Swans 来日公演

昨晩は渋谷の O-NEST で Swans の来日公演。
フロア一杯に入っていた。
80年代の NY アンダーグラウンドの帝王。
あの Swans が日本で演奏する日が来るとは。
(正確には今回で3回目)


重くて暗くて、絞首刑の一瞬を永遠に引き延ばすかのような。
僕が熱心に聞いてたのは90年代の学生時代。
自慢じゃないが、今では手に入りにくいライブアルバムも取り揃えている。
『Real Love』
『Kill the Child』
『Feel Good Now』
『Public Castration Is A Good Idea』
『Anonymous Bodies In An Empty Room』
(このタイトルから音楽性を察するべし)
スタジオアルバムも不思議の国のアリスを模したジャケットの
『White Light from the Mouth of Infinity』であるとか。
(昔は投げ売りだったけど、今や amazon で5万以上)


アメリカ人だろうか、外国人が多かった。
予想外に女性の客も結構いた。
さすがに若い人は少なくて、それでも30代がボリュームゾーンだったかな。
どこでどう、Swans の音楽と出会うのか?
1997年に解散、2010年に再結成してからのアルバムの方が評価が高い。
音楽性と共に間口も広がったか。
「ヘヴィロック」というジャンルが市民権(?)を得たというのも大きいのだろう。


19時過ぎに始まる。客入れの音楽は古いムード歌謡的ソウル。
場違いなようでいて、本気なのかも。
最初に上半身裸のパーカッション担当のメンバーが、ゴングを鳴らす。
エフェクトがかかっていて打ち寄せる波のように大きな音になる。
(彼はその後、トロンボーンを吹いたりヴァイオリンを弾いたりと芸達者だった)
次にドラムが加わってシンバルを打ち鳴らす。
このドローンだけで2時間聞けてしまう。


3人目はスライドギター。
一人だけスーツを着て髪を後ろに撫でつけて、ガムを噛んでいる。
あまりの演奏の激しさに弦が切れて、途中で張り替えていた。
スライドギターの弦を切るなんて初めて見た。


そして残りの3人が登場。
ギターはあの、ノーマン・ウェストバーグ。
Swans だけではなく、Feotus でも演奏していて、僕にとっては神ギタリストの一人。
腕中に入れ墨をして、淡々と単純なフレーズを弾き続けた。
首謀者マイケル・ジラは黒のつなぎを着ていた。
ヴォーカルだけかと思っていたら、終始ギターを弾いていた。
再結成には参加していないため、女性ヴォーカリストのジャーボーの姿はなし。


曲目は聞き覚えなし。
昔の曲はやらずに、再結成後のアルバム『The Seers』『To Be Kind』が中心なのだろう。
アレンジを変えて「Coward」ぐらいはやったかもしれない。
起伏に乏しいフレーズというかひとつかふたつの音を複数の楽器を重ねて
ゴリゴリと轟音で暴力的に繰り返して高揚する。
そこのところのメインコンセプトは変わらず、
だけどマイケル・ジラは低音で唸り声を揚げるのではなく甲高くなっていた。
自ら頬を引っぱたく動作を繰り返したり、
子どもがイヤイヤしながらおもちゃ箱をひっくり返すような身振りをしたり、
少し演劇的だった。どことなくコミカルですらあった。
音もただヘヴィなのではなく、ベースがファンキーなフレーズを弾くこともあった。


アンコール無しで2時間半。
終わった後はサイン会を行うという!
NYアンダーグラウンドの帝王がサイン会!!
時代は変わった。
タワレコ限定の『Oxygen EP』を買うとそこにサインしてもらえる。僕も並んだ。
マイケル・ジラはカウボーイハットをかぶってにこやかに立っていた。
握手もしてもらった。
80年代のバンドのプロフィール写真を見ると指名手配犯が並んでいるかのようだったけど
もはや時代が違うのだな。