パチンコ屋というもの

そういえば荻窪は閑静な住宅街のようでいて意外とパチンコ屋が多い。
朝並んでるのは見たことがないが、そこそこ入っているようだ。
この前、南口をブラブラ歩いていたら、え、こんなところに?
小さな店があった。やっていけるのだろうか。他人事ながら心配した。
家族で細々と経営している姿をなぜか想像する。


もちろん僕はやらない。麻雀以外のギャンブル全般に縁がない。
19歳、大学2年生の正月に寮の友人に連れて行ってもらって
パチンコ・パチスロ両方試して2日間で5万スッた。
当時は絶望的な気持ちになったけど
これが2日でトータル5,000円の勝ちなんかになったら
その後何とはなしにはまって通ったんじゃないか。今思うとよかった。
釣りに似てるなと感じて、だったら釣りの方がいいんじゃないかと。


競馬もやらないしねえ。
映画サークルの撮影で一回だけ府中競馬場に行ったぐらいか。
遊びで馬券を買って確かそれなりに勝ったと思う。
しかし何が面白いのかちっともピンと来なかった。
馬や騎手のことを何も知らず、単なるクジ引きに近かったからだろう。
これが様々なジンクスや予備知識の群れに
自分なりの流れを感じるようになったら、はまるのか。


時々、夜歩いていると幸薄そうな貧しい親子を見かける。
母と息子。息子は僕よりも年上か。
言動のバランスがおかしく、たぶん、精神を病んでいる。
息子の興味をこの世界につなぎとめるものは他にないのだろう。
大声で、一本調子の早口で、パチンコの攻略法の話ばかりしている。
あの台はこうしたらいいんだ。今度ああするんだ。
小柄な母は背中を丸めて自転車を引きながら聞くともなく聞いている。
パチンコ屋で一日を過ごしたのだろうか。
母はどこかで待っていたりするのだろうか。
もしかしたら息子は架空のパチンコ屋の中にずっといるのかもしれない。
彼のためだけにこの世界に存在する。
夜道をふたりはゆっくりゆっくり歩いている。
僕はいつもいたたまれなくなって、出会うと足早に通り過ぎる。
何も見なかった、何も聞かなかった。違う世界の出来事だ。


僕がパチンコ屋に足を踏み入れることは、2度とないと思う。