"Camouflage"/ David Thomas Broughton

okmrtyhk2007-04-16


昨晩はデラ君の主催するイベント "Camouflage" / CMFLG を見に行く。
目当てはイギリスから来たフリーフォークシンガーである David Thomas Broughton
デラ君が絶賛しているので、音は聞いたことないけど興味を持った。


場所は渋谷の O-EAST の横の「Lounge Neo」
クラブっぽい場所。
ビルの5階と6階で、5階がフロア、
6階がガラス張りのバルコニーのようになっているという面白い構造。
VIP ルームとなっている。でも、音はよく聞こえない。
僕は5階のソファーに座って DJ の音を聞きながら、
始まるまで半ば眠って過ごす。
(何人かいた中で僕好みのオシャレなノイズ的な曲を
 ところどころかけていた人がいて、よかったと思う)


急遽決まったイベントのようで、出演者は2組だけ。
1人目の Yuri Miyauchi (Rallye) はデラ君のイベントに何度か出演している人のようで、
ラップトップ+ギター。
ナチュラルな音。木漏れ日の下で聞くといいような。


で、肝心の David Thomas Broughton なのですが!
すごかった・・・
こういう人初めて見た。
デラ君のサイトではこういう紹介をされている。
John FaheyNick Drake、Smog や Songs:ohia などとも比較されるその歌は注目です」
http://www.cmflg.com/infonew.html
見終わった後で思う。
フリーフォームなフォーク弾き語りって意味では通じるものがあるけど、
John Fahey, Nick Drake , Smog のどれとも違う。
なんだろうかね。
Four Tet がギターだけで弾き語りをやったらこういう感じになるんじゃないかな。
ギター+声+αでどこまでできるかってことを同じように追求すると思う。


ループマシンって言うのだろうか?
弾いたフレーズをその場でサンプリングしてループさせるやつ。
よくミュージシャンがステージで演奏している間に足で踏んで
もう1度踏むとその間のフレーズが際限なく繰り返される。
使い方によってはループした音に重ねられた音が加わって新たなループとなる。
David Thomas Broughton はこれを駆使して
ギターと声をどんどん重ねていって緻密な織物へと仕立て上げていく。
巡礼中の修道士が運命的な場所を見つけて
人気のない森の奥に大聖堂を建てていく光景、とでも言うべきか。
最初はイギリス風牧歌的フォークだったのが
見る見る間に音の大聖堂へと変貌し、
曲によってはその行き着く果てとしてとてつもないノイズの奔流が生まれる。
しかもそれが基本的にギターと歌声だけ、
時としてリズムボックスを模した声、
椅子を引きずる音、椅子を水の入ったペットボトルで叩く音、
その場にある物を組み合わせるだけで生み出されるのだから驚かされる。


ノイズの奔流は更なる高みを目指して上り詰め、
ふとした瞬間に突如消えてなくなる。一瞬の儚い静寂。
そしてまた新たなギターの1フレーズを爪弾くところから全てが始まる。
この瞬間がぞくっとする。
ビートルズの「Abbey Road」で言ったら
 「I Want You」の後に「Here Comes The Sun」が始まる瞬間を思い浮かべるといいかも)
もう1度書くけど、こういう人初めて見た。
デラ君はどこから見つけてきたのだろう?


ライブに足を運びステージを見ることが
鑑賞ではなく、体験、
それまで見たことのない異形のものに出会う体験となることってそうそうない。
昨晩は何年ぶりかでそれがあった。


急遽決まったライブで客の入りが少なかったのが残念だ。
見ることのできたほんの一握りの人は後々自慢できるかもしれない。
本人は望まなかったかもしれないけど、
記録としてビデオを撮っておくべきだったのではないか?
次また日本で演奏することがあったなら、僕は撮りたい。

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もちろん、この手の音楽は万人受けするタイプでは全然なくて、
僕としても誰彼構わず薦めたりはしない。
新宿のタワレコの「Avant-Pop」コーナーが好きな人向きっていうと分かりやすいだろうか。


あと、物販で売ってた CD を買って家に帰ってからさっそく聞いてみたんだけど、
CD はこのライブの凄さの10分の1も伝えるものではなくて、
特にこれと言って印象に残ることのないアシッドフォークだったのが残念。
ライブ映像が YouTube に転がっていると思うので、そちらを見たほうがいい。
(今探したら20個見つかった)


要するにこういうループマシンを多用した演奏って
CD で聞いちゃうとただの多重録音にしか聞こえないわけで。
やっぱライブですよ、ライブ。生で見なきゃ。


そんなわけでデラ君にはがんばって
これからも "Camouflage" / CMFLG 続けてもらって
また David Thomas Broughton を日本に呼んでほしい。
よろしく。