ニューヨーク その25(6月3日)

okmrtyhk2008-06-23


6月3日。火曜日。
何度か、物音で目が覚める。6時前。ブルックリン。
アパートの窓から差し込む、夜明けの、残骸のような光。


朝、リビングで物音がして、後輩かと思って話しかけようとドアを開けたら
ルームシェアしていると聞いていた若いジャズマンだった。
「あ・・・」と思うが「おはようございます」と挨拶する。
驚いて向こうも「おはようございます」と返す。
寝ぼけたフリをして、また部屋に戻る。そのまま二度寝


9時ぐらいにリビングのソファーで寝ていた後輩が起きてきて、
今日どうします?という話になる。
後輩は午後ずっと勉強して学校で授業を受けるという。
21時半にマジソン・スクエア・パークで落ち合って
「Shake Shack」のハンバーガーを食べることにする。
僕は午前中コニー・アイランドに行って、午後はグッゲンハイム美術館に行って、
ロックフェラー・センターで夜景を見る、という1日にする。


ニュースサイトを開いていた後輩から
ヒラリー・クリントン民主党の大統領候補争いから撤退。
iPhoneSoftbank から発売されると正式に発表される。
この2つのニュースを聞く。


さっそく出かける。
最寄の駅から(R)ラインに乗って南まで下っていけば終点がコニー・アイランド。とても簡単。
後輩は(R)ラインで一度逆方向に行って、「Atlantic Av.」で(Q)ラインに乗り換えて
終点の1つ前の「Brighton Beach」で下りるとよい、とアドバイスする。
ここからコニー・アイランドまではロシア人街があるので覗いてみるといいですよ、ということだった。


平日の午前中は地下鉄がガラガラだった。
黒人の女の子たちが歌ったりキャーキャー騒いでいた。
保坂和志の「カンバセイション・ピース」を読み始めた。
余りに面白く、地上に出て景色を眺めるはずが終点までそのまま読み続けた。


「Brighton Beach」で下りる。
駅を出て歩き始めると確かに周りはロシア語ばかり。ロシア語の食料品店や食堂。
コニー・アイランドってブルックリン、というかニューヨークの最南端のビーチ。
ロシアから移民してきた人たちは何よりも寒さを嫌って、
明るい日差し溢れるビーチを求めたか。


どっちがコニー・アイランド方面だろう?と進んでいくうちに
ビーチに出てしまったので、そのまま歩いていくことにした。
木製のボードウォークがコニー・アイランドまで果てしなく続く。
逆側にも果てしなく。地図を見るとマンハッタン・ビーチとある。
日差しは強いが、気温はそれほど高くはない。
砂浜を波打ち際に向かって歩く。
平日の午前中だったのでお年寄りの姿が多かったが、
仕事が休みなのか若者たちの姿もちらほらと見かけた。
水着になって寝そべって日に焼いたり、カップルがボールを投げ合って遊んだり。
泳いでいる人たちももちろんいた。
お年寄りたちは折り畳みのデッキチェアを砂浜に置いて、
日傘を差して、一列になって浜辺を眺めている。


コニー・アイランドへ。途中、水族館を見かける。
水族館好きの僕としては入ってみたかったんだけど、
遠足の子供たちの入場街で行列になっていたので断念する。
駐車場には黄色のスクールバスが20台か30台近く停まっていた。
子供たちを連れてくるにはいいところなんだろうな。


ペプシの自販機があった。喉が渇いたので買うことにする。1.5ドルだったか。
紙幣だけじゃなくコインが使えたので、
この機会に財布の中でたくさん余っているコインを使おうとする。
僕はどうにもこうにもコインを使うのが下手で
州税が加算されるととてもハンパな金額になってしまうから
物を買うときにめんどくさくなってついつい紙幣で買ってしまう。
クォーター(25セント)はなぜか使いやすく、買い物で使うのはそれぐらい。
5セントと10セントをどうしても間違えてしまう。
せっかくだから使おうとレジで出しても受け取ってくれないことが
ニューヨーク滞在中に何度かあった。
そのことごとくが10セントだと思って5セントだったということばかり。
しかもそれって1枚2枚じゃなくてもっとまとまって使おうとしていて、
全然足りないということになる。
何か強い口調で言われるがよくわからず、結局紙幣で払うことになる。


自販機にどんどんコインを投入していく。
しかし50セントまでしか受け付けないみたいで、
一定以上行くと表示が50セントから先進まなくなった。
キャンセルする。後でどっかで別なものを飲もうと。
合計85セントぐらい入れたのが35セント分だけ戻ってきた。
50セントは戻ってこないようだ。ま、いいかと思う。
戻ってきた35セントは1セントや5セントの山ではなく、
クオーターとダイム(10セント)だったので、ちょうどいい両替になった。


桟橋を先の方まで行ってみる。
釣りをしている人たちが大勢いた。何が釣れるのだろう?
平日の昼間に釣りをしているオヤジたちってのは全世界いるものなんだな、と思う。
警官かバスの運転手か、水色の制服を着たオヤジたちの一団が桟橋をこちらに向かってくる。


コニー・アイランドの遊園地。
観覧車もジェットコースターも停止している。
観覧車是非とも乗ってみたかったんだけどなー。
夏にならないと営業しないみたいなんで、オフシーズンだったということか。
いや、どっかで昨年の夏をもって閉園、取り壊しってのを聞いた覚えがある。
でもそっくりそのまま全てが手付かずで残っていた。
コニー・アイランドをなくすわけにはいかんと周りの人たちから反対されているのかもしれない。
子供向けの小さな乗り物が1つだけ回っていた。客の姿はなく、メンテナンスをしていたのか。


コニー・アイランドは Lou Reed が「Coney Island Baby」を歌ったように、
ニューヨークを舞台にした映画や小説によく登場する。
なので僕としては今回、どういう場所なのか見てみたい場所の1つだった。
ついこの間も「Clover Field」を見たら
冒頭のシーンで主人公のカップルは日曜の午後、コニー・アイランドへ遊びに行っていた。
「コニー・アイランド?えー」「行ったことない?」みたいなセリフで。
日本だとたぶん浅草の花やしきみたいな位置づけなんだろうな。
賑わってるけど、ちょっと古い、っていう。


一通り見て、最後は「Nathan's」でホットドッグを食べる。
7月4日の独立記念日にホットドッグ早食いコンテストが行われる。
毎年フードファイター小林尊が優勝していたんで、日本でも割りと有名ですよね。
そもそも「Nathan's」ってのがホットドッグを考案した、発祥の地。
ここで食べておかないと、と思う。
探せば日本にもあるみたいなんだけど、品川のアトレとかね、
コニー・アイランドの本店で食べるって言ったらそりゃ別だろう。
夏ともなると大混雑となるらしいが、この日はまだオフシーズンで閑散としていてすぐ買えた。
僕が最初入った入口はロブスターのサンドイッチであるとかシーフード専門のレジで、
「あれ、ホットドッグはどこなんだろう?」とまごまごしていたら
「ホットドッグならこっち」と黄色の制服を着た女の子の店員に言われてようやく気付く。
チリドッグとクアーズのライト。2つで9ドルぐらいだったか。
追加でバッファロー・ウイングも5ピース。これはチキン専門のレジで。
アメリカって言ったらバッファロー・ウィングですよね。


チリドッグはパンからはみ出さんばかりにチリが乗っかっていて、ボタボタとこぼしまくる。
ウェットティッシュ必須。
でもうまいね。あーアメリカだなあと思いながら食べた。
残念なのは何を勘違いしたのかチーズ・チリドッグもあったのに
なぜかチリドッグと言ってしまったところ。悔やまれる。
よく晴れた火曜の昼間。ホットドッグに生ビール。
目の前はコニー・アイランド。最高に気分よかったですよ。


でもこれ、早食い選手権では12分で50本食べるんですよね。うまいけど、ムリ。


ケーブルテレビの番組の収録なのか、コニー・アイランドのあちこちをバックにして
黒人2人、ラスタな髪型のカメラマンがラッパーを撮影していた。
撮影クルーは2人だけ。カメラ回しながら喋って、ラップ。
その日歩こうと思っていたルートがかぶっていたのか、あちこちで一緒になった。