ラーメン二郎なるもの

神保町で最も長い行列のできている店、それは二郎。
前からずっと気になっていた。そんなうまいものなの?
ネットで見ると、これがなくちゃ生きていけない!っていう熱狂的な人もいれば、
思いっきり冷ややかな態度の人もいて。
両極端な賛否両論しかない。
これはこれでとても、気になる。
「二郎はラーメンではなく、二郎という食べ物である」という名言もよく聞く。
三田の本店と神保町、二郎はこの2つが最高だ、とも聞く。
神保町にPJメンバーが常駐して早数ヶ月。ほとんどの有名店は訪問した。
そろそろ二郎行ってみますか、となる。


まずは1人で偵察というか予行演習ってことで
先週の水曜、休んで病院に行った日の昼、ラーメン二郎荻窪店へ。
10年住んでていまだに行ったことがなかった。
11時半の開店に行ったら既に満席で列を作って待つ。


麺はうどんのよう。
スープはこってりというかごってり。辛めの濃厚な味。
これ、好きな人はとことん好きになるだろうな。魔性の味。
僕は好きになれない・・・
麺を茹で終わった後、にんにくを入れるかどうか聞かれる。
このとき、野菜増し、野菜増し増し、脂増しなど、常連が符丁のように返す。
これが初心者にはビビる。
食べ終わった後、自分で器をカウンター向こうの台の上に置いて、
布巾で拭くというのが礼儀みたいなので、僕もそうする。
客はサラリーマンとか、工事現場の人たち。
失礼ながら、この人どうやって生活しているのだろう・・・?
という負のオーラを漂わせている人も何人かいた。


次の日、木曜、会社の人たちと神保町店に行ってみる。
列の最後に並ぶ。
周りは金のなさそうな学生と、学生時代から永遠のファンですって感じのおっさんばかり。
これまた失礼と分かってて書くけど、いけてない連中の見本市というか・・・・
(最初から謝っておきます。すみません。でも、率直に言ってそうとしか思えなかったのです)
プロレスの雑誌を読んでたり、PSPかDSでゲームをやってたり。
女性で並んでる人、皆無。まんてんにだってたまに女性客がいるというのに。
通りに並んでると、早くももっさりとしたとんこつを煮込んだ匂いに包まれて。辺り一面を覆ってる。
服にも匂いがつくだろうし、こりゃ女性客が好むわけがない。


並んでると、弁当を買いに通りがかるOLたちが時折、ゲンナリするような視線を送る。
こちらに聞こえるように、ボソッと「もやしばっか食べるんでしょ?」とまで言う。
僕らは並んでる間、世の中の「ジロリアン」について話す。
二郎に心底惚れて通い詰めた人たちのことを指す。
どこそこの店で修行した誰それが新しく店を出すとなると、すぐさま駆けつけてっていう。
で、この味は・・・、と。
ラーメン二郎で検索すると、自ら中毒と名乗る人たちのブログがたくさん出てくる。


エプロンを着て、ゴム長靴を履いた従業員の女性が店から出てきて、
壁に沿って1列に並んでくださいと大声で言う。
僕らはその通り、壁に沿って1列に並ぶ。まるで受刑者が食事を待つかのように。
待つこと1時間弱、ようやく店の中へ。カウンターが10席ぐらいととても小さい。
人のよさそうなラーメン職人みたいなマスターと、チャキチャキした若い女性の2人だけ。
客は皆、無言でラーメンを待って、食す。私語厳禁。暗黙のルールが徹底されている。
僕が今回頼んだのは「子豚」ラーメンの小、というか普通サイズ
(これでも普通のラーメンの2倍の量?)のチャーシュー麺
チャーシューと言うか、名前の通り豚の塊。
1枚・2枚と数えるのではなく、1個・2個と数えるのがよさそうな。
トッピングで生卵を追加する。昨日食べて余りの味の濃さに卵を入れてマイルドにしようと。
調べてみると、人によっては溶き卵の入った器に麺や豚を移してすき焼き風にして食べるみたいね。
でも初心者の僕には恐れ多くて、そこまでできず。


店の壁には2004年の開店を祝して慶応大学放送研究会からの額と、
(たぶん、新しい店舗ができるたびに送っているのだろう。三田の本店からの伝統だと思う)
「感謝 2008」と記した明治大学法学部の額。


慣れてる常連の学生たちが「にんにくは?」と聞かれて「あり、ましまし」などと答えている。
僕らは皆、真似てみる勇気もなく、「なしで」と答える。
やがて目の前に子豚がどどーんと。
神保町の方が脂こってりで(1cmほどの層になっている)、荻窪店ほどの味の濃さ、辛さはない。
生卵を入れたらそれなりに受け付けやすくなった。


でも、まあ、なんていうか。
店を出て僕は後輩に、「まずいね」と。
後輩は「獣っぽいですよね」
獣って言っても、野生のしなやかで獰猛なのじゃなくて、
日の当たらない檻の中で放し飼いになって肥え太ったような獣。正に、豚。


「二郎はラーメンではなく、二郎という食べ物である」って言うのは
ラーメンを超えた食べ物って意味じゃなくて、その逆。ラーメン以下。
僕にはそう思えた。
2つの店舗を食べ比べてみて僕が出した結論として、僕は二郎、2度と行かない。