コインランドリー

映画を見てるとコインランドリーが出てくることがある。
アメリカ映画だろうと、日本映画だろうと。
なんか独特の情感のある場所だと思う。
裕福な人は決して利用しないだろうし、そこにいるのは決まって
金の無い20代の若者や30代以後の裏寂れた人生を歩む男女、
そしてたいがいは独り者ということになっている。
洗った衣服が盗まれないよう、ずっとそこにいなくてはならない。
ドラム式の洗濯機がグルグルと回る中で
暇を持て余して椅子に座って雑誌を読んでいる。
そんなイメージ。
確かにこういうのだと映画の中において恋愛のきっかけとなりやすい。


幸か不幸か、これまでの人生で僕は1度も利用したことが無い。
ああいう「待ち」の時間をとても嫌う僕には向いてないのだろう。
なんでこんなことを書くのかというと
昨日歩いていたら家の近くに寂れたコインランドリーを見つけて、
その中に20代前半ぐらいの女の子が
「暇を持て余して椅子に座って雑誌を読んでいる」正にその光景を目にしたからだ。
「あ、あるんだ。そういうの」と新鮮な驚きがあった。
コインランドリーというファンタジー
エアポケットのように存在していた。


9年間住んでて全然気がつかなかった。
いつもなら歩いて通ることが無く、自転車でしか走ったことの無い道。
それをたまたま気が向いて歩いてみることにした。
いつもと違うスピードで目線が違うと、
それまで気がつかなかったいろんなことが見えてくる。
コインランドリーもその1つ。


通り過ぎた後、あれこれ考える。
うつむいて雑誌を読んでいたから、どんな顔をしていたかわからなかった。
しかし着てた服装から察するにそれなりにきれいなのだろうと思った。
服飾関係の店員ってのが似合いそうだった。
デパートじゃなく、テナントの入ってる雑居ビル。
読んでた雑誌もファッション系だったような気がする。
待てよ、客商売だったら日曜休みってことはないよな。
普通の企業で働いてて、たまたま洗濯機の調子が悪いだけかも。
・・・なんてことを考える。
本当はもっと妄想が広がったんだけど、書くのはやめておく。


いつも日曜の夕方になると僕は洗濯物をカゴに入れて
近くのコインランドリーへと出かける。
そこで本を読みながら出来上がるのを待つ。
その時間帯にはいつも同い年ぐらいの女性がいて、
同じように本を読みながら待っている。
会話を交わすことは無い。だけど気になりだす。
何かきっかけとなることがあって、思い切って話しかけてみる。
そこから恋が始まる。
・・・そういう小説を書くことを考える。
でもかなりなところ普通な話なので僕が書くまでもないか。
散々あちこちで書かれているはず。


というかその前に、こういう話ってどう展開させるべきなのだろう?
その後2人は幸せに暮らしましたってのを書いてもしょうがないし。
突拍子もないことを書くのは興ざめだし。
淡々とした内容を淡々と続けていって、
淡い色彩が重なり合って少しずつ色が変わっていく情景を描くということになるか。
ほんのちょっとした心のふれあいとか、そういうやつ。
そんなことを考え出すと、これってかなり難易度高くない?と思う。
となると、挑戦してみたくなる。
「コインランドリーで出会う男女」っていうシチュエーションだけを与えられて、
無理なく自然な展開があって、情感がきちんと残る短編を完成させることができたら
かなりの上級者だよ、きっと。


書こう。


あと、コインつながりでコインロッカーってのも気になる。