鍋焼きうどんというもの

鍋焼きうどんが好きで冬になるとよく作って食べる。
子どもの頃。青森の真冬、外はいつ終わるともしれない吹雪。
何かの理由で父の職場を訪れたときに誰かが出前で頼んでくれた。
生まれて初めて食べたその鍋焼きうどんがとてもおいしかった。
熱くてフーフーしながら食べた。
当時青森の至るところで見かけた円筒形の白の石油ストーブで
部屋の中は暑いぐらいになっている。
小さな窓からはオレンジ色の炎が覗く。
根っこにあるのはそういうことなんだと思う。
真冬だけど中は暖かいというイメージそのもの。


なので東京の冬、うどん屋に入って食べても余りパッとしないんですね。
おいしくても、何かが物足りない。


だし汁のしみこんでふやふやになった海老天かかき揚
(個人的にはかき揚の方が断然好き)
半熟の玉子。分厚く切って柔らかくなるまで煮込んだネギ。
鶏肉が少々入っているとベスト。
あ、あとだし汁をいっぱいに吸い込んだ麩。これは欠かせない。
土鍋の蓋を開けるとグツグツと煮立っていて、天かすで油っぽくなっている。


…そこまでしても、東京でぬくぬく食べているとなんだかイマイチ。
いくらメニューにあったところでハワイやバリ島なんかで注文したら絶対ダメだな。


それはそうと、いつだったかテレビを見ていたら
老舗のうどん屋のつくる鍋焼きうどんというのをやってて、
見てたらうどんは鍋で煮ないんですね。
普通に茹でて最後土鍋に移してその他材料を添える。
うーん、確かにその方が見た目にはきれいだけど。どうなんだろう。
煮込みうどんのように全部グダグダになった方がおいしいけど。


すき焼きや鍋料理の最後に入れるうどんに通じるものがあるんだろうな。
あれはあれで日本を代表する立派な食文化だと思う。
〆のうどんやおじやや中華麺を味わわずして、鍋を食したとは言えず。
鍋焼きうどんとはいきなりそこからスタートする食べ物なんだろうな。