『クレイジーホース・パリ』

予告編で前から気になっていた『クレイジーホース・パリ』を観に行った。
渋谷の Bunkamura のル・シネマ。なかなか客の入りはよかったように思う。


パリの名門キャバレー『クレイジーホース』の
ステージと舞台裏を追うドキュメンタリー。
エロティックでありながら芸術的完成度が高く、
U2のメンバーやスティーブン・スピルバーグビヨンセ、世界中のセレブが訪れる。
興味のある人は是非予告編を観てみてください。
世界で最も美しいコンテンポラリー・ダンスはこれかもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=PPcbZQrczU8


精神病院をテーマとした、モノクロで殺伐とした
『チチカット・フォーリーズ』が1967年。半世紀前。
フレデリック・ワイズマン監督はついにここまで来たか…
同じ監督とはとうてい思えず。
撮影した素材の並べ方に重厚な演出が入っている。
みっちりとストーリーテリングされてる。もはやフィクション。
そう、フィクションとなる前提で撮っているように思う。
(初めと終わりの影絵、マイクに向かってのよがり声とセリフの朗読)


興味深かったことをいくつか。
『クレイジーホース』というナイトクラブの内と外の出来事だけを切り取って
(「外」は本当に建物の外。周りのカフェや川を舟が行くとか)
ダンサーや演出家の内面や私生活には一切踏み込まないんですね。
匿名のインタビュアーがいて、ダンサーの部屋やお気に入りの場所で
インタビューするといった野暮なことはしない。
(まあフレデリック・ワイズマンの作風がいつもそうですが)
それが「場」や「空間」の特異性というか
『クレイジーホース』に惹きつけられる人々の生々しさを捉えることに
つながっているように感じられる。
逆にそれぞれのストーリーの広がり、深みを暗示させる。


もうひとつ。
ステージの上ではソロやデュエットだけではなく、
8人10人と大勢が一列になって踊ることがある。
このとき、一糸乱れずではないんですね。
半テンポずれたり腕の伸ばし方加減がマチマチだったりが普通。
それが妙にエロティック。
下手、ということではなくて逆、踊りの型は皆身体に骨の髄まで入っていて、
それを自由に着こなしているというか。
そして、表情豊かに腕を大胆になまめかしく動かすダンサーよりも
その隣で無表情で腕の振りもぶっきらぼうという
そっけないダンサーの方が数段やらしく感じられた。
これってなんなのだろう?
その方が見る側の欲望、イメージを受け入れやすいということか。


サントラを探してみるが、見つけられず。
amazoniTunes にてダウンロードのみで
「At Le Crazy Horse Saloon In Paris」というアルバムを見つける。
現代の、ではなく1951年オープン当初にかかっていた音楽のようだ。
今、聞いてる。ムード性の高い、古きよき時代のジャズ。