夕暮れの散歩

一仕事の合間に、夕方の散歩。暗くなりかけている。
風が生ぬるい。見上げると空は曇っていて、雨がパラついている。
東京の東の方で集中豪雨が降ったとどこかで見た。


どこか行くべき場所も行きたい場所があるわけでもなく。
何の変哲もない荻窪の住宅街を歩く。
下井草方面に少し歩いて、西の方へ。
アパートからすぐなのに、この通りは普段歩いたことがない。
何の用もないから。
しかし、目的のない散歩の今こそ、ここを歩くべきなのだろう。


たった3分で知らない場所に出る。
ここはどこなのだろう?
知っていて、知らない。
異界は、アナザー・ワールドは、その裂け目は、
こんな簡単な場所に広がっている。


こんな道があるのか、こんな家があるのか。
この国のどこにでもあるごく普通の住宅地。
これまで歩いたことがないというだけで、
それはこんなにも不思議なものとなるのか。


(この感覚は、自分の家から地続きだということが大事だ。
 電車で下りただけだとこうならない)


すれ違う人と言葉は通じるのか。
彼は、彼女は、僕のことを見てどう思うか。
僕は異界の人なのか。
夕暮れの薄暗闇の中に溶け込んでいく。