『電線絵画展 小林清親から山口晃まで』

昨日は大泉学園での墓参り、
ミヤビのタンメンや東京ワイナリーとブラブラした後で
西武線に乗って中村橋に移動。
練馬区立美術館で『電線絵画展 小林清親から山口晃まで』を見た。
大泉学園に向かうバスに乗っていたら妻がつり革広告で気づいて
なんだか面白そうだと。
 
電柱とか電線って身の回りの風景には必ずあるのに
都市や郊外を描いた「美しい」絵画ではわざと省略されていたりするものですよね。
それをあえて、電柱や電線の描かれた絵を集めてみるという。
展覧会って著名な画家の回顧展であったり、〇〇美術館のコレクションであったり、
若手の作品やとあるコンテストの入賞作品を集めたものであったりするもので、
時代や地域、海や山といった造形をテーマにすることはあっても
具体的な物を中心に据えることってなかなかないのでは。
いい視点だな、企画したのは学芸員だとしてよく館長がゴーサインだしたな、と感心した。
 
練馬区立美術館は数年前にサヴィニャックを見て以来か。
マニアックなテーマだから空いてるかなと思いきや、結構な人の入りだった。
来航したペリーが電信柱を立てるところから始まって、
小林清親らの錦絵画家が珍しい風物として蒸気機関車や場所と共に電信柱を描き、
銀座や横浜で、あるいは郊外で、見慣れた光景になってくると錦絵の対象ではなくなって
逆に様々な画家が電柱や電信柱のある絵を描くようになる。
僕はこの辺りの経緯を知らなかったのですが、
通信のための電信柱が先であって、電気を伝えるための電柱が後なんですね。
というか電信柱と電柱の区別すらついていなかった。
そういえば最近、電信柱って言わないな、っていうぐらいで。
 
展示の解説を読んでみるとやはり、
電柱・電線は排除するという画家の方が多かったようだ。
一方で主体的に電柱・電線を描いた方もいて。
技巧を凝らした木版画川瀬巴水はワンポイントにあしらうのがうまかった。
この人は夕暮れや夜更け、対象をどの時間帯に描くべきか、光の在り方を熟知している。
今回一番気になった。構図も色彩も全てが美しい。
岸田劉生は電柱のある風景をあるがままに描き、
佐伯雄三は廃墟のような街並みの真ん中にポツンと電柱を。その心情をよく表している。
「ミスター電線風景」と呼ばれた浅井勘右衛門はアウトサイダーアート? と思うぐらいに
画面いっぱいに広がる電柱・電線の絵がいくつも。
山口晃が電柱についてモーニングに連載? した時の漫画の下絵もあった。
 
最後の方には碍子の展示も。
ガラスでつくられた、電線を固定する部品。
ブラタモリの有田焼の時にタモリが興奮してたなあ。
普通なら陶磁器の大皿を展示するときのように
日本最古の碍子などが並べられていた。
個人蔵だったりして、コレクターがいるのだろう。
 
電柱・電線に光を当てる。
見終わった後はつい、目の前の風景に探してしまう。
世界の見方がちょっと、変わる。
思いもかけない拾い物の展覧会だった。