箱根へ(前篇)

年末年始に帰省すると
「入籍したのはいいものの、式はどうするのか」という当然の質問が出てきた。
せめて早いうちに、だけど雪が解けて温かくなってから両家顔合わせをと
正月に話し合っていたら箱根の温泉でやったらどうかとなる。
じゃあ家族だけで式を挙げるといいだろうと
いくつかのホテルからブライダルの資料を取り寄せてみる。
そのうちのひとつが感じよさそうで、
見積もりをもらうと予定していた予算にもギリギリ収まる。
もたもたしてるとすぐ埋まってしまう、ここにしようと即断。
日にちもゴールデンウィークと決まってなおさら早目早目に。
あれよあれよといううちにあっさり決まった。


担当の方から一度打合せしましょうとメールが来て、
どんなとこなのか見てみたいということもあり、日曜の今日ふたりで行ってきた。
芦ノ湖のほとりにあるので新宿から小田急ロマンスカーに乗って、
箱根湯本駅からバス。元箱根港まで。


数日前にネットでロマンスカーを予約。
10:10発のは「VSE」という新型車両みたいでそこだけ空席残りわずか。
だったら、せっかくだからそれにしようと。
他の従来型の車両は空きが多かった。


朝8時に起きてバタバタと支度をして家を出たのが9時半近く。
二子玉川から大井町線目黒線で目黒まで行って山手線でというつもりが
間に合わず用賀から田園都市線に乗って渋谷へ。
乗り継ぎの駅構内で走って Yahoo! の路線案内に出るよりも1本早いのに乗り込んで、
新宿駅の券売機で慌てて乗車券を買って、なんとか間に合った。
(ネットの予約は特急券のみで乗車券は別途買わないといけない)


温かい飲み物を買うつもりがホームに自販機が見当たらずキオスクもまた行列。
乗り込む。初ロマンスカー。空は快晴。日差しが眩しいぐらい。
座席は窓に向かってほんの少し斜めに配置されていた。
車内販売のメニューを見てみるとこの「VSE」車両限定で、コーヒーを頼むと
スイスとの国交樹立150周年ということで
スイス・インターナショナル・エアラインズとのコラボ企画で特製ミルクチョコレートが付くという。
それにする。朝食べずに出たのでミックスサンドも。
隣の車両にカフェコーナーがあると車内放送で言っていたので買いに行ってみる。
席まで持ってきてくれてそのとき支払う。
待っているとアテンダントが運んできた。
紙コップではなくグラスに入っていて、取っ手は針金のような金属。しゃれている。
アテンダントはワゴンを運ばず、メニューを手に通路を歩いてきてオーダーを取る。
気が効いている。座席もゆったりしていて新幹線よりも乗り心地がいい。
これで2,000円ちょっとで箱根まで行けるのか。すごい。


住宅地を抜けると川に出て、というのを何度か繰り返すうちにふと気づくと真っ白な富士山が。
手前の山々がこげ茶色なのでちょっとありえないぐらいに白い。
途中の停車駅は小田原のみ。1時間ちょいで着く。
向こうに小田原城が見える。
そこから10分で終点箱根湯本に着く。大勢の観光客が下りる。
ホームに降り立つと向かい側にはトロッコのような形をした各駅停車が。強羅行きだったか。
小田急線のスイス友好ムードは車両を出た後も続いていて、
アルプスの少女ハイジ」スタンプラリーが開催されていた。
この駅のスタンプはクララだった。


11時半過ぎ。駅を出るとひなびた温泉街。
お土産屋が軒を連ね、あちこちで温泉まんじゅうを売っている。
こけしの店もあったかな。箱根は寄木細工が有名か。
川の向こうに「湯本富士屋ホテル
外からガラス張りのエスカレーターが見えるとても大きなつくりで
いつか泊まってみたいと思った。


ホテルには14時で約束している。
時間があったのでブラブラ散策してもよかったんだけど
念のためバス停の場所を確認しておこうと行ってみたら元箱根港行きが停まっていて、
ちょうといいやとそのまま乗っていく。
ほぼ満席となってすぐ発車する。温泉街は道が狭く、渋滞。
抜けるとスピードを上げるが今度は山道に入ってくねっている。
妻はすぐバスに酔ってぐったり。
前の席にキャバ嬢と思われる女性たちが座って大声ではしゃぐ。一番後ろの席に避難した。


そうか、と気づく。
都内に住んでいる僕ら夫婦は一泊なのでボストンバッグのひとつもあればいいが、
青森と熊本から飛行機で来る家族は数日分の着替えを持ってきて荷物も多い。
キャリーケースで来るだろうからバスの移動は無理。
長距離用じゃないから荷物を預けるところもなく、網棚もない。
これはホテルまでタクシー3台に分けて向かうか、レンタカーを借りるしかないか。


バスは国道一号線を進んでいく。塔ノ沢、大平台、宮ノ下と見覚えのある地名が続く。
まさに箱根駅伝のルートだ。今年からコースを外れた函嶺洞門が工事中となって閉鎖されていた。
坂道がひたすら続く。こんなに急こう配だったのかと驚く。
傾きもさることながら右に左にすぐ折れ曲がるのもまた走りにくいだろう。


富士屋ホテルを過ぎて、小涌園ホテル、その横のユネッサンや岡田美術館の前を過ぎる。
そこからさらに走って「曽我兄弟の墓」なんていうバス停を過ぎて元箱根港へ。
30分ほどか。片道960円。
元箱根港からはテレビでよく見かける海賊船が出ている。
元箱根港箱根町港桃源台港の3か所を結ぶ遊覧船。
乗ってみたかったけど、今回は時間なし。
元箱根港の「アルプスの少女ハイジ」スタンプはアルムおんじだった。
湖は青く波は穏やかで目の前の小さな山のてっぺんにはロープウェーの駅が見えた。
向こう岸には波間に根を生やしたような鳥居が。あの奥が箱根神社か。
海賊船がのんびりと行き交い、芦ノ湖遊覧船のごく普通のフェリーも就航している。