『かわいい闇』

昨晩は10月に引き続き、東方学会にある塚田さんの「温室」へ。
今年翻訳が発売されたバンドデシネ(平たく言うとフランス語圏の漫画)の作品
『かわいい闇』にインスパイアされた花活けを行うとのこと。
訳者の方も参加され、skypeでフランスとつないで作者も登場する。
http://onshitsu.com/2014/09/20-140616.php


昼休み、慌てて三省堂に買いに行く。
4階の海外グラフィック作品のコーナーにあった。
バンドデシネの一見可愛らしい絵本。
一皮剥くとトラウマ間違いなしのグロテスクさ。
幼心の残酷さをここまで美しく、暴力的に描いた作品はない。
生はもろく、死はどこにでも転がっていた。
子どもの頃にはよく知っていたことだったのに、
僕らはいつのまに忘れる、遠ざけることを学んだのか。


100ページ足らずの短い作品なんだけど、ここから直接に学ぶことは多い。
物語とは、それまで全く無関係に存在していたふたつの世界が出会うことであり、
そこで起こるコンフリクトがストーリーを吐き出していくんだな、
ということを僕は確信する。
帯には大友克洋絶賛とある。僕にとってもこれは今年No.1の本だな。
(これか、『ペスト&コレラ』か)


東方学会へ。熱帯の緑に囲まれた部屋。
塚田さんは客席の並んだ前に置いた机に
『かわいい闇』の舞台となる森をミニチュアにしたような植物群を既に用意していて
作者による朗読(もちろんフランス語)に合わせてさらに
登場するキャラクターたち(妖精? 小人?)のそれぞれを意識した花を挿していった。
フリージア、カンザクラ、手前には割れたザクロが転がる。
ストーリーラインに合わせて一年という時間の流れも意識して。


後半は作者の一人、作画担当のケラスコエットという夫婦のユニットのうち、
背景など緻密な絵を得意とする夫のセバスチャン・コセが登場して
訳者原正人さんの質問に答える。
(妻のマリー・ポムピュイは主にデフォルメされたキャラクターを担当、
 プロのシナリオ作家と共にファビアン・ヴェルマンと共に今回原作も担当した)
登場人物たちは小人なのか妖精なのか、3人の間でも決めていないかったなど
作品について話された。
ストーリーについては緻密に組み上げていくが、
その背景となるものの大部分は謎のままに残しておくというか。
そういう進め方だったらしい。


会場から質問を、とのことで僕も聞いてみる。
キャラクターのうちのいくつかは日本の漫画から抜け出したようだったけど、
特にこの作品から、というものはあるのか?
回答としては小さいころから日本のアニメが好きでテレビでよく見ていた。
特に作品を覚えているわけではないが、強く影響を受けている。
話す背後には本棚。全体的に本が斜めに傾いているけど
背表紙の並びが独特な風合いに染まっていた。


気が付くと22時前。
翻訳者の原さんは仲間たちと「ガイマン賞」という企画を運営しているとのこと。
その年翻訳・出版された海外の漫画の中から投票で決定する。
今年は105点が候補となる。
http://www.gaiman.jp/index.html
僕はもちろん、『かわいい闇』で投票した。
京都国際マンガミュージアムも関わっているみたい。


かわいい闇

かわいい闇