目次読書法ワークショップ

昨日、丸の内OAZO丸善内の松丸本舗にて編集学校つながりで
「目次読書法ワークショップ」を受けてきた。
その記録を書いてみました。



1)「それでは皆さん、お集まりください」


  15時になって開始。参加者は10人ほどか。名前を手書きした名
  札を首から下げる。レジ脇のスペースに集まって講師の紹介と
  これから行なう「目次読書法」についてガイダンスがなされる。



2)「皆さんはどこに惹かれて本を選びますか?」


  1人1冊ずつ気になった本を選ぶところからスタートする。「
  皆さんはどこに惹かれて本を選びますか?」と講師の方が1人
  1人に聞く。タイトル、装丁、「引かれる」という感覚。僕は
  「表紙の雰囲気」と答える。



3)「目次のある本を選びましょう」


  本棚に向かう前に注意事項として伝えられたのは目次のない本
  を選ぶと今回のワークショップが続けにくくなるから気をつけ
  てくださいということ。これもまた1人1人に聞く。小説や絵
  本や写真集などが挙がる。



4)「本は3冊の括りで眺めましょう」


  続けて、「本棚の1冊だけを眺めるのではなく、両脇に並んだ
  本の関係にも注意を払って、3冊の括りで眺めてほしいんです」
  一般的な本屋はカテゴリー、サブカテゴリーごとに本が並んで
  いるがここ松丸本舗ではそういう既成のカテゴリーに基づいた
  並べ方をしていない。書棚ごとに大きなテーマは設定されてい
  るもののそれぞれの本は気まぐれにキーワードでリンクするよ
  うに並べられている。あるいはそれは松岡正剛が読んだ順に並
  んでいるのかもしれないし、本が生まれた順に並んでいるのか
  もしれない。(ミシェル・フーコー曰く、「本には誕生日があ
  る」)



5)「岡村さん、いい本ありましたか?」


  3分で本を選ぶ。僕は事前にこれにしようかなと当たりをつけ
  ていたのがあったけど、やめにする。その場で目に付いたもの
  を改めて選び直すことにした。建築関係の本が並んでいる棚に
  てフランク・ロイド・ライトの『自然の家』が目に留まる。表
  紙の写真に、木々の間に幾何学図形のような建築物の一部分が
  写っている。講師の方に見てもらって、今回のワークショップ
  向きかどうか判断してもらう。OKが出る。



6)「まずは本の外見をじっくりと眺めてみましょう」


  本棚に囲まれたスペースに本を手にして、皆が集まる。いきな
  り目次や本文を読んだりはしない。カバーの表や裏、カバーを
  外した本当の表紙など外見をじっくりと2分間眺める。タイト
  ルの文字の字体や色、図柄、裏の解説の構成。見るべきところ
  はたくさんある。



7)「目を閉じて本の外見を思い出してみましょう」


  2分間が経過して、今度は目を閉じてその外見を思い出してみ
  ようとする。これがあまりうまくいかない。ぼんやりとしたイ
  メージだけ。目を開けて再度本を眺めてみる。あ、タイトルの
  文字の色は全て黒ではなくて、著者名は灰色だったのか。そん
  な発見が次々に出てくる。手にした本が瑞々しく感じられて、
  僕に馴染みだす。



8)「では、目次を読んでみましょう」


  そして目次へ。これも2分間。大見出し・小見出しのような目
  次の構造に注意を払う。特に気になるキーワードを1つ見つけ
  て、それがその本の目なのか口なのか門なのか柱なのか考えて
  みる。それらを受けて、目次から内容を想像してみる。行間に
  あるものと対話する。



9)「本文にサラッと目を通してみましょう」


  その後は実際に本文を読んでいく。最初の1章を2分で。残り
  全部をまた2分で。パラパラと検品するように。作者の口調を
  感じてみたり、目次からの想像と重なるところ・ずれるところ
  を印象から探してみたり。



10)「目次から想像した内容と照らし合わせて、どうでしたか?」


  僕はこの本が、目次の印象からフランク・ロイド・ライトがロ
  ジカルに建築哲学を語ったものだと捉えた。それは概ね当たっ
  ていた。実際、家や部屋の構造について、その素材について多
  くを語っている。しかし、理性的・理論的な語り口と20世紀前
  半の知識人足る格調の高さを取り出せるほど、目次には踏み込
  めていなかったようだ。



11)「隣の方と本を交換して、共通点を探してみましょう」


  レジ脇のスペースに戻って、丸椅子に座って2人1組になって
  上記のような感想を交わす。そして互いの本を交換して、共通
  するところを探してみる。吉田健一の『酒肴酒』だった。前半
  部分をめくってみると、金沢などあちこちを旅したときにうま
  い肴を食べ、うまい酒を飲んだことを書いている。ああ、場や
  空間についての本だということが関係の線となるのだな。片や
  それが建築となり、片やそれが金沢といった場所となる。ペア
  になった方は全然別な角度から共通点を見つけ出した。そう、
  本というものは互いにいくらでも関係をもてるものなのだ。



12)「最後に皆さん、感想をどうぞ」


  最後に1人ずつ感想を述べることになって、なぜそれが可能と
  なるのかを僕は話した。それは恐らく、目次を読んだときに行
  間から読み取りたい、本文から読み取りたいとしたものが共通
  しているからではないか。何を期待して本に向かうかという目
  的が同じ。



13)「皆さんの本、全部つながるようですね」


  10人の本が思いがけないキーワードで次々にリンクしていく。
  モノから量子力学へ、空間から調和、そして最後は宇宙へ。こ
  れはその場にいた人でなければ分からないような「あっ!」と
  驚く体験だった。…いや、それは何も特別なことではなく、講
  師の方の話術でもなく、もともと本というものがそういうもの
  なのだ。ゆるいリンクで互いが互いをつなぎあった、ネットワ
  ークが出来上がっている。ただそのことを知らなかった、実感
  することはなかったというだけなのだ。



14)「アンケートへの記入をお願いします」


  最後、アンケートを書いて提出して解散。「どこで松丸本舗
  知りましたか?」など。名札の裏が判子を押す欄になっていて、
  10個溜まるとオリジナル・グッズがもらえるという。



15)「選んだ本のお買い上げお願いします」


  ワークショップそのものは無料だけど、選んだ本は買ってくだ
  さいとのことで、フランク・ロイド・ライト『自然の家』を買
  う。他2冊、気になった本を合わせて。藤原新也西蔵放浪』
  とトリーシャ・ローズ『ブラック・ノイズ』。