デイヴィッド・ギルモア時代のPink Floyd

今頃だけど、Pink Floyd の新作が昨年出ていたことを知る。
『永遠(TOWA)』というタイトル。
まあ僕が買うことはないかな…


・今は亡きリック・ライトに捧げる作品であること。
・元々は1994年頃(『対(The Division Bell)』のあと)に
 映画音楽としてセッションしていたテープが元になっていること。
・なのでインストゥルメンタルであること。
・当然のごとく、ロジャー・ウォーターズは関わっていないこと。
 デイヴ・ギルモアとニック・メイスンのふたりで製作。
・プロデューサーはフィル・マンザネラやユース。
ポール・マッカートニー初め誰とでも仕事するユース、ここでも。
 元Killing Jokeという肩書きはいつ外れるのか)
・ファンの間では恐らくラストアルバムとされること。


シド・バレットからロジャー・ウォーターズへ。
さらにデイヴィッド・ギルモアへ。
中心メンバーの不在が音楽性を生むという稀有なグループが
50年近く活動しているということにロックの業の深さを思う。
不謹慎な話だが、最後残ったのがドラムのニック・メイスン一人となったとして
演奏にも作曲にも豪華ゲストを迎えて Pink Floyd 名義のアルバムを発表して
歴史を更新したら、それは聞いてみたい。


Pink Floyd の後半25年、デイヴィッド・ギルモア時代はそんなに嫌いではない。
「Shine On You Crazy Diamond」の宇宙空間をたゆたう感じを引き伸ばして
多少メインストリームよりのスタジアムロックにするというか。
音は引き継ぎつつ、ロジャー・ウォーターズの抱えていた精神性はばっさり切り落とす。
…いいとこないようでいて、案外普通に心地よく聞ける。
1987年、この体制になってからの第一作、
『Momentary Lapse of Reason』はヒプノシス製作のジャケット含めよくできている。


それがなぜ可能かって言うと、そもそもの話、
Pink Floyd ってプログレでもなんでもないからですね。
最初期の首謀者シド・バレットが得意としていた
サイケデリックでポップなフォーク系ブルースを
ロジャー・ウォーターズの陰鬱な文学性や
コンセプトアルバム好きな性格が覆ったら長尺のロックになったというだけ。
より深く、より重く、より実験的に。
根っこがブルースという普遍的なものだから、
特徴的な音のフォーミュラさえ獲得していれば継承はさほど難しくはない。
ちょっと乱暴な言い方をすると
「Shine On You Crazy Diamond」も結局はブルースですよ。


それはそうと『Live at Pompeii』70年代のライヴ映像の古典。
あれまだ観たことないんですよね。とても気になっています。
なんでこれ、音だけをCDにしたものが出なかったんだろ。
絶頂期70年代のライブアルバムが初期の『Uma Gumma』しかないというのが不思議。