「マーチ エキュート」「3331」

土曜は学校の方で終日会議。
日曜は休み。神田〜御茶ノ水界隈で過ごす。


12時過ぎ。東京駅から歩いて三越前を通り過ぎ、神田駅から万世橋へ。
「mAAch マーチ エキュート 神田万世橋」を見に行く。
http://www.maach-ecute.jp/
神田川沿いに掛けられた赤いレンガ造りの高架橋。
かつては万世橋駅として利用されていた。
長いこと放置されていたのを昨年秋、JR系の商業施設としてリニューアルされた。
万世橋というと「肉の万世」がまっさきに思い浮かんで
(ビル屋上から垂れ下がるノボリに「いらっしゃいまんせい」とある)
昭和っぽい、垢抜けないイメージが合ったんだけど
それが思わず「嘘!?」と言いたくなるようなオシャレさ。
全体的な雰囲気としては雑貨もインテリアも洒落た古本も売ってるような
セレクトショップ系カフェとでも言うか。
いくつかのそういう店の複合体。
東京駅の模型を飾っている店
(絵葉書と、神田界隈の今と100年前を重ね合わせた地図を買った)や
freitag や北欧家具を扱っている店や、
各界クリエイターのお気に入りの本を並べた店があった。


昼は「ル・プチ神田」というフランスおでんの店に入る。
おでんのランチにする。ポトフと言ったほうが近いか。
まるごと一個入った玉ねぎ、玉子、キャベツ、豆、ベーコン、ソーセージなど。
なかなかうまい。マスタードで食べる。もちろんビールを飲む。
バターライスがついてくるんだけど、これだけでおかずがいらないぐらい。
店内ではフランス風かき氷なるものも売られていたかな。
ラタトゥイユといった夏メニューも気になった。


秋葉原歩行者天国を歩く。
末広町の駅の近くにあった「3331 Arts Chiyoda」へ。ここも初めて入った。
http://www.3331.jp/
かつて中学校だったという校舎を千代田区が丸ごとアートギャラリーにしている。
そのせいかトレパンを着た中学生たちが授業の一環で? 大勢いた。
地下1階から地上3階まで各教室がギャラリーやデザイン事務所となっている。
「はんだづけカフェ」というハンダごてを使った作業のためのオープンスペースや、
寄贈された図書の並べられた棚があった。
貸し会議室やシェアオフィス、「ロモグラフィー」の日本唯一の直営店、
地域の高齢者がアート作品をつくる集会所もあった。
こっそり屋上に上るとネットを張ってかつて運動場だったのが千代田区
小さな区画に区切った農園として貸し出していた。
ベルリンの芸術家コミューン「タヘレス」を思い出した。
あれほど無秩序じゃないけど。


『ポコラート宣言 2014』という
国内のアール・ブリュットアウトサイダー・アート)の作品を集めた
公募展を観る。この日が最終日だった。
http://www.3331.jp/schedule/002353.html
多くは語らないというか語れないですが、やはり思わず見入ってしまいますね。
15:30からガイド・ツアーがあるというので、参加する。
この作品はあーでこーでという解説が一方的にガイドの方からなされるのではなく、
集まった人たちが自由にその作品について意見を言い合うという形のものだった。
それが何に見えるか、どのように描かれたのか、何を描きたかったのだろうか。


1mを超えるサイズの大きな画用紙に描かれた赤や黄色の2つ並んだ細長い楕円は
花を描いているのではないか、いや、心臓ではないか、
おそらく両手に絵の具をつけて円を描いているのではないか。
(作者:宮川佑里子)


割り箸を無数に積み上げてつくった背丈よりも大きなオブジェはバランスを崩して
ワイヤーで吊り下げられている。しかしそのエネルギーの発露が素晴らしい。
これは植物を描いているのではないか、いや、土に還ろうとしているのではないか。
(作者:武田拓)


4枚の絵に楽譜と、恐らく文字を認識できない作者が目にしたままを投影した線の群れ。
一筆書きのような楽譜は柔らかくよじれ、船のようであり、鯨や尺取り虫のようであり。
楽譜の中の音符は動物や人物に見えてきて、物語を描いた絵巻物のよう。
(作者:西岡弘治)


特にこの西岡弘治の絵の芸術性が高くて、
今は海外でも評価され、作品がプリントされてTシャツにもなっているのだとか。
お世話をされている団体の方がたまたま来場していて、
このワークショップでも質疑応答になった。
僕は何歳の方なのかとか、作品名は誰がつけているのかといった質問をした。
インスピレーションが湧いたらいっきに描き上げるのかとおもいきや、
描くスピードも出来上がりに要する日数も異なるのだとか。


他に。玉浦航太の描いた商品パッケージのカラフルさがポップだった。
鎌江一美が粘土で描いた「まさとさん」と「ウェディングドレスを着た私」が切なかった。
瀬尾ひろみには不思議な余白の多い物語空間があった。
齋藤裕一の「も」だけを描いたドラえもん
田島絵里のカレンダーの裏に描かれたドラミちゃん。
時枝和美が切り貼りする不機嫌でユーモラスな日常。
市川航也が細密画で描く自足した宇宙。畑中直子の細密画の描く反復する世界。
苔百虫ちろのグロテスクにしては妙に惹きつけられる手足の欠けた人形たち。
森本孝がガラクタで構築するカフカに関する壮大な連続絵巻。
平野智之の描く一見ポップアートのような、女の子を主人公とした漫画。
鶴川弘二の「あしたまれがまんおしときます」切実な言葉たち。
西山友浩の日記は描き始めた文字が単純な線の集まりへと還元される。
古久保憲満はロシア大使館から戦闘機から構成の距離から世界の全てを書き込む。
谷本光隆は全長何十メートルもの壮大なストーリーを描く。
井上優の描く無数の似たような人間たちにベッタリと染み付いた孤独。
カズ・スズキが天井から吊り下げる巨大な飾り紐。


これら、「ポコラート」と呼ばれ、
アール・ブリュットアウトサイダー・アートを超えたものであるとのこと。
引用すると
「ポコラート宣言:「純粋」で「切実」な行為や表現が「逸脱」した存在となった時、
 私たちは、そこに「芸術」としか言いようのない美しさを感じる。
 ポコラートは、障がいの有無・年齢・経験を問わず、その「芸術」を世界に解き放つ」


「3331」を出て、夕暮れ。18時近く。
御茶ノ水方面に歩いて行って、湯島聖堂は時間が遅かったのか既に閉まっている。
本郷通りをわたって、神田明神をお参りする。
甘酒で有名な「天野屋」も日曜は閉店。近くの店も早々に店じまいしていた。
「天野屋」の地下で100年以上前から作られているという糀。
この土室は千代田区有形文化財なんだとか。


夜は「山の上ホテル」の「天ぷら 山の上」で。
長年憧れていて、ようやく。
巻海老、めばち、キス、はも、穴子
アスパラガス、玉ねぎ、茗荷、蓮根、茄子、など。
最後はかき揚げを天丼か天茶漬けで。


もう一軒行くかと神保町を彷徨うが「さぼうる」を初めとして
日曜はことごとく休みなんですね。
大手町に移動しても日経ビルの地下はどこも閉まっている。
反対方面、iiyo!!でようやく開いているところを見つけた。
22時の閉店で帰ってくる。
午後半日歩いて、心地良く疲れる。