう」と思いつつ、2年が過ぎた。
つまり、「特別な日」はなかった・・・


このままだとだめになる、もったいないと思って
ワールドカップというお祭りにかこつけて飲むことにした。
ワインがだめになると具体的にどうなるのかわからなくて
酸っぱかったり渋かったり、
とにかく飲めたもんじゃないシロモノになってんじゃないかと思いながら
恐る恐るグラスを口に運ぶ。
・・・少なくとも、そういうことにはなっていなかった。よかった。
気のぬけたような味もしない。
適度に酸味があって、辛くもなく甘くもなく中間の味なのかな。


部屋の片隅で埃をかぶっているのを掃除していたら先日見つけて、「あ!」と思う。
そして別な場所に置きなおしたつもりが転がって冷蔵庫裏の近くへ。
つまり、あったまっていた・・・
これってどう考えてもいいことないよね。


赤。ラベルには
「CABERNET」「Vin de Qualite Supericure」
「MIS EB BOUTEILLE AU MAROC」「Les Celliers de Meknes」と書かれている。
ワインについては全然わからない。正直な話。
カベルネ」という言葉はさすがに聞いたことあるが、
具体的に何を指すのか、ここだけの話、分かってない。
メクネスのメーカーが作ったものであって、
ロッコでワインと言えばメクネスだってことは知っている。


それにしてもモロッコ旅行から2年か。早いなあ。
ガイドのイブラヒムさんたちはどうしているのだろう?
来る日も来る日も日本から来た旅行者相手にガイドし続けているのか。


ワインを飲みながら、あれこれいろんなことを思い出した。
事故に遭ったあの日、アトラス山脈の峠から見た青空と、浮かんでいた白い雲。
救急車や警察が到着するまでの長い間待っているうちに、雨が降り出したこと。
事情徴収。僕はたどたどしい英語で事故の状況を書き綴った。
砂漠でお世話になったイブラヒムさんとの別れ。
握手したときに、「Sorry. You're a good man.」と言われたこと。
次の日は別なガイドの方にフェズの迷宮のような都市を案内してもらったんだよなあ。
オプションに入ってなかったんだけど、旅行会社の好意で。
その一環で、ワインももらった。
背負っていたでかいリュックサックの底の方にボトルを、何重にも包んで。
そうして日本に持ち帰ってきた。


持って帰ってきてすぐ、飲めばよかったなあ。
ワインそのもの味からしたら、その方がおいしかっただろうな。
でもなぜか開けるのに2年もかかって、今、飲んでいる。
ロッコの旅行、旅行記の出版、出版社の倒産と
あれこれいろんなことが目まぐるしくあって、
それがようやく一段落して僕の中で整理がついたということか。


ロッコにはまた行きたいなあ。
ジブラルタル海峡を渡って、タンジェを訪れて。
あと、サハラ砂漠をもう1度。