N先生のこと

昨日の続き。
集まりにはN先生も顔を出していた。
映画サークル近辺のコアな連中はN先生の映画のゼミを取っていた。
「Nゼミにいた」というのは僕らにとってはある種の勲章のようなものだった。
僕は学部生時代は取ってなくて、大学院のときに1年だけ取った。
夏休みにレポートを出したのだが、
その後「今年の学生は出来がひどい」と嘆いていたと聞く。
僕1人だけではないだろうが、確実に僕はその1人だと思う。
ルノワールについて書かなきゃならなかったんだけど、
ルノワールの映画ってそれまで見たことなくて、
調べれば誰でもすぐ書けるようなことで大半を埋めて
最後に「フレンチカンカンの最後の踊りのシーンの躍動感は凄い」みたいなことを書いた。
今思うとものすごく恥ずかしい。
なので「僕だって一応Nゼミにいた」というのは
僕の公式プロフィールからは無いものとされている。


ということでN先生に会うことは怖かった。
以前新宿の TSUTAYA のエレベーターにてばったり会ったことがあって
小心者の僕は気付いてないフリをしてたぐらいだ。


飲み会でも話すこともなく終わるだろうと思っていたら
僕が「CDを7000枚持ってる」って話になって先生からお呼びが掛かる。
「君すごいねえ!!」と。そっから先ひたすら音楽談義。
最近のバンドは何がいいかってことに話は及びつつも
話題の中心は常に、70年代前半の音楽がいかに素晴らしいか。
Humble Pie 知ってる?」「もちろんです」
「いやーほんと君はいいやつだ」って肩をガシガシと叩かれる。
先生は僕の名前を覚えていたようだ。
(それとも忘れていて、その場で僕の名前を覚えたか)


1次会も2次会も先生の周りに当時の教え子たちが集まり、
先生を中心にしていろんな話題で盛り上がっていた。
とても気さくな方で、学生時代もっと仲良くなっとけばよかったとちょっと後悔する。
というか、学生時代もっとちゃんと勉強しとけばよかった。
もっとたくさん映画を見て、いろんな人と語っとけばよかった。


僕が生涯ベスト10だと思っているアルバムを聞かれて、語って、
そして最も好きなバンドとして Tuxedomoon の名前を挙げると
先生は Tuxedomoon に興味を持ち、
「7000枚持ってるヤツが一番というのだからすごいのだろう」
「今日、それだけは覚えておくか」ってことになった。
初心者にはとっつきにくく、アルバムによっては「なんじゃこりゃ」ってものもあるので
変なのを買うことのないよう、僕は祈る。