スペイン一人旅 その15(7/26:マタドールってそんなに大変なのかね?)

okmrtyhk2009-08-14


僕が座ったとき、1セット目(何と数えるのが正しいのか分からず)が終わったばかりで、
とどめを刺されて倒れて死んだ黒牛が馬に引かれて、アリーナを横切るところだった。
灰色の砂に赤黒い血が跡を残す。
野球場のようにグラウンド整備係がレーキで砂をならして、何事もなかったかのようにする。


すぐ次のが始まる。
この日は計6セットかな。マタドールの衣装から察するに、2組が3セットずつだったと思う。
だいたいのところ2時間。ちょっとオーバーした。
段取りは決まっていて、毎回同じ手順で進んでいく。
僕が理解した限りにおいてはこんな感じ。


・黒牛がアリーナに登場。その後、ピカドール(槍方)が登場。
 このとき、3人いるマタドール(闘牛士)は搭乗しない。
 アリーナの周りの囲いの中でスタンバイしている。


・ピカドールが牛を煽って、牛の肩の間に槍を突く。
 槍はセットごとなのかピカドールごとなのか、それぞれ色が異なる。
 旗みたいなのがくっついていることがあって、
 スペイン国旗のように赤と黄色の旗が見事牛の肩に刺さると拍手が大きかった。


・1本刺したらピカドールはアリーナ脇に戻って、次の槍を受け取る。色が変わる。
 これで3本ぐらい刺すのかな。一発で刺さるとかっこよくて「オーレ!」と喝采を浴びる。
 刺した後でピカドールは勇気を示すかのように牛の頭をなでたりする。
 この頃、牛の両肩は真っ赤な血で染まっている。


・ピカドールが槍を突こうとして牛との間合いを計っている間、
 ないしは槍を取りに行っている間にマタドールが1人か2人ササササッと出てきて
 例のヤツをヒラヒラとやる。表がピンク、裏が黄色となっている。
 少しずつ牛に近付いて、牛を煽る。
 これ、見ててそんなかっこいいものではなかった。
 決めのポーズがピタピタ決まるようなキビキビしたものではなく、
 なんか恐る恐るなし崩しにやってるような。見てるとピカドールのオマケ。
 でも、それはそれで相当な勇気が必要そう。
 その頃たまたま読んでいたヘミングウェイの短編集に
 田舎者は自分でもできそうに思うが、
 いざ自分がやるとなるとビビッて逃げ出してしまうと書かれていた。


・3本刺したあと、ピカドールは今度は短い銛を3本立て続けに刺す。
 左右に1本ずつ持って両方一気に刺すといった荒業も繰り出す。
 ここまで一連の動作を馬の上に乗ったまま。
 ノッてる時のピカドールは馬をリズミカルかつ
 アクロバティックにクルッと回って見せたりする。


・マタドールが3人とも勢ぞろいして、アリーナ脇の壁に牛を追い込む。
 長剣を手にしたピカドールが馬を下りて、牛に近付く。
 肩と頭の間の中心に長剣を刺す。倒れなかった場合は、何回か場所を変えて刺す。


・牛が倒れた後は、マタドールの1人が探検を取り出して牛の喉をかっさばく。
 ここまでの一連の手際がよくて見ごたえありだと、観客は白いハンカチを振り回して応える。


・係りの者たちが三人、馬を二頭引き連れて現われ、
 馬から伸びたロープに牛を括り付けてアリーナを去っていく。


・その間、マタドールとピカドールは場内を一周して喝采を浴びる。


そんなわけで、どこをどう見ても大変なのはピカドールであって、
マタドールは添え物。見せ場なし。
これってバルセロナ風なのかねえ。
地球の歩き方の闘牛の紹介のページを見ると


*ピカドール(槍方)とバンデリーリョ(銛旗士)が別
*表がピンク、裏が黄色のカポーテを持ってるのは助手、
 マタドールは赤のムレータを持って登場
*剣を指してとどめを刺すのはピカドールではなく、マタドール


となっている。なーんか、似て非なるモノを見たような・・・
やはり闘牛はアンダルシアまで行って見るべきか。
この前見た、ソロホームラン2本だけで巨人が横浜に勝ったドームの試合を思い出した。
締まりがなくて、正にあんな感じ。


日陰の観客席には楽団のための席が用意されていて、
管楽器で20人ぐらいだろうか、盛り上がってくると扇情的な曲を吹き鳴らす。
皆、揃いの白い半袖のシャツを着ていた。
それとは別にトランペット2人と小太鼓が1人、要所要所でファンファーレを鳴らして場面を締める。


見てると気になるマタドールってのが出てくるもんで、
ほぼ何もしないマタドールってのがいた。ヒラヒラをやらない。
若干太り気味で年も食ってる様子。
ヘミングウェイの短編では臆病なマタドールや病気になったマタドールが出てくるけど、
実際はそうじゃないようで、何もしないけどそこにいることで逆に場面の押さえとなっているような。
アリーナには現れないけどちょこまかと周りの囲いの中を移動し、
牛が戦意喪失しかけてると囲いの板をバンバンと叩いて注意を引き付けたり。
そしてピカドールがとどめを刺して牛が倒れた後で、喉をかっさばく。
ここだけは必ずこの人がやる。
恐らく、目立つところは若いもんに負かして、ってことなのだろう。


僕の座った席はほんとは日なたってことになってたんだけど、全然日が当たらなかった。ラッキー。
時間帯によってはちょっとばかし足に当たっただけで。
そうすると前の人の背の陰になるように足を持っていく。
バルセロネータで足首を海水に浸して、その後シャワーもかけて日焼け止めが流れたはずだから、
足だけは守らなくてはならなかった。


観客席はガラガラ。1/3ぐらいしか入っていなかった。
バルセロナで闘牛の興行打ち切りが囁かれてるみたいだけど、
動物愛護団体の抗議ではなくてただ単に人気がなくなって誰も見に来ないからだ、
というのをどこかで読んだ。
日本だと相撲を若い人が見ないと一緒なのだろう。
しかもわざわざ国技館で見るような。


ガラガラなのをいいことに前に座っていた親子が柵を乗り越えて下の席に下りていった。
見てると周りで結構そうしてる。僕もやればよかったな。
(逆に、下りてたのを柵を乗り越えて上に戻ってきた人たちもいたので、
 どこかで誰かがチェックしてるのかなというのがちょっと怖くなった)


6セットあって、何が違うかといえば牛の気性の荒さだろうか。
だんだん上がって行ったような。
マタドールとピカドールの組み合わせ3組とも、特に実力の差はなかったように思う。


終わったのが21時近く。土産物売り場で大きなサイズの絵葉書を買う。
その年の目玉となるマタドールを描いたものがいくつかあって、どれもかっこよかった。
2ユーロで2枚買う。1枚は母に送ろうと思う。


地下鉄に乗って帰ってくる。
闘牛の雰囲気覚めやらぬ?改札では、何人かのおじいさんが無銭乗車。若いっちゃ若い。
切符を自動改札に通したらゲートが開くんだけど、
前の人が切符を入れて開けたらそこに無理やり自分の体を押し込める。
下りるときは切符が不要なのでこんなことができるんですね。


ホームで待っていたら白の制服を着た楽団のおじいさんが
ソフトケースに入れたチューバらしき楽器を抱えて目の前を通り過ぎた。
一仕事終えたら、後は家に帰るだけなのだろう。


ホテルまで戻る帰り道、裏通りに入って韓国系と思われる一家の店でコカ・コーラを買う。
0.6ユーロだったか。安い。その分、全然冷えてなかった。


部屋に戻ると中学生たちが階段を駆け回り、あちこちで騒ぎ声が聞こえ、正に修学旅行状態。
揃いのTシャツを着た男の子たち、女の子たち。
色気づくお年頃で楽しくてしょうがないんだろうなー。
そうか、昼間見た上の階の窓から身を乗り出した、ラリッてると思った若者って
ただ単に中学生がはしゃいでいただけなのか。


シャワーを浴びて、Tシャツの洗濯をする。洗剤は旅行用のを持ってきている。
シャワーカーテンを掛けているのが、つっかえ棒だったりする。
これにバスタオルとTシャツ2枚を掛けたら見事につっかえ棒が落ちた。
これを元に戻すのに時間がかかる。
できたと思ってシャワーカーテンをかけたら、5分後に落ちたり。


デジカメの写真を整理して眠る。
物音はうるさかったけど、23時頃だったか、すぐにも眠れた。