ツアーでペルー その31(4月26日)

チチカカ湖の夜明け


22時に眠って、午前1時半に目が覚める。
頭が割れるように痛い。
スーツケースの中から頭痛薬を取り出して飲む。
クローゼットから毛布を取り出して上に掛けてもう一度寝る。
明日もこんな調子だったらやばいなあ・・・、なんて思いながら。


5時半に起きると、体調はかなりよくなっている。
頭痛は少しばかり。観光に支障を来たすほどでもない。
助かった!


カーテンの向こうがうっすらと明るくなっていることに気付く。
チチカカ湖が夜明けの光でオレンジ色に染まっている。
神秘的な美しさ・・・
もしこの世に夜明けの美を司る女神がいるとしたら
世界中の人々から捧げられてもおかしくはないような、
そんなパーフェクトな夜明け。


カメラを引っつかんで慌てて部屋を出る。
しかし正面の玄関はバーでロックされていて、宿泊客はホテルの外に出られないようになっている。
どうしたもんか?
湖にそっと寄り添う光のヴェールに、もっと近づきたいのに・・・
あの夜明けはこの世界でたった一度きりで、今にも消えてしまうかもしれないのに・・・


「うー」と歯軋りしながら仕方なくレストランへ。
ビュッフェで食事。
夜明けを眺めながら、太陽が少しずつ少しずつ昇っていって
オレンジ色が薄くなっていくのを眺めながら、食事をする。
こんな優雅な朝食はこれからの人生でもそうそうないだろう。
温かなコーヒーカップを手にして、いつまでも眺めた。


食べ終わった頃、もう一度玄関に行くと
6時を過ぎていたからだろうか、今度は開いていた。
元気になって体調のいいF君とばったり会って、
2人で歩いてホテルの裏側の展望台へと向かった。
小さな丘になっていて、野原の道があるようなないようなところを少しずつ登っていく。
登りきって丘の上から、はるか下、目の前に広がるチチカカ湖を眺めた。
陽の光を浴びてサラサラと輝いている。
頂上には昨日見たシルスタニ遺跡のトカゲのチュルパのレプリカと、オベリスクが建っていた。


さらに道なき道を進んで、ホテルの反対側へ。
向こうに小さく、白いバルコニーのようなものが見える。
ろくに道もない場所を「こっちかな」とか言い合いながら歩き、
足場のないところを下りてみたり、
小学生が裏山で冒険しているかのような懐かしさがあった。
歩いてる場所が客室の真ん前だったので、カーテンの空いた部屋の中が覗けたり。
丘の上からふと下の方を見ると、昨日一緒に酸素部屋を探した女の人も
朝早くから湖のほとりを1人テクテクと歩いていた。散策しているのだろう。
「おーい!」と声を掛けようかとも思ったけど、
ホテル中に聞こえたらさすがに恥ずかしいよなーとやめといた。


バルコニーにたどり着く。
ホテルの建っている湖に突き出た小さな半島の、その突端部分に当たる。
ぐるりと見渡すとどちらを向いても湖。
ニヤニヤ笑い出すと止まらなくなった。


F君が写真を撮ってくれと言うので、カメラを受け取ってシャッターを押した。
だったら僕も、と写真を撮ってもらう。
珍しく自分の写った写真を自分のカメラで撮ったことになる。
僕は旅行に行ってる間、自分の写真を撮ることは全くない。
自分の写っている写真ってのは後から見てなんだか居心地が悪い。
それに写っている自分の顔がさえないことがほとんどだし。
そのとき自分の見た風景だけがあればいい。
ツアーの間、夫婦やカップルで来ているのであっても友人同士であっても、
とにかくみな互いに写真を撮りあっていた。
あるいは誰かにシャッターを押してもらって2人で。
新婚旅行が多かったからだろうか、夫婦の人たちは特に。ポーズを取って。
僕は1人で風景ばかり撮っていて、「撮りましょうか?」と言われても
「いや、いいです」と断り続けていた。
「変わってる人」と思われていただろうな・・・


バルコニーからはホテルのバーへと続く道が伸びていた。
そこから中に入ってF君とはそこで別れる。
僕はまた外に出て、湖のほとりまで下りていって、
そこから先しばらくの間、湖に沿って岸を歩いてみた。
聞こえてくるのは鳥の鳴き声だけ。
鴨の群れが泳いでいる。
葦の間を老人が1人ボートを漕いで、消えていく。
太陽は既に高く昇り始めていて、湖面にキラキラと反射して眩しい。
それが行く手を遮るような形になったので、僕は引き返すことにした。


部屋で荷造りをしてスーツケースを外に出す。
テレビをつける。CNNを見て、その後 MTV にチャンネルを回す。
ミュージック・クリップを見る。
- Maroon 5 「Makes Me Wonder」
- My Chemical Romance 「Famous Last Words」
- Good Charlotte 「Keep Your Hands Off My Girl」
- Pepe Alva 「Huellas」
- Justin Timberlake「My Love」
Good Charlotteって案外いいかもね、と思う。


チェックアウトして、出発待ち。
暇を持て余しているうちに目が留まって
ホテルの中の高級アルパカ製品のブティック「Alpaca 111」にふらっと入ってみる。
リマの空港にもあったかな。
http://www.alpaca111.com/
ここでとてもかっこいいセーターを見つけて即買い。
285ソルだったから日本円にしてだいたい1万円。
たぶん日本で買ったら倍ぐらいの値段がするんじゃないかな。
手触りがふんわりとしてとてもいいんですよ。
デザイン飽きの来ないものだし、一生着ると思う。40になっても全然着れる。
ペルーでみんなアルパカと言ってるのもよくわかる。
寒色系の色使いがとてもきれいなマフラーも気になったけど、我慢する。


急に体調が悪くなった人が出てきて、
医者に見てもらうために、本来の集合時間よりも30分遅れとなる。
「バタバタと倒れる」ってほどでもないが、
クスコに来てから毎日誰かしら、慣れない高地の環境に体調を崩している。
男女関係なし。年齢も関係ない。
50代以上と思われる人たちが
今回何人か参加していたけどなんともなかったようで、
やられてたのは20代・30代と思われる人たち。
見た目からすれば、日本では元気に生活してそうな。
高地の観光は侮れない。