牧神の午後

時間も空間もあちこちに穴が空いている。
目には見えない穴がポッカリと口を開けている。
そこをいろんなものが出入りしている。
もちろん、そいつらも僕らの目には見えない。


計測できるものや観測できるものが
この宇宙に存在する全て、この宇宙を構成する全てではないと思う。
かと言って今さら第2のエーテルを探したいわけではなく、
死後の世界やオカルトについて語りたいわけでもない。


もしかしたらこの世界はどこまでいってもバーチャルであって、
リアルなんてないのかもしれない。時々そんなふうに考える。
全ては夢の中。全ては誰かの書いたシナリオの中。
ふとした弾みで、どんどん書き換わっていってしまう。


穴が空いているけど、僕らがそこに入り込むことはない。
言うなれば次元が違う。メタなレイヤーと言っていいかもしれない。
この世界を動かしている何らかのプログラミング言語があって、
穴とはその処理の流れのようなものだ。


とはいえそれは完璧な記述がなされず、救いがたいほどのバグに満ちている。
そしてそこには神様なんてものはいない。
ただしその不在を埋める何かはあるのではないかと思う。
「それ」に捧げるための儀式や祭祀を僕らは受け持って日々繰り返している。


右から左への時間の「流れ」みたいなものはなく、「生きる」というものもない。
点が線になる、線が点に戻る。ただそれだけ。
言い換えるならば永遠が一瞬であり、一瞬が永遠となるということ。
生成と持続、そして消滅。