「父/パードレ・パドローネ」「サン・ロレンツォの夜」

イタリアのタヴィアーニ兄弟の映画に興味を持つ。
レンタルではなかなか見つからないだろうと中古で買うことにして、
探してみたら中野ブロードウェーレコミンツ
『父/パードレ・パドローネ』『サン・ロレンツォの夜』を見つけた。
定価以下で。迷わず買う。

    • -

『サン・ロレンツォの夜』


1944年、第二次大戦末期のイタリア。
ドイツ軍に占領されて、爆撃を受ける小さな村が舞台。
ファシストに協力する者と村から逃げ出して合流する者に分かれ、
やがて互いに銃を向け合うようになる。


戦争の悲劇と一言で言ってしまうのは簡単だ。
主人公は6歳の女の子で、その回想として物語が語られる。
その視点からすれば全てがどことなく牧歌的で、陰惨さはない。
トスカーナ地方の風景は美しく、人びとは皆善良だ。
戦争は何かの間違いとしか思えない。
そしてそれ故に人びとはあっさりと死んでいく。
命が尊いものだ、という感覚はない。
なんとかおじさん、なんとかおばさんという
身の回りの知っている人びとがこの世界の全て。
余りにもささやかな範囲の物語として描かれる。
そしてそれが普遍的な意味合いを持つようになる。
静かな、祈りのよう。


出来事が出来事として語られ、
そこには何の理由もないということ。
小さな女の子にしてみれば、生も死も自分も他人も、戦争も平和も
皆、等価なのだということ。
同じだけの輝きをもって日々を彩るのだということ。
そのような描き方をすることによって、
余計、異物としての戦争の存在が際立つことになる。


8月10日のサン・ロレンツォの夜、
願いを唱えればそれは叶えられるという。

    • -

『父/パードレ・パドローネ』


1977年のカンヌでパルムドール


イタリア、長靴の先っぽのサルディーニャ島が舞台。
言語学者にして作家のガヴィーノ・レッダは20歳を過ぎても読み書きができなかった。
羊飼いの父が小学校から連れ出し、お前も羊飼いになるのだから学問なんていらないのだと。
何もない、山の中の小屋で羊を追う生活が始まる。
厳格な父は禁止と罰を与えることでしか息子とコミュニケーションできない。
20歳を過ぎて、ふとしたことからアコーディオンと音楽に出会う。
世界が開けるのを感じる。
そして軍隊に入ったことをきっかけに文字を習うことから始め…
教育を身につけ、一人の人間として成長した彼は故郷に戻り父と対峙する。


暴君でしかなかった父への愛憎入り混じる複雑な気持ち。
粗野で無口で不器用な父の圧倒的な存在感がとにかく素晴らしい。
多くは語らないが、生きることの辛さ、その哀しみを背中で表現する。
演じるオメロ・アントヌッティのことは知らなかったんだけど、
ヴィクトル・エリセの『エル・スール』と
テオ・アンゲロプロスの『アレクサンダー大王』に出演している。
つまり、『エル・スール』のあの孤独な父親であって、孤高のアレクサンダー大王だったわけだ。
そうか、この3人とも忘れがたいキャラクターだったけど、同じ人が演じていたのか・・・