B&B → フィクショネス

雨、予定のない土曜日。
床屋に行くもいっぱいでそのままフラッと丸ノ内線に乗って本を読む。
東京駅で下りて神保町まで雨の中を歩いて行く。
ラーメンを食べる。帰り道、汁講(編集学校のオフ会)に来ませんか?
とお誘いがあって、自分の担当教室のところではなかったけど、顔を出すことにした。


ランチのあと、下北沢の「B&B」から合流する。
今日は15時から『片岡義男 ×大竹昭子×川�啗大助』というイベントが開催とのことで
その準備でテーブルが片付けられ、椅子が並べられていた。
前期29破では突破(卒業)ならず、今期30破で再挑戦という方に再会。
前期の汁講で2次会が合同となって、その時たまたま隣り合わせて映画の話をした。


書棚を眺めていると欲しいものばかり、
しかし1冊と買いだすとキリがなくなるからやめにした。
メモだけ取っておいた。読みたい、買うだろう、という順。


星野博美『コンニャク屋漂流記』
柳家小三治『ま・く・ら』
トーマス・ベルンハルト『私のもらった文学賞』(発売ほやほや)
開高健『地球はグラスのふちを回る』
町山智浩、 柳下毅『ベスト・オブ・映画欠席裁判』
『20世紀エディトリアル・オデッセイ』(僕の周りでも評価が高い)
リディア・デイヴィス『ほとんど記憶のない女』
多和田葉子『雪の練習生』
糸井重里『ボールのようなことば。』
ボブ・ディラン『タランチュラ』(片岡義男訳)
中田薫山崎三郎中筋純『廃墟本 remix』
水木しげる『完全版水木しげる伝』(上中下)
大槻ケンヂ『40代、職業・ロックミュージシャン』
村山匡一郎北小路隆志、三浦哲哉、石原陽一郎
『ひきずる映画 ポスト・カタストロフ時代の想像力』
野口孝行『脱北、逃避行』
井上ひさし『完本ベストセラーの戦後史』
大野晋『日本人の神』
植田正治植田正治 小さな伝記』
K.M.ワイランド、シカ・マッケンジー『アウトラインから書く小説入門』
渋谷直角『直角主義』
Chim↑Pom『エリイはいつも気持ち悪い エリイ写真集』
清水アリカ清水アリカ全集』
マキヒロチ『いつかティファニーで朝食を


イベントが近づいてきて店内混みだす。
B&B」を出て、次は近くの「フィクショネス」へ。
http://www.ficciones.jp/
ここ、7/22(火)にて閉店とのこと。
作家の藤谷治という方が店主で、恥ずかしながら知らなかった。
店に入るとすぐ出てきた。アクの強そうな方。小説家ってそういうものか。
40歳で作家になって、50歳になった今一区切りで小説に専念するのだという。
今、最後の売り尽くしなのだろう。
元々のスペースを本棚で狭く区切って、
そこに売れ残って色褪せた文庫や写真集などが並んでいた。
せっかくなのでここではたくさん買った。
いつか読もうと思って買わずじまいだったものを。


本田靖春『誘拐』
高橋源一郎ジョン・レノン対火星人
奥泉光『グランド・ミステリー』(上下)
カミュ『最初の人間』
ジェイムズ・エルロイ『ビッグ・ノーウェア』(上下)
リチャード・ブローティガンアメリカの鱒釣り』
ノーマン・メイラー『マリリン その実像と死』
ヴェネディクト・エロフェーエフ『ヴァルプルギスの夜、あるいは石像の跫音』
修論がこの人だったのですが、邦訳が出てたんですね)


小説なんて椅子に座っていればすぐ書けるという。
最初の一行さえ出てくれば、簡単だと。
それが思いつかなければ「馬」と書く。なにか始まるだろう。
書き終えたら冒頭に戻ってその「馬」を消せばいい。
あるいは「彼は殴られた」とか。なぜ殴られた? とそこから転がっていく。
引率する師範代が今、皆で3,000字で主人公が成長する話をテーマに書いていると話すと、
そんなの無理だと驚く。300枚は普通必要だろう。
私だってそのテーマで書いた時はそれぐらい必要になった。
以前、B&Bのイベントで、即興でお題が出て40分で書くというのがあった。
その時のテーマは饅頭と鼻水だったという。
そのようなものでないと、短い分量で書けない。
うーん、そういうものだろうか。


ひとついいことを言っていた。
「世の中には楽な仕事というものはない。だけど好きな仕事というものはある」


それと、今日が6/28だと確認すると、今から100年前にサラエボの事件があったのだと。
そこから第一次世界大戦が始まった。今日から21世紀だ。
そんなことをさらっと言う。それがかっこよかった。


同人誌の委託販売も行っていて、
驚いたことに僕が関わっていた『一片雲』も並んでいた。
2冊売れ残っていた。10冊置いてもらったはずで、8冊が売れたことになるのか。
懐かしい再会。表紙に僕の名前があった。
もう10年以上前のことだ。


ライブハウスの下がカフェとなっていて、
その3,000字で主人公が成長する話の書き方のコツについてビールを飲みながら質疑応答する。
聞かれたらなんでも答えられたし、なんでもアドバイスできたけど、
先ほどの店主のような言葉の重みはないのであった。
下北沢で別れて、僕はひとり帰ってくる。