こんなサントラを持っている その15

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□サザン・オール・スターズ『稲村ジェーン


僕は今年で36歳になるが、本気でサザンを聞いたことは1度もない。
認めないとか売れててくだらないとかそういうことじゃない。
ただ単に、今聞かなくてもいつでも買える・聞けるだろうっていう。それだけ。
「それだけ」で20年近く。未だにサザンはいつでも買える・聞ける。


自慢じゃないが日本人の僕が何千枚とCDを持ってようと
サザンで持ってるCDはこのサントラとベスト『海の Yeah!!』だけである。
『海の Yeah!!』が今見たら1998年の作品だから、
僕は10年以上サザンを買っていない。非国民のような気がした。


このサントラも高校2年の秋に演劇部の部室で聞いて
どことなくアングラ匂いがして、いいなと思ってもそれっきり。
大学生になって3年生だったか4年生だったか。
国立の DiskUnion で中古で1枚500円ぐらいで叩き売りしていたのを買い直した。


あの当時、日本はバブルだった。
桑田佳祐に限らずいろんな人が映画監督になって映画を撮った。
そして多くの人がそれっきり、なかった過去みたいな扱いになった。


じゃあこのサントラがイマイチかと言うとそんなことはなく。
シリアス路線のスタンダードな名曲「希望の轍」「真夏の果実」が入っているし、
「愛は花のように(Ole!)」は日本生命のCMに使われたんだったか。
いかがわしい路線では「東京サリーちゃん」なんてのもある。
ハマクラ(浜口庫之助)の「愛して愛して愛しちゃったのよ」や
The Searchers「Love Potion No.9」のカヴァー。
The Beach Boys っぽいオリジナル「忘れられた Big Wave」


もしかしたら明日にも僕はサザンにはまって
ビッグ・ウェーヴが訪れて全部のアルバムを聞き直すことがあるかもしれない。
「いやー2枚組の『Kamakura』だよ」なんて言いだすかもしれない。
そんな日が来たとしても僕にとってサザンとは『稲村ジェーン』なのだ。


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□『Kick Ass』


この映画、あちこちで玄人受けがよく、
僕も年内に見ていたら2010年ベスト1に挙げていたと思う。
ダメな自分を荒唐無稽でもとことん肯定してくれる、素晴らしい映画だった。
サントラを買ったのは、最初の方でヒットガールが大暴れする場面で流れていた
「ヤッヤー、ヤッヤヤーヤー」という曲があまりにもよかったから。
(The Dickies「Banana Splits」だった)
Mikaによる主題歌もいい。


地震が起きて3日目、ヤシマ作戦で節電も叫ばれている中、
景気づけに聞いた。聞いたら確かに、元気が出た。


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□『Scratch』


今から10年近く前。
ヒップホップのDJカルチャーのなんたるかになんとなく興味があって見に行った。
新宿の今はなき高島屋12階のタイムズスクエアのレイトショーだったはず。


ターンテーブル2台つなげてレコードをかけて
肉体的な演奏を必要とせず、「つなぐ」という行為だけで音楽を生み出してしまった
ブレイクビーツは1970年代最大の革命だと思う。パンクじゃない。実は、こっち。
当時はそんなこと考えもしなかったけど。


Q-Bertの精密すぎる神業だったり、
Cut Chemistグリーグの「ペール・ギュント 山の魔王の宮殿にて」に合わせて
クラッチする鬼気迫るクライマックス。
これ http://www.youtube.com/watch?v=GHAzzuFTPkc
こういうすごい場面のことごとくがCDに入っていなくて
改めて聞き直してなんだこりゃと思ったんだけど、
よく見たらサントラそのものじゃなくて「Inspired」なんですね。
うーん、そりゃやっぱ入れられないか…


選んだのはビル・ラズウェルで、
Herbie Hancock「Rockit」 は歴史的に重要ってことか2曲収録されている。


興味のある人はサントラを聞いて満足しないで、絶対映画を見るべし。


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The Doors『When You're Starange A Film About The Doors


昨年公開のThe Doorsドキュメンタリー映画のサントラ。
メンバー3人が初めて公式に許したドキュメンタリーであるという。
僕は何枚かThe Doorsに関するDVDを持ってるけど、あれってなんだったのだろう。
でも確かに映像の寄せ集め的でクオリティは低かった。


ジョニー・デップがジム・モリソンの詩を朗読していることや
Light My Fire」「When The Music's Over」が
ライブバージョンで収録されているというのが魅力。


映画は残された3人の若き日の姿よりも
最後の方に出てくるジム・モリソンと恋人パメラの2人が寄り添う姿が印象に残った。


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赤犬『ばかのはこ船』


去年の一頃、山下敦弘作品をいくつかまとめて見た。
リンダ リンダ リンダ』『松ヶ根乱射事件』どちらも面白かった。
本来のノリの集大成は『松ヶ根…』なんだけど
ペ・ドゥナ香椎由宇の出演するカジュアルな『リンダ…』の
吹っ切れて澄み切った雰囲気もかなり好き。
こういう一見ごく普通の青春映画も撮れるんだなあ。
だけどどこか、ポツンとしていた。誰もいない教室の誰もいない机のような。
湯川潮音の歌う『風来坊』と『The Water Is Wide』がいい。


今年の新作『マイ・バック・ページ』は妻夫木聡松山ケンイチが主演。
これはとても観たい。


本作は劇場公開2作目。
東京で「赤汁」なるものを売っていたカップルが食い詰めて田舎へ。
事態は一切好転しない。ダラダラと日々が過ぎていく。
音楽は赤犬。とぼけた和製ゴッタ煮ビッグビート
一曲目からして「君が代」をアメリカ国家のメロディーで歌う。
よくこんなの許されたなあ。
大阪芸術大学つながりなんですよね。
軍歌にウエスタンに無国籍なんでもありは往年の日活映画のよう。