カニとバニー

okmrtyhk2009-07-14


九段会館のビアガーデン。
「バニーガールがいる」ってことで前から気になっていた。
シーズンになって、調べてみたら隔週月曜はズワイガニ食べ放題ってのをやってるらしい。
色めきたつ。…男たるもの、いかねば。カニとバニー。
そんなわけで、昨日、早速行って来た。


予約不要だが、カニ食べ放題は各日100人まで。
案内の PDF にそう書いてあって、僕らはビビル。
100人なんてあっという間だよ。ダメだよ、ムリだよ、エトセトラ。
そう言われて、僕もそんな気になる。
でもまあ行ってみるべし。そっから、考えるべし。
だめならビール飲んでつまみ食って帰ってくればいいじゃん。
こういうときだけ、僕はポジティブになる。


定時を過ぎて、神保町から九段会館まで歩いていく。
エレベーターに乗って、屋上のビアガーデン会場まで。
カニあります?カニ」って聞いたら、意外とあっさりと、僕らはズワイガニにありついた。
カニ食い放題+飲み放題で、4600円。


そんでずっと黙々とカニ食ってたんですけどね。
スーツの下はもう、溢れ出るカニ汁まみれ。ひどい有様。要クリーニング。
カニはね、青森で生まれ育って正月には親戚の家で高級品を食べてきた僕からしたら、
たいしたことはなかった。
殻から身の離れ具合の、なんつうかスカスカ感。これは、アウト。
でもさ、東京で1人暮らししててたまに食べるカニ。女性の眼を気にせずなりふり構わず食い放題。
これはこれでいいもんだよね。
4600円で都心だったら、これでも上出来。
両手でガシガシ剥いてって、「カニ、うめー」って原初の猿に戻る。
いいんじゃないですか、それで。


それはそうと、バニー。今回一番の懸案。
1人しかいなくて、遠くのテーブルでおっさんと1人ずつ写真を撮ってたりするんですね。
「あぁ!!」と焦らされる。
ようやく僕らのテーブルに来てくれて、写真撮りまくる。
バニーと2人でVサインなんかしたりして。
僕ら、超ミーハー。肩に手を回りしたりもする。大はしゃぎ。
来てほしいと思ってあれこれしていたら、ほんと来てくれたんですよ。


バニーは、この世で最も美人な人ではない。その辺の普通の人だ。
でも、大事なことに、でも、この場には1人しかいない。
その辺、商売がうまいなあと思った。
女性の店員全員がバニーガールの格好だったらよかったか?…それはない。
基本手が届かなくて、時々手が届く。この距離感のなんと絶妙なことか。
そんなんでいいんですよね。男たちの安っぽい欲望としては。
携帯を向ければ、笑顔でVサイン。そして注文をとっていく。
「おしぼりください」って言うと、人数分持ってきてくれる。
一人一人、手渡してくれる。
じゃあ、キャバクラでいいじゃん。人はそう言うと思う。
でも、キャバクラじゃだめなのだ。何の有り難味もない。
女の子が隣に座って、おしぼりを渡してくれたらそれでいいってもんじゃない。


そんなわけで、今、この場のバニー。
いいなあ、と思う。いい。とてもいい。
だけど僕なんかはその場で何も言わず、ヤイノヤイノ言いながらこっそり瞬時に観察する。
例えば、左耳に、どれだけピアスの穴が開いているか?といったようなこと。
夏はこんなふうにビアガーデンがあるけど、他のシーズンはどうしてるんだろう?ってことを考える。
聞いちゃいけないんだろうな、と思うから聞かない。ただ、はしゃぐだけ。
ファンタジーをわざわざ崩す人間は、野暮だ。
そしてバニーは、その全てを軽く受け流して、いくつかを受け入れる。


バニーガール足るもの、永遠に男たちの憧れでなければ。
(それはもう、神話の領域に近い。20世紀後半のアメリカ。
 ヒュー・ヘフナーがいて、「プレイボーイ」が創刊されて。
 そういうのの系譜を辿るのは絶対面白いと思う)


対比して考えたくなるのは、バドガールのいるビアガーデン。
もう、猫も杓子も店員の女の子のほとんどがバドガールの衣装着てるじゃないですか。
バドガールの衣装そのものにはファンタジーがあるとしても、
みんながみんなあれを着てたらそこにファンタジーはなくなりますよね。暑苦しくなる。


食べ物がおいしいかって言ったら、そんなことはない。
新装オープン前の東京駅大丸は僕の知る限り、最高峰だった。
九段会館は全然たいしたことない。
でも、(たった一人の)バニーガールというとてつもない切り札がある。
今の僕としては都内最高峰は、九段会館と言わざるを得ない。


バニーに会いに、もう一回行ってみたい。
そう思う僕は、幻想に浸りすぎなのか。
例え「役割」とはいえ、幻想を受け入れてくれる人というのは、
このご時勢、とても貴重なのだ。